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星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第一章 伝承の御子
2/21

上京

 

 学院への入学と同時に王国へ送られるのは前から決まっていた事だったがどうも気分は上がらなかった。住み慣れた森から出るのもそうだが人間と共存するのも納得出来ていた訳ではなかったからだ。全ては森で暮らすみんなの為に俺たちは王国へ行くわけだがため息が漏れるのは当たり前だと思った。馬の蹄鉄の音が聞こえる。いやずっと聞こえている。昨日の朝に出発し一日を経てそろそろ陽も下り始めに入ろうかという長い間こうして馬車に揺られている。さすがに飽きというものが来てしまうのは致し方ないような気がするのだ


 もう馬車よりも身体強化で走った方が速いんじゃね?


 それ走っても疲れないお兄ちゃんしか出来ないよと言われた。つまり頭脳担当の我が妹ユキがそう言うなら却下という話である。馬車に大人しく揺られることにした



 曰く 伝承の御子と俺たちは呼ばれ続けてきた。エルフの伝承に世界に危機が訪れると雪の御子と星の御子が空から舞い降りると記されていたのだ。しかし長命なエルフの言伝なら人間に換算するとおおよそ神話のようなものじゃろうと婆ちゃんがいっていたのを覚えている。


 まあ簡単に言えば俺たちは長い耳もなく精霊と会話もできずそして長い寿命をもたないただの人間なのだ。ただ一つだけ例外があるとするならそれぞれ(セイ)(ユキ)と名の通りの属性魔法を扱えるということだった



 エルフ攫いの奴隷商人を山ほど狩っていたのを思い出す。協定では諸々の条件としてエルフ国から使者を送りその者に“帝”の称号を与えることと奴隷捜査の担当にすることが盛り込まれ、もし王国が武力をもってエルフの国を平定しようとした場合俺たちが王国の内部から国を壊滅させるとあったはずだ。つまり抑止力として俺たちは送られたことになる


「ユキ。二人いれば確かに国ひとつなら滅ぼせるだろうけどあの協定だけでいなくなることは無いと思わないか?。最後の方は減ったけど月に数回はあの森で俺たち以外の人間を見かけたってのにそれがぴたっと止むとは思えない」

「でも王様直々にお触れを出して捜査の数も五倍に増えたって聞くし大丈夫だと思うよ。それに私達も奴隷の捜査担当に任命されるらしいから取り締まることも出来るから」

「俺たちがなるっていう“帝”か」


 王国では歴代の王が統治すると共に属性強化魔法を極めた“帝”による権力の分配がなされている国らしい。俺たちに与えられたのは奴隷商人の逮捕権とそれがエルフの場合の殺害権。普段なら騎士団や教会が犯罪などでは動くのだがそれを飛び越える超法規的な存在なのだと教えられた


 目には目をの王国法においてエルフの奴隷を持てば死というのは重すぎるように見える。しかしこれは長年奴隷商人の存在に悩まされていたエルフの国からすれば譲れない条件だった。絶対に王国に認めさせなければならなかったことだと婆ちゃんが声を震わせて言ってたのを覚えている


 ちなみに逮捕した場合の罰は爵位剥奪と終身刑として僻地で土を掘ったり魔力を吸われ続けたりするらしい。これは目には目をの王国法らしい罰だ


「帝には特権が与えられて貴族級の待遇を得る。それと国の機関の管理も担当するって言ってたね」

「貴族並の待遇か。まあ着の身着のまま他の国に放り出されるよりはマシかもな」

「ふふっそうだね。あ!お兄ちゃん王国の門が見えてきたよ」


 俺たちの旅は平均的な木を縦に三つ置いたような大きさの門で一段落ついた。森で育った俺たちからすればこういった建造物は物珍しい。まあ俺は見たことあるしユキも遠見の魔法で見たことあるだろうから驚きはしないのだが


「そこの馬車何者だ!止まれ!」

「ユキ止められちゃったよ」


 門番に大きな声で呼び止められた。フードを深く被った俺たち二人は傍から見れば怪しさ満載だからだろう。魔力は並で身体能力もそこまでってついつい人間を見たら能力を推測してしまう癖なかなか抜けないな


「えっとお姉ちゃんがこれを見せればいいって」


 そうだとばかりに書状を取り出し兵に渡した。じっとその内容を見るが中身は無条件入国について書かれているはずだからおそらくこのフードを取らずとも中に入れるだろう

「失礼致しました!お入り下さい。書状には奥に見える白い城へ参れと王様が仰せです。開門!」


 門が開き王国の中が瞳いっぱいに広がる。測ろうとする目を一旦つむりもう一度それを見てみた。石畳や敷き詰めるように立てられたレンガの家が中心にそびえる城までずらりと並んでいる。商店らしいところから大きな声が聞こえ酒場っぽい場所からは笑い声も聞こえた。ここが王国か。エルフじゃない人間の世界。ユキの目もどこかきらきらとしていて今にも飛び出して行きそうに見える。帝の試験が終わったらこの街に繰り出して色々見て回るのも悪くないかもしれないな



 ──────


 ずっと乗っていて尻が痛くなってしまったがそれをさするように馬車を降りて書状を通行手形に衛兵の横を通り過ぎた。青の敷物を頼りに王の間の前までたどり着くとその扉をゆっくりとくぐった


 入るやいなや万が一のことを考え敵を探るが王の間には目の前にいる三人とは別の手練がいるな。隠してはいるが俺には分かる。斥候を隠すとはこの野郎どこまで俺たちを舐めてやがる


「ようこそ我が城へ。歓迎しようエルフの大使よ」


 数年前にエルフの国に交渉に来た時から今の今まで何一つ変わっていない初老の爺さんの顔。こいつ自体は弱くてなんの話にもならないけど周りにいるやつらがやばい。前に見たアイツ程じゃないがそれでも強いと言えるレベルだ。特に仮面のやつがとびきりだな


「婆ちゃんから聞いたぜ。さっさと帝の試験を受けさせてくれ」


 ローブを脱ぎ捨て王に向き直る。魔力探知を防ぐために抑えていた魔力が怒りとともに今にも溢れ出しそうだから自然と口調も荒くなるがそれももう抑えられそうにない


「不敬ですよ。エルフの御子」


 金髪のババアが俺をキリッと睨めつけてくる。いやちょっと待てエルフと人間は違うからあの容姿でもババアじゃねぇや。大体百分の一で計算すればいいから……30か40歳くらいか?まあ俺からすればもうあれはおばさんにしか見えないのだが



「よい」

「ですが……」

「こやつは森で生きてきた故に強さが全ての基準なのだ。私はこの国の王だがエルフ側のこやつらには関係ないであろう。それより光帝よ闘技場にて選抜の準備を。私は政務がある故報告は後ほどあげよ」


 王の間から颯爽と消え去る王に俺とユキ以外は頭を下げ見送った。さてさて帝になるには王級を使って勝負すればいいんだっけな。さっきまでいきりたってたけどユキの戦いを冷静に見るために俺は2番目にしたほうがいいか


 ははっ楽しい楽しい戦いの始まりだ


 ──────

 character

 セイ 髪 夜色 金色の瞳


 神話に記される伝承の御子と呼ばれる存在。エルフに危機が訪れると空から降ってくるとされ星魔法を使う。今現在はエルフの大使として王国に滞在しているがやがては自身の謎を調べるために世界を旅しようと考えている。森の仲間を含め家族を大事に思っており手を出した時の怒りは地が震えるほど。肉弾戦を得意とする



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