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星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第一章 伝承の御子
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全帝の本気

 俺もかなりやばいがあえて煽ってみたのは全帝の真意を探るためだ。これで本気の度合いを見て俺も出方を考えなければならない。その上もあるにはあるがあれは奥の手であり本気と言ってはならないやつだからな。俺の中では今八割九割本気に近いレベルで戦ってるしどうだ……?



「いちいち癪に障るわね。いいわ出してあげる。そのかわり後悔するんじゃないわよ」


 おいマジで本気あるのかよ。冗談かと思ってたのにまさかの急展開すぎるだろ。やばいぞ今まで均等に保たれていた五属性のバランスが崩れていく。いやさっきまでの戦闘を振り返ってみて分かったこと。こいつはおそらく


「私は五属性の魔法を極めた。けれどそれら全てが均等に得意というわけじゃないのよ。もちろん私も人間だから得手不得手がある。私は雷が得意で最もそれが強い」


 雷が得意。さっきまでの虹色と違い雷に重きを置いた金色の霊衣。こいつの本気は今までの全王ではなく本来ならば雷王だったというわけか。というかまだ人間の自覚あったんだな


「全てが雷なわけではないし全王紫電モードってとこかしら。これは今以上に強くなるという考えの中にはあったけど、私の中で使うことはないと思っていたもの。だって私が一番強いんだから試す必要なんてないでしょ?」


 全王の時とは違い不均一な魔力をしているのにさっきよりも強い。戦う前だけどそれだけは分かる。俺は踏む必要のない獅子の尻尾を踏みにじったのだ。その結果がこれ。笑みがこぼれるぜ


「ははっ大した自信だな」

「そうよこの国最強の帝なんだからあんたに負けるわけがない。私が戦った誰よりも強いもあんたは強いわ。でも……それでも私の方が強い!最強の証明をしてあげる」


「まあそれも殴り合えば分かるこった」

「ええそうね!」


 ドンッと響く音。それが地面を蹴った音だと気づいた時には俺の身体も反射的に反応していた。首肩腰を連動させ右に身体を曲げることで全帝の拳を全力で回避する。勢いで側転し向き直るが既に全帝は手が届かない距離にいた


「って……さっきより速ぇじゃねぇか!」


 雷属性は速さもあるし破壊力もあるから攻撃性能は申し分ない。その点防御は少し弱いのだがそれをあいつは他の属性で補ってるというわけだ。そりゃあ“最強”だって言えるよな


「どう?本気は」

「あぁさっきよりはマシだな」


 早まる鼓動を落ち着けるようにそう言い放つ。気づいた瞬間目の前に拳があった体験はあまり無かったから驚いたが一度見れば慣れる。星の速度に逃すという二度はない


「そう」

「そうだ」

「死になさい。ライトニングパルス」


 ぴっと頬が切れ血が唇の横を伝う。指で拭い即座に魔力で焼いて止血するが攻撃が見えなかった。なぜ俺が反応できないまま頬を切られたんだ。奴の動きは魔力と目で捉えていたはずだ


「は?」

「あら?見えなかったのかしら。あなたの言う星の速度が遅すぎてつい当ててしまったわ」

「よそ見してたんだよ。今度は避けるから是非もう一回やってくれ」


「じゃあしっかりと見なさいライトニングパルス二十連射!!」


 今度はしっかりと集中し全帝の技の起こりを見た。これは……岩の礫を雷の力で飛ばしてやがるのか!



 深呼吸から超集中状態に入り俺の視界は時がゆっくりと進むスローの世界になった。迫り来る二十発の礫の隙間を縫うように避け最後の一発を左足で蹴り飛ばす。ピシッと障壁に弾かれる音と礫が転がる音が僅かに全帝の瞳孔を開かせたようだ


「遅すぎてついつい蹴っちまったよ」

「ふふっふふふふふふ」

「何が面白いんだ」

「ここまでコケにされたのは初めてなのよ!絶対にぶっ倒すわ!雷雲よ鳴り叫べ!ケラウノスインパクト!」


 今度は砂埃が大きく巻き上がるほどの風属性を駆使し距離を詰めて来る。雷じゃなくてもこの速度なのかよ。仕方ないと腕をクロスし防御の体勢を取るがこいつはそれを上から破る気満々って感じか。拳を合わせて矛砕き(あいうち)をするも考えたがここまで寄られては勢いをつけて大きく振りかぶることが出来ないし威力には期待できないだろう


