52話 ルイの気遣い
ルイは焼き菓子を私の手からぱくっと食べて、幸せそうに頬に手を当てている。美味しいという表現なのだろう。
花丸百点あげちゃう、可愛い!
「アザミ、僕にもいただけますか?」
おっといけない。ルイの可愛さに回りが見えてなかった…
「はい、どうぞ」
「いただきます」
袋の中からお菓子を一つ取り出し、差し出す。受けとるのかと思いきや、アレクはそのままぱくっと食べてしまった。
「…えっ」
「「なっ…!?」」
状況を把握して赤面する私の声に双子の声が重なる。
これは見てても恥ずかしいと思う、された方はめっちゃめちゃ恥ずかしいんですよ!
前世でも年齢=彼氏居ない歴の私がこんな、カップルみたいなことをする日が来ようとは!
しかも相手は王子様だよ?!
異性と手を繋ぐのだって難易度高いのに…これは……いわゆる『あーん』というやつではないですか!!
ぎゃあぁ……恐れ多い…!!
「アザミ、顔が赤いですよ?」
アレクに言われて袋を持っていない方の手を自分の頬に当てると、確かに熱をもっていた。
「いや…あの……えと…」
しどろもどろになる私をみてアレクはくすりと笑うと、私の頬に手を伸ばして触れる。
「可愛いですね」
「そこまで!」
アレクの言葉に被せてレオンが触れた手を一瞬で引き剥がした。
「うちの族長たぶらかさないで貰えますか?」
「私達の族長に不埒な真似はいくら王子と言えど、許せません」
「心外ですね、僕は素直に誉めただけですよ」
双子とアレクが何を話しているか頭が理解できていない。
それほどに私の頭は思考停止していた。
ルイがお菓子をねだって、私の手をぺちぺち叩くのも気が付かないほどに。
「みゃう?みゃ…?」
心配そうに私を見上げるルイが視界に入ってハッとする。
「だ、大丈夫だよ!ルイ、ごめんね?」
「みゃう!」
安心させようと微笑むと、私を励まそうとしてくれてるつもりなのか、私の手をぎゅっと抱き締めて小さな手で擦ってくれる。
あぁぁぁもう、うちの子可愛いんだからー!
ルイの愛らしさに内心で絶叫することによって、私はなんとか冷静さを取り戻した。
…冷静じゃないって?可愛いは正義なんです。