68話 ややこしくて面倒くさい
「嘘なんて、ついていません…私が魔導一族を守るために動くのは私の為、自分の居場所を守るためです。私は…悪役ですから」
「悪役というのがどういう事かは分からないが、ならば、どうして鬼に襲われたクラルテ国の民を助けた?」
「……恩を売れると、思ったからです」
私の言葉にクラウドが眉間にシワを寄せる。
鬼に襲われた人に治癒魔法をかけた時は、そんなこと思っていなかった。けれど振り返ってみれば、心の何処かで恩を売って利益を得ることを期待していたのかもしれない。
「それが嘘だって言ってんだろ!」
レオンが私の肩を強く掴んで怒鳴る、こんなに怒った彼を私は見たことがなかった。
「レオン、落ち着け」
クラウドがレオンの肩をぽんと叩く。
「アザミ殿…今、自分がどんな顔をしてるか分かるか?」
顔?もしかしたら凄く悪人面になっているとか…?
「………酷く辛そうな顔をしている」
何言ってるんだろう、辛そうなのは二人の方じゃないか。私が悪役だと言うことを知って、傷ついてしまっているんじゃないか。
「そんな顔してんのに、何で…何でアザミは助けを求めないんだよ!自分が悪だのなんだの言って俺たち遠ざけようとしたつもりかよ、ふざけんな!」
「ふざけてなんかない!」
一方的にレオンに怒鳴り付けられて、私も頭に血が上るのを感じた。こんな時ほど冷静にならなきゃいけないはずなのに、感情的になってしまう。
肩からレオンの手を引き剥がそうとぐっとつかむ。
それでも剥がれない力強いその腕に、男の人なんだな、なんて感想を抱く。
「私が魔導一族を利用してるの!私は私にとって居心地のいい場所を守ってるだけ!クラルテ国人に治癒魔法をかけたのだって、魔導一族として恩を売って置けば何かあった時に助けてもらえるかもって打算があったから!全部自分の為なの!」
言い切って肩で息をする。私が大声を出した事に驚いたのかレオンは目を丸く見開いている。
「そうか、アザミ殿は魔導一族が本当に好きなのか」
突然割り込んできたクラウドの検討違いな言葉に、私とレオンは眉を寄せてそちらを見る。
「話がややこしくなっているが、要はアザミ殿は魔導一族が好きなのだろう?全部背負ってしまおうとするほどに。族長という立場もあるかもしれないが、それい以上に魔導一族を大事に思っているんだな」
「……何を、聞いていたんですか…私は魔導一族が居心地がいいから、そこを守る為に動いてるだけで…。居心地悪い場所になったら、捨てるつもりでいるんですよ」
「その時が来ても不可侵条約で魔導一族は守られる。それを結んだのは他でもないアザミ殿だ、そして魔導一族が平和に暮らせるように動いていたのも紛れもなく君自身だ。魔導一族がアザミ殿にとって、思い入れのないどうでもいい存在だとするならば何故そこまで出来る?」
「それは…利用してるから…」
「ならば何故、クラルテ国の民を治療した時に自分の手柄としなかった?今回の鬼の件に関してもそうだ、アザミ殿は村に戻って一族の者を派遣することも出来るはずだ。なのに、それをしないどころか自ら出向いてここにいる。一族の人間を危険にさらしたくないからではないのか?」
「………」
私は答えない。
何故、必死になって魔導一族から破滅フラグを遠ざけようとするのか。
それは簡単だ、魔導一族の破滅は私自身の破滅でもある。
「………魔導一族を、守らないと…私がいつか破滅するかもしれないから」
ポツリと呟く。
「そう簡単に破滅するとは思えないが…それなら魔導一族を捨ててどこか遠くに逃げることだって出来たろう?」
魔導一族を捨てて逃げる?一人で?
レオンやシオン…お祖父様に村の皆がが破滅するかもしれないのに、それを見ないフリして一人で逃げる…?
「そんな事っ…」
出来るわけがない。そう告げようと顔を上げてクラウドを見るとそっと頭に手が置かれ撫でられた。
「そんな事ができないと思えるほどにアザミ殿は魔導一族が好きなんだろう。そのクセに守るのは自分のためだとか、考えをややこしくねじ曲げて自分が悪役だと言い出し、それに傷付いている。まったく、何故そういう思考になったのか理解できない」
「………アザミってすげぇ面倒な性格してんのな」
クラウドの言葉を聞いていたレオンがポツリと呟いた。




