59話 国境
「国境って、意外と何もねぇのな」
レオンがぽつりと呟く。
それもそうだろう、東の国とクラルテ国の国境には、壁もなければ兵士が居ることもない。
お互いに友好な関係を築いている証拠か、国の出入りも自由で国境とは言うもののそこは森の中しかない。
「東の国の国王陛下と父上が昔馴染みでな。わざわざ目に見えるような境目を作る必要はないだろうと、自然のままにしていると聞いたことがある」
クラウドが告げるとレオンは納得したように頷いた。
「で、街の人が襲われたのってどの辺?」
レオン、もうクラウド様に敬語使う気ないよね絶対。
それくらいフランクにレオンはクラウドへ話し掛ける。
まるで昔から知っている友人のようだ。
う、羨ましいと思ってないんだから!
私だってルイと友達なんだから!
もしかしたら私の友情片想いかもしれない、なんて事は無いはずだ。
私の前世での交遊関係は片手で足りてしまうほどしか居なかったけど…
「現在地が此方になります、街人の証言によるとこの辺りで鬼と出くわしたとの事です」
騎士さんの一人が地図を広げて見せてくれる。
今回着いてきてくれたクラウドの護衛騎士さん達、実はアルフレッド王と謁見した時に扉横に控えていたりアレクと街に出掛けたときに、護衛としてついてきた騎士達だったりする。
フルネームは分からないけれど、アレクは鉛色のショートヘアの騎士を「伊月」、生え際は黒く毛先にかけて銀色にグラデーションのかかった髪色をした騎士を「士月」と呼んでいた。
地図を出してくれたのは士月さんだ。
「ふむ…この辺りを調べてみるか。何か痕跡があるかもしれない」
クラウドはそう告げると周辺をガサガサと捜索しはじめた。レオンと私、騎士達もそれに倣う。
鬼を召喚する時には魔方陣が必要になる。
それは生き物の血を使った方が成功しやすいらしく、ゲームの中では森に住む猪や熊の血が使われたと記載があった。
血の後があればもしかして…。
そう思いながら辺りを見回すと、ふと足元に黒い汚れを見つけた。
酸化した血痕だろうか?その汚れは道標のように点々と続いている。
「レオン、クラウド様、こっちに血の後があります」
声をかけると騎士さん達と一緒にクラウドとレオンが駆け寄ってくる。
「鬼を召喚するには、生き物の血を用いて描いた魔方陣が必要だと文献にありました。もしかしたらこの先に魔方陣があるかもしれません」
「わかった、ではこの跡を辿ってみるか。士月、先導を頼む。伊月は最後尾を」
クラウドの指示に騎士二人は従う。
騎士達に挟まれて、ゆっくりと奥に進んでいくと生い茂った木々の先に小さな洞窟を見つけた。




