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星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第二章 鋼鉄の要塞
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蠢く教会 軋む騎士団

 教会。主が坐す面前。ステンドグラスから差す陽が机に乱反射している中司教達が議論をしていた。困惑した表情を浮かべている者も一部いるが大多数はその無謀とも言える論理を真剣に聞いていた。議題は聖女についてだが明らかにおかしな方向に流れている


「透き通る白い絹のような髪。紅月を思わせる瞳。あのお方にこそ“聖女”は相応しい」

「しかしエルフの国から来た者を聖女にするというのは如何なものか」

「出自はエルフの国ですが種族は人間です。しかもあの美しさですぞ。支援を募ればたんまり入ってきましょう」

「最近は規制もあって献金は厳しいですからな」


 見るに堪えないとはこの事でしょう。司教達が私欲にまみれた話をしているのを見ると目を覆いたくなる。薄汚い人の姿をした豚のような者達。聖職者とは思えない欲にまみれたその身は神に祈りを捧げるものとは思えないほど醜悪と言わざるを得ない。この男達は信仰心など持ち合わせていない。あるとすれば己の利益だけ。教会を統括する光帝たる私は怒りを押し殺し、冷静さを保つように努める。私達がいる場所はこの街の大聖堂。そこには多くの信徒が集まる神聖な場所。そして祭壇には私が仕える主がいらっしゃる。そこでそんな話をされては堪らない。話を切ろうと席を立つ


「聖女とは私たちではなく主が決めるものです。主の意向を無視するおつもりですか?」

 そう言うと司教達は押し黙り視線を下に向ける。いくら教会の力を振りかざす司教達であろうと主を出されては閉口するしかないのは私の経験上分かっていたことです。こんなことに主を引き合いに出してしまったことを心の中で懺悔しつつ悪なる者共を一瞥します


「聖女の論争はこれで終わりです。これは教会を総括する者として命じます」

 そう言い残しその場から立ち去る。後ろではまだ何かを言っているようですが深くは聞かないようにします。主よどうか祈りだけが届きますように。



 ──────


「副団長!本気ですか!?あの星帝様に果たし状を送り付けるなんて」


 王国騎士団副団長傍付きリリアナ・リスティ入ります!の掛け声も忘れ私は副団長の部屋に飛び込みました。何せ急を要する事柄に頭がパニックになって挨拶すらも忘れてしまったのです。いつもなら副団長の頼みを二つ返事で受ける私もあまりの驚きに引き返してきてしまいました。それだけ衝撃的なことだったのですが当の副団長本人は特に気にした様子もなく書類に目を通しています。凛としていていつもと変わらないようにしか見えません。とてもかっこいいです。ってあれ?私今手紙持ってる手が驚きでびしょびしょに濡れてるんですよ?


「あぁそうだ。騎士団の栄光は団長によって保たれていたと古くからいる者達が言うからな。全帝殿を倒した星帝を討てばそれも否定できる」

「確かにそうですけど……そんな力技じゃなくても」


 若いことを理由に一部の権力者から不安死されているのは知っていましたが副団長の実力はこの騎士団の中でもずば抜けているのは周知の事実です。確かに“帝”を超えればその理屈は一理あるということになりますけど……でもそれってちょっとだけ団長に対する嫉妬もありますよね……



 しかも討てばと仰ってますけど星帝様は本当に強いらしいし今までいた帝の中でも最強と言われる程の強さを誇ると王国内では専らの噂。本当に王国で流れている噂通りなら勝てるはずがないのに副団長は自信満々といった感じです。何かとっておきの秘策でもあるのでしょうか?相手は山を砕くとか星を落とすとかいう人だしどうなっちゃうんでしょう。あぁ!こっちに急いで戻ってきたのはいいけどそういえば頼まれてた仕事の備品のチェックがまだでした。怒られる前に早く行かなきゃです。手紙も手紙屋さんに渡さないとダメですし


「あ!これより検査作業に入りますので失礼します。手紙も責任を持ってお預かり致しますので。では!」

「お疲れ様。リリィ」


 リリィはリリアナ・リスティから取られた愛称で私自身も気に入っている愛称。私が白百合のハンカチーフで副団長の血を拭った時に“白くて綺麗なリリィ”と言ってくれた時から呼んでくれているものです。そんな話も思い出すが去り際に微笑んでくれた副団長はとても綺麗で思わず見惚れてしまうくらいに美しい笑みを浮かべていて少し頬が赤くなってしまいます。相も変わらずずるい。普段は真剣な顔しかしないのにこうして笑いかけてくれるし髪は紅玉みたいに綺麗だし胸は大きいしスタイル抜群だし……パタンと音を立ててしまったドアを背に自分の胸元を見ます。そこにはどこまでも見渡せるような水平線が広がっていました。私だっていつか副団長みたいになれる日が来るはずです。いやなりたいのは騎士としてですしスタイルじゃないですし……




 副団長の部屋を出て備品が置かれている部屋へ行き早速作業を始めます。足りない物をチェックリストに記載していき補充を申請するまでが仕事です。これ自体は副団長に頼まれていない仕事ですが巡り巡って副団長の役に立つと思うとやる気も一段とあがります


「おい聞いたか?星帝が騎士団長になるって噂」

「本当なのか?」

「ああ、なんでも教会が推薦してるらしいからな。うちの上層部は教会から金を借りてるから頭が上がらない。あっちがそう言うなら黙って従うしかないんだろう」


 最近この手の話題をよく耳にします。星帝様の騎士団長就任の件。現団長は昔王国最強の騎士と呼ばれていましたけど、今は一線を退いて副団長の後見に入っていますから、先頭に立って引っ張るタイプの団長を欲しがるのも分からなくはありません。それと全帝様を倒したっていう“箔”もこの話題を押し上げているのでしょう。備品のチェックをする振りをしながら会話を盗み聞きます


「星帝は余所者だろう?そんな奴にやらせていいのかよ」

「仕方ねぇ俺達にはどうも出来ないだろう。でもあんなやつに団長を任せるなんてどうかしてるとは思うよ」


 エルフの国出身の星帝。王国の話題をすべてかっさらうほどに眩い光。最強の帝。地上に落ちた彗星。形容する言葉はいくつかありますけど最強というのは少し前まで全帝様だったのにその方に勝ったという噂が流れてからはずっとこうです


「副団長……」


軋む騎士団が立ち直るには“箔”が必要と言ってましたけど団長候補とされる星帝様を倒すことでもう一度まとめあげようとしてるんですね。微力ですがこのリリィが星帝様の弱点を調べあげて必ず騎士団に勝利をもたらしてみせます!


「リスティ!チェックは終わったのか!」

「あわわ!まだです。すみませーん!」


みせます。みせるはずです

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