王立魔法学院
全帝戦後俺はずっと寝ていたらしい。いやまあそりゃあそうだろうなと思った。第二段階は血を蒸発させるほどに身体を熱しさせながらブーストするものだ。その代償に魔力で血の代わりをさせるから魔力が無くなればただの貧血の人になる。一応その時のために予備の魔力は用意してあるのだがそれもいつの間にか半分ほど使ってしまっていたらしい。よく死ななかったな俺
その間に学校の編入手続きを勝手に進められ昨日起きたら明日から学校だからと言われたのだ。ユキから諸々の事は聞いたから問題ないと思うけど試合の後にもう一回試合させられるみたいな息が詰まるような感覚だ。軽く聞いた事を整理しておこう
俺たちがこれから行く王立魔法学院。数々の英雄を輩出した名門中の名門。古くは初代炎帝や初代水帝などを卒業生とする他、王国不動の要塞と呼ばれた前鋼帝もここの卒業。騎士や宮廷魔術士への登竜門ともされており叩き上げの将校や各長達とは対照的にここの出身者をエリートコースとも呼ぶ。入学する前の情報としてはこんな感じだ。
「よしみんな席につけ。早速だが転校生を紹介する。本日より転校になったセイとユキだ。皆知っているかと思うがこの二人が星帝と雪帝となる。ほら二人とも自己紹介を」
長い廊下を歩き教室に入るとギョッとするような目で見られた。驚き半分興味半分みたいな感情の入り具合だ。教壇の前に立つ。このクラスのざわつきは割と当然の反応だろう。エルフ国の協定のことは伏せられているはずだが帝であることは周知の事実のはずだ。ならそんなのが目の前にいきなり出てきたら驚くのが普通だろう
「皆様はじめましてユキといいます。属性は雪で創成が得意です。まだまだ分からないことが多いですがぜひいろいろ教えてくださいね」
やけに態度が柔和なユキは笑顔でそう自己紹介する。俺の腕に少し寄りかかっているのは緊張してるからなんだろうか。わかるわかる。こいつら俺たちと同い年って言われても信じられないもんな。こういう感覚って何て表現すればいいか分からん。認識阻害の魔法って言われた方が納得がいくぞ
「セイだ。属性は星で身体強化が得意。ちなみに俺は全帝に勝った男だ」
俺の自己紹介でざわめきが一段と大きくなった時ある人物が目に入った。え?何でお前がここにいるんだ
「それではまず学園の案内役が必要だな。リューカ頼めるか」
「はい先生」
「いやちょっと待てやっぱりお前ぜ」
「それでは先生行ってきますね」
口を塞がれモゴゴとしか言えない俺は物凄い力で引っ張られながら教室を後にするのだった。凶暴なやつめ。鼻と口を塞いだら息出来ないだろうが殺す気か
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「いい?私が全帝であることは秘密なの分かる?」
「何でだよ」
壁際に追い詰められ物凄い剣幕で怒られた。階段の陰になっているからか人目はつかないがこんな怒られることあるかと思った。見上げるように覗き込まれ虹彩異色症の青と赤の瞳が俺に突き刺さる
「全帝の正体が分からずどこにいるか分からないというだけで抑止力となるのよ。力というのは振るうだけのものじゃないの。あと私はあんたに負けてないから」
「……まあバラすなというならそうするけどよ。お前それで立場どうしてんだ。五属性使えんだろ?」
俺たちは属性の兼ね合いで隠すことは不可能だがこいつはこいつで属性が五個あるのだ。そんな人間は全帝以外存在しない。その時点でなんと言おうとバレるのだ
「ここでは雷属性の使い手リューカで通ってる。一応紫電姫なんて大層な名前貰ってるし次期雷帝候補とも言われてるのよ?」
「木を隠すなら森の中か」
「何よそれ」
しかし全帝に次期雷帝候補とはなかなか面白いことを言っている。まあ知らない人間からすればこいつの得意な雷属性が帝まで届くと見たんだろう。その慧眼は正しい。ただ既になっているという情報さえ見抜けていればの話だが
「いや隠し方も工夫次第だなって」
「とにかく絶対にばらさないこと!わかったわね!」
せっかく綺麗に結んだネクタイを握りつぶされる勢いで凄まれては何も言えない。こいつだけは絶対に許さん。俺が創成使えたら泥を山ほど生成して投げつけてやるのに
「あーはいはい分かった分かった」
「お兄ちゃん…?ものすごい剣幕で引っ張られてたけど大丈夫?」
「おっすユキ。こいつ全帝だけどみんなにバラすなってさ」
リューカに耳が引っ張られる。具体的には人なのに兎の獣人かといえるくらいには引っ張られている。痛たたたたた
「痛てぇないいだろユキは分かってたんだから」
「あんた妹に全部頭の栄養吸われたんじゃない?」
「なわけあるかユキと俺は血は繋がってないのに」
「嫌味に決まってるでしょ。分かりなさい」
相変わらず口の悪い女だな。それにしても何故こいつがこんなところにいるのか全く理解できない。王国でトップクラスのエリートが集まる場所と言えど全帝がここに居る意味ははたしてあるのか?




