13話 チンピラのマニュアル
「あの…これ、うちの店の割引券なんですけど、よかったらまた是非要らしてください!」
わざわざ割引券を渡す為に出てきたのか、この店員さん!
なるほど、割引券を口実に話したかったってことかな?
モテますねぇ、うちの護衛は。
微笑ましくレオンと店員さんが話すのを眺めていると、視界の端で小さな女の子が頭から転んだ。
女の子は籠にさつまいもを沢山入れて運んでいたようで、地面にさつまいもがごろごろ落ちる。
女の子の元へと駆け寄り、それを拾おうと手を伸ばすと、にゅっと足が延びてきてさつまいもを踏んづけられた。
ムッとして顔を上げればボサボサの髪と無精髭を生やした、いかにもチンピラですといった風情の男が二人、にやにやと笑みを浮かべ此方を見下ろしている。
「おーっと行けねぇ、通行の邪魔だなぁ、お嬢ちゃんよぉ」
「おめぇがすっころんだせいで俺の着物に泥跳ねちまったじゃねぇか、どうしてくれんだぁ、んん?」
うわぁ、アニメとかゲームで見た定番の絡み方だ…
何、世のチンピラさんは絡み方のマニュアルでもお持ちなんですか?
絡み方は全世界共通なんですか?
呆れていると、転んだ女の子は男達に頭を下げる。
「も、申し訳ありません…お許しを…」
声が震えているのは怯えているからだろうか…
「許しちゃおけねぇなぁ、落とし前つけてもらおうじゃねぇか。なぁ兄貴?」
「おうとも、その荷物全部俺たちに渡したら許してやるよ」
こいつら、食べ物を粗末に扱ったうえにカツアゲするとか…質が悪い!
「こんな小さな子から巻き上げようだなんて、恥ずかしいと思いませんの?」
思ったりより低い声が出た。
ってなにやってるの私!目立ったらまずいんだよ!?魔導一族ってバレたら捕まるかもしれないんだよ…!?
…でも、回りの人たちは見て見ぬふりをしてる…誰も女の子を助けようとしない…
たった一人で、責められて、誰も助けてくれない…その孤独感には覚えがある。
だから、それを知ってる私は見て見ぬふりはできない
チンピラ達はじろりと此方を見る。
「なんだお前、関係ねぇやつはすっこんでな」
「それとも俺達と遊びたいってんなら相手してやるぜぇ、お嬢さんよぉ」
大丈夫、護衛の二人がこの騒ぎに気が付いてくれるはずだから……多分。
「調子にのってると痛い目見るぜぇ?」
私の腕を掴もうと男の一人が手を伸ばす。
その時、チンピラ達を止めたのは護衛の二人じゃなかった。