「星王!」


 魔力で脚をブーストさせ全帝とほぼ同じ速度でバックステップすることで威力を吸収する。そこからその勢いを利用することで雷を纏った右腕をカウンター気味に狙いバク転蹴りを放つ。感触的にそこまでダメージは無かっただろうけどやっぱり防御に魔力を回して受けられてたか……まあ半分カウンターが入っただけラッキーと思うべきなのか


「何よその顔」

「コケにする顔だ」

「そう」

「そうだ」


「殺すわ」


 稲光がしたかと思えば雷の獅子が作り上げられていた。創成にも匹敵するほどの早さで驚きを隠せない。雷属性の最上級魔法を何度も軽く放られては俺も回避に全力を出さなければならないからな


「轟け!!天に吠える獅子よ!」

「あっぶねぇ」


 爪や牙で切り裂いてこようとしてくるので新星で削りつつ左足でさっきの真似事(エンチャント)シュートをかましてやった。しかしこいつ感情が揺れ動きすぎじゃないか。冷静なふりしてるだけで本来はこういう性格なんだろうな


「ちょこまかと鬱陶しい虫くらい速いわね。でも躱してばかりじゃなくて受けてみなさい!トールハンマー!」

「虫?おぉ受けてやるよ!星王崩拳!」


 俺の拳と全帝の拳がまた一つの衝撃を生み出し大きく反発するように背中から地に落ちる。だが拳の打ち合い(タイマン)はさすがにこちら側の勝ちだったようだ。痛みを紛らわすように床に手をついて堪え、歯を食いしばっているところからそれが読み取れる


「まだいけるだろ!」

「ええそうね!」

 

お互いにまた距離を詰め合い乱打戦が始まった。右拳を左手で受け流すようにして空いた背中に右のブローを入れようとするといきなり身体を風車みたいに回転させ右の蹴りを放ってきた。まあ俺には見えてるんだがな


ははっ甘いんだよこのクソやろ…おぐっ


あの無理な体勢から腹に左脚を入れてくるとは…だがその無理が祟るぞアホが!その足を掴んでやり壁に放り投げると共に俺も最高速で追いかけ、壁と俺の拳でサンドイッチするように一撃を入れた


「オラァッ!」

「くぁっ」


「効いたろ」

「いいえ……全く!」


 瞳の奥。猛る炎のような瞳と澄み渡るような蒼き瞳はまだ死んでいない。まだやれるんだろうな。再加速のために一度距離を置き一拍おいてから右拳に力を込めた


「いくぞ!」


 空間を揺るがす音が俺と全帝の戦いで鳴り響いている。星と雷の王級なら殴るだけで岩程度なら粉微塵に出来るのだから当然だ。俺はハンデとして顔だけはなしにしてるがこいつはそれも関係なしに狙ってくるからさっきから頬や額から血が出てるし唇の端に血の味もしやがる


「息があがってんじゃねぇか限界か?」

「そっちこそただでさえくすんだ顔が血だらけよ」

「誰のせいだコラッ!!」


 拳の動きや足運びを見て目線を読み展開を見る。幾千の読み合いからもう技は始まっていると言える。俺も相手も初見同士ならどれだけ“必殺”の手札を隠せるかが鍵になるのだ。けど俺は頭脳戦が得意じゃないし最強の手札は最初に使ってしまいたいタイプだ。しかし第二段階はユキが使ってしまった手前この場であまり使いたくないのが本音だ


「この!ぶっ倒!れろ!」

「馬鹿が!そんな大ぶりで当たるかよ!」


 両腕を雷で強化し大ぶりで攻めてくるが簡単にサイドステップで回避する。なんだこいつあまりに攻撃を躱されすぎて遂に頭がおかしくなってしまったのか?「ふふっそこ」


「あ?」

「下から雷が落ちたりするのよ?」


 魔方陣が展開される。この魔力量はやばい少し防御に回さねぇとこっちがもたない。設置型をさっき手をついてた時に仕掛けてやがったのか!クソッやられた。土壁を創成(クリエイト)されて逃げ道も防がれ打つ手なしだ


「痺れなさい。サンダーロア!」

「ぐふっはぁ…はぁ…イテテ」


  空気が破裂して響く雷鳴が俺を貫いた。痺れて焼けて痛てぇ死ぬほど痛てぇ。下から雷がクるとはな恐れ入った。口の中も血の味しかしねぇよ全帝さんよ


「……ぺっ」


 しかし本当に強いな。これが最強と言われる全帝か。正直これだけは見せたくなかったけど出し惜しみしてたら負けちまう。さっき使いたくないとか言っといて使うのは何だか恥ずかしい気もするけど仕方ない。ユキも使ってたしこれでおあいこだ


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