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星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第一章 伝承の御子
6/21

星王第二段階



「こっからは出し惜しみ無しだ。来い【星桜(せいおう)】」


 星の魔力を身体の末端の末端の血管にまで通して身体能力を極限まであげる身体強化の究極。身体の温度が上昇し血液が沸騰していくのを星の魔力で代替することで星の霊衣と完全に同調することができるのだ。それは第一段階の王級の遥か先をいく


 奥の手 星属性王級の第二段階


 血管を駆け巡る星の熱が身体の調子(ギア)を何段階も引き上げる。血の蒸気と身体から弾ける魔力と霊衣が星と血が混じり合った桜色に変化していく


「リミットは5分だそれまでに決める」


 指で限界についてわざわざ説明してあげる。まあそんなことをしている暇はなくこの瞬間でさえこの血の砂時計は落ちていってしまっているのだが第二段階を使ったことによる余裕の表れでもあった


「何よそれ私ですら見たことがない。エルフの魔法?」

「そうだな。説明するのも面倒臭いし身体で覚えるのが早いんじゃないか?要は王級の先だ」


 高速ステップで視界から俺を外した。さっきと同じ要領だが速度が違う。俺の第二段階はユキみたいな特殊なことは出来ないけどその分身体能力は超強化できるからな。リミットがあるのは痛いけどそれをもってしても余りあるほどの力だ


「くふっ……はゃぃ」

「殴ってから後ろに立ってピースだって出来るぜ?」


 挨拶の一発を入れ、返ってきた裏拳を難なく避けるとまた数発入れてあげた。一撃離脱戦法の究極ともいえる一連の流れで全帝にかなりのダメージを与えたはずだ。目と魔力で必死に追おうとしている全帝の懐に潜り込む。懐にもう居ることに気付いた全帝はカウンターでスクリューを打ち込んでくるがそれを難なく避けて、通り過ぎるように全帝の腹に拳をひねりあげるように打ち込んだ。さっきの罠のお返しだ馬鹿野郎


「うぐぅ」

「“最強”の全帝が膝をつくとはどういう状態だ?」

「魔法陣仕掛けてんのよ」


 最初の頃にはあった余裕感は抜け大きく身体を震わせるように息をしている。魔力も半分を切ってるだろうし良かったぜ。さすがにこれを使って負けるなんて有り得ないからな


「そうかそうか当たればいいな」

「当たればいいじゃなくて当てるのよ!!」

「そりゃ無理だ」


 無詠唱のサンダーランス数発を当然のように躱し、またまた通り過ぎ間際に正拳を打ち込んでやった。カウンターなんて出来もしない不可視の一撃だ


「かはっ……」

「追えねえだろ。これは最速中の最速だ」


 おもむろに黙り始めた全帝は魔力を解放する訳でもなくただ俺の姿を睨みつけていた。まあ諦めて俺に倒されるのなれそうしてやらないことも無い────「雷霆!」


「遅い!」


 雷の一撃は俺の残像を捉えて弾けた。雷では宙を駆ける星を捕まえることなど出来ない。星は天に煌めくからこそ人は見上げるのだと今ここで教えてやる


「どうして!これだけ速度を上げているのに当たらない!」


雷霆を囮にもう一回肉弾戦を仕掛けてきた千手にも見える全帝のラッシュを撫でるように避ける。一挙に避けることも出来るが絶望の差を見せるにはこうした方が分かりやすい。しかも第二段階になって上がったのは単純なパワーやスピードだけじゃない。反応や思考速度までさっきの数倍はある


「星には追いつけないってことだ」

「この……!雷の速度と火の威力なら当たりさえすれば」


今度は全てを手のひらで受け止めた。威力は貰わないように同じ速度で腕を引きながら衝撃を吸収して受け切る。さっきの当たりさえすれば……すらこれなら全帝にこの状況を打開することは出来ないだろう


「ボルテックスエンチャント。シューッッ……消えた!?」

「だから無駄だって」


一度は食らってしまった雷の移動魔法からの奇襲は今の俺には止まって見えた。少しは速くなってたし威力も上がってるだろうから当たればそれなりのダメージを受けただろうけど残念だ


「くっやはりこの速度は捉えきれない。ならばオールレンジエレメンタルランス!」


 こいつ……なんて戦闘センスしてやがんだ。(いが)がごとく飛び交う槍を避けることは容易いが距離を詰めるとなると途端に難しくなる。このままこれを続けられると第二段階の限界(リミット)が来てしまう。攻める力ばかり見てたが守備力もさっきの土帝のじじいにも引けを取らないんじゃないか?


新星(ノヴァ)


 全帝の槍を避けながら両手に新星を二つ装填する。隙を見て間を見ながら放るタイミングを見計らいランスの針穴を縫うように放り投げた


「そこだ!」

「アースウォール!!」


 土の壁で塞ぎやがったか。横に回り込むか裏を取りたいがこの槍をすり抜けながら一撃を入れるのはなかなか厳しい。けど壁作るってことはこっちに全方位ランスが撃てなくなるってデメリットも抱えてんだろ!


