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悪役族長の家族修復計画  作者: 枝豆@敦騎
悪役族長の家族修復計画
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73話 自分と向き合え

まずは鬼を引き付ける。先程吹き飛ばされた騎士達から離さないといけない。

よほど衝撃が強かったのだろう、騎士二人は起き上がれずにいる。


私は鬼から距離を取ると、魔力を手のひらに集め先端の尖った鋭利な物をイメージする。すると魔力は水晶のように透明で硬度を持った鋭利な刃物になって生じた。続いてそれを大小合わせて複数形成すると、鬼の目に向けて思い切り発射する。

「グ、ゥアァッ!」

いくつか命中したようだ、鬼は叫びながら顔を覆う。

私一人で倒すつもりは元からない、せめて騎士や修二が動けるようになるまで。援軍が来るまで…それまで時間を稼ぐことができれば充分だ。


鬼の隙をついて手のひらに高濃度の魔力を集めると、一気に距離を詰めるとダイレクトにぶつけた。鬼は苦しみの声をあげると腕を大きく振り払った。私の方へと。


ぶつかる……!


そう思い咄嗟に受け身の体制を取った。しかし、割り込んできた人物によって私は衝撃を受けることはなかった。

「この人に手を出さないでもらおう。俺の師匠になる人だ」

冷たい声と、揺れる黒髪ポニーテール。いつぞやと同じ光景だ。


そこに現れたのは、作十郎。

刀を抜刀し鬼の腕を切り落としていた。切り落とされた腕は黒い霧になって消えていく。それを見ながら私は妙に冷静だった。

「弟子を持った覚えはありません」

そう告げるとポニーテールが揺れる。

「すぐにとは言わん…そうだな。こいつを倒したら前向きに検討してくれ」

作十郎は首だけでこちらをちらりと見ると不適に笑う。


「作十郎!無理すんなよ!」

ようやく立ち上がった修二が騎士達を支えながら声をあげる。

「誰にものを言ってる修二。20秒でケリをつけてやるさ」

作十郎はニヤリと口許を上げて笑うと刀一本で鬼に向かっていく。

私の攻撃から立ち直り始めていた鬼が残った腕を振りかぶり、殴りかかろうとする。

作十郎はその鬼目掛けて、刀を思い切り振り下ろす。鬼の拳が届く前にその体を切りつけた、鬼はそのまま悲鳴をあげることもなく後ろへどさりと倒れた。そして血が流れる事もなく、そのまま黒い霧になって消える。


「すご………」


ポツリと呟いたのは誰の声だったろうか。


「お前らっ、作十郎まで!!なんで、何でなんだよおおぉ!!」

そこで叫んだのはシリウスだった。レオンとクラウドに取り押さえられたまま、悔しそうに顔を歪めている。

「俺は、俺は悪くない!今の俺は変わったんだ!好かれ、敬われる俺になったんだ!なのに、たったこれだけの事で、何故こんな目にあわされるんだ!」



あぁ………もう…五月蝿い。



「俺は好かれるべき人間、第一王子だぞ……ぶっ!?」


気が付くと私はシリウスの元に歩みより胸ぐらを掴んで思い切り頬をひっぱたいていた。

皆が唖然としている。


「貴方、それでも王子なの?馬鹿なの?それとも頭の中お花畑なわけ!?」

頭に血が上っている。レオンやクラウドに当たってしまった時とは別に。怒りが沸いてくる。

「なに、を……俺はっ」

「貴方は自分勝手な願いで回りの人に当たり散らして無関係な人を傷付けただけじゃない!」

胸ぐらを掴んだままギリっと睨み付ける。

「自分がやってることが自分の願ったことと反対だってまだわからないの!?過去の自分の過ちに気がついたなら、逃げないで受け入れなさい!貴方が向き合うべきなのは国民じゃない、貴方自信でしょ!自分から逃げてるような人を好意的にみる人がどこにいるの!信頼や尊敬を得たいなら、いくら時間がかかっても向き合って国民の心を動かしてみなさいよこの駄目王子!」




「よくぞ、いってくれた」


私の怒鳴り声の余韻が消えないうちに、重くそれでいて澄んだ声が響いた。

そちらに顔を向けると、兵士達をつれた東の国の国王――アドニス・メイル・東が立っていた。



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