「もういっちょ!」

「くっ!ミョルニル!!」


 ならば正面突破と土壁に二発とも新星を打ち込んでやったがそれを読んでいたのか全帝はその後ろでカウンターの準備をしてやがった


「なっミョルニルだと!?」

「おまけよ。ハリケーンストーム!!」


 こちらに飛ばされた槌を避け、返しの二重魔法も避けるがくそなんて威力してやがんだ。躱しているとはいえもしあの中心に巻き込まれてたら俺の身体がそれこそ花びらみたいにちぎれて吹き飛んじまう。この状況を打破するには全帝が放つ最上級の魔法以上の威力を持つ“必殺”の一撃が必要だ。それの準備をしつつチャンスを作らなくてはならない。俺が引いたことで弾幕を解除したな。今がチャンスだ


「彗」

「また消えた!?でも落ち着いて探知すれば」

新星(ノヴァ)


牽制で放った新星から俺の場所をもう探知している。適応が早いな……さすが最強。まあそれも今日までだけどな


「そこ!ミストプラズマ」

「だから遅いんだよ!」


 魔法を放ったその隙を狙い上手く足払いをして全帝に尻もちをつかせることに成功した。そこから投降を促すように右腕に力を込めてその言葉を言わせようとする


「きゃっ……こほん。忘れなさい」

「あ、うん」


 きゃっとか女みたいな声出してんじゃねぇよ。雷ゴリラのくせに変な声出すからびっくりして右腕の力抜けちまった。心なしか星桜もシュンとしちゃってるし


真球(アリスフィア)!」

「おいいきなり打ってくるな!」

「これは戦いなんだから撃つに決まってるでしょ!死にさらせ!」


 バク転からのバックステップで回避できたが当たってたらお星様になること間違いなしのものだった。こいつだけは本当に沈めてやる


「チャージまであと10秒。最後かつ必殺の一撃だ。これで必ず決める」

「逃がさない!トールハンマー!」

「当たるかよ!空気でも殴っていやがれ」


 追ってきた全帝を飛び上がることで避けた。時間稼ぎには少し不格好だったがこれを闘いながら溜めるのはまだ慣れてないんだ。さあこの数秒で全てが終わる


「ちょこまかと……テンペストフレア!」

「全帝ありがとな」


 誘い出されるように飛び上がり放った嵐炎をネビュラボムで吹き飛ばしかき分けた熱波を肌で感じながら口角を上げた。最大の敬意を込めてお前には全身全霊の技で応えよう。それがこの戦いに置ける俺の礼儀ってやつだ。まるで急に穴が空いたかのように俺の身体を流れる魔力がグッと減り左足に収束していく。右足で大きく空を蹴って肉薄し全帝に最強の一撃を放つ


「最果ての星 天終(てんつい)


 天の果て極点へと至る。名を天終


 目の前に見える全帝の大きく見開いた瞳。馬鹿が…咄嗟の防御魔法じゃ防げないぜ



 地が粉々に割れるほどの地鳴りがこの場を震わせる。俺が全帝を叩き落とした音だ。俺ももう魔力がない。ちょっと待てなんでまだ動いてんだ。これじゃあ砂埃が舞ってて勝敗が外からじゃ分からねぇ……もう限界だ意識が落ちる。視界が塗りつぶされる



──────


「そうか。あの子と引き分けるとはな。やはり格別じゃのう」

「しかし王立魔法学院に入れるのはどうかと。あの年齢の帝は素性を隠すのが普通です。隠さなくてもよろしいのですか?」

「良い。どの道学院に入れるとなればあの属性では直ぐにバレるであろう」

「ですが」

「いやもとよりあの二人はエルフ国の大使であり帝はその後付けでしかない。少し怖いところはあるが全帝と同じところへ入れてやればあの子が目を光らせてくれるであろう」


「ではそのように段取りを」

「土帝にもよろしく頼む」

「はい陛下」


(驚いたのぉ。あの子はあまりに強すぎるが故に今まで“本気”を出したことがなかった。その子に全力を出させた挙句引き分けるとは強さの次元が違うの。ふははっ若い原石が多いとこの国もまた栄えるというものよ)



 ──────

Secret

【星王】

 星属性身体強化魔法の極地

 煌めく星色の霊衣から迸る魔力が箒星のように弾けている。夜空に瞬く星の魔力によって驚異的な速度と破壊力を発揮する古今無双の霊衣



【全王】

 五大属性 火・水・風・雷・土の魔法を重ねることが出来る全帝が可能とした五色の衣。攻撃力と防御力共に優れ隙という隙がない天衣無縫の霊衣






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