表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第一章 伝承の御子
19/21

死の代償

エコル視点

私の使命。世話をしてくれたセイへの感謝。二つの感情が私の中でぐちゃぐちゃに混じり合い狂ってしまいそうだった。辛うじて冷静でいられたのはその罪悪感と私のヒーローが戦っていてくれたから。私が犯した罪と向き合って戦ってくれているその姿に涙が止まらない。言えることはこの想いだけは嘘じゃないという事。何も出来ない無力な私はどうすればいいのだろう。いっその事あの場で斬られていれば楽になれたかもしれないのに。生き地獄は息をしているだけで辛い


「私のせいでみんなが死んじゃうんですか?」

「エコル?聞いてたのかよ今の会話。そうだよ俺の魔力を全て解き放てばまああの死神を倒せるかもって話さ」


「それじゃあセイは死んじゃ……う」

「まあ爆発で殺せなかったら確実に死ぬ」


「私が代わりに死にます!」

「待ちなさい。あなたに出来ることはないのよ」


 私が一歩踏み出したのをリューカさんが諌めた。酷い言われようだけどその言葉に間違いがないことを目の前の死神さんがさっき証明してくれている。スライス肉のように切られる盾を完全詠唱しないと出せない私が前に出たところで同じようになってしまう


「っ…でも!」


私が出来ること。癒してあげることも隣に立って戦うことも出来ない。何も出来ることなんて無くて。だけどこんな弱い私でも何か役に立って消えたいんだ!


「ちょっと何してるの!?」

「エコル!?何してんだ!」


リューカさんが掴んでいた腕を振りほどき死神さんの方へ駆けていく。さっきのファイアウォールで脅威と見なさなかったのか無視しているよう。頬をつたう涙が自然と止まった。それだけじゃない心の底が熱く燃えているような感覚。私は才能がなく憧れてばかりで、がむしゃらな努力によってもがいて苦しんでいた。いつか物語のような女傑になれたらとそんな空想もしていた。悔しくて情けなくて…でもそんな自分を変えたくて今心の底から焼け付くようなこの感情を全て解き放つ!

 

竜の顎(ドラゴアギト)


 竜の顎。これは私が紡いだ軌跡。寝そべっていたセイに話しかけたあの時から始まった感謝しても感謝しきれない恩。破れなかった殻を外から破ってくれた事は私の転機になりました


「それは竜の顎(ドラゴアギト)?。獣人の魔力操作じゃそんな魔法は発動できないはず」


 リューカさんが言ったように私には出来ない知識だけは知っている魔法。竜の顎は上級魔法でとても私が発動できる魔法じゃない。“だから発動出来るように”術式を編纂したのです



「リューカさんとユキちゃん。それにセイ本当にありがとうございました。私のためなんかに戦ってくれて嬉しかったです」


 炎を噴出し私の体は宙へ浮き上がります。自分の愚かな気持ちを整理するために。私の弱さと決別するために死神と相対します


「死神さん本当にごめんなさい。私の勝手な気持ちで禁忌をおかしてしまって。私は心も弱かったからあなたみたいな強い使い魔が欲しかったの。でも私はセイやユキ、リューカさんの戦いを目の当たりにして本当の強さを私は知ることが出来ました。あなたを超えることで私は自分の弱さを克服したい!」


「殻を破り覚醒したか。だが結果は何も変わらない。私はただ魂を刈り取るのみ消えろ娘」


 そう言って死神さんは鎌を振り上げます。でももう壁はつくらない。ただ前へ前へ踏み込んで踏み込んで私の気持ちをぶつけるだけ!一度そして二度、迎撃しようとする魔法弾を躱します。私はもう引かないからこれが私の答え!私が憧れた人を追いかけてその人に追いつくために。もう二度と弱さに負けないように!


「イグニスバーナー!」


 これも術式を少し変えて放った。さらに炎の槍で追撃!リューカさんの魔法も見様見真似でやってみる。既に魔力がオーバーフローして身体が燃えているようだけど自分の存在が焼ききれてもいいからセイを助けるんだ!


「有り得ぬ!!イグニスバーナーがこれほどの破壊力を持つなど!!」


「エコルが時間をくれたおかげで苦手な魔法が準備できたぜ。天体爆発(ビックバン)!」

「銀氷は凍てつき、零度の底に沈む。雪魔法(スノウマジック) 女王の吐息(ティタニアフロスト)!」

「本気の本気よ。これが全王最強の証明!真球(アリスフィア)!」


「ぬぅぁぁぁあ!!」


 厳格な家庭だった。お前は宮廷魔術師になるんだと勉強をずっとずっと詰め込まれた。宮廷での作法としてドレスコードも教えられた。そして元あった“利き手”すらも強制された


「やべぇさすがにすっからかんだ。あとはもう託すしかねぇ」

「はぁ……はぁ……左腕に魔力が集中してる。あの構え何をする気なの?」

「部分身体強化。エコルのやつ完全に魔力をコントロールできてんじゃねぇか。獣の形まで作っちまってよ」


「炎王獣天撃!でりゃぁぁぁああ!!」


 全身全霊を込めた一撃で相手を刈り取る。獣の王は仕留める時に獲物の断末魔さえ残さないらしい。私には関係の無いことだと思っていたけど今、過去の全てに意味があったと思えた!ありがとう……そしてごめんなさい



痛っ!?空中から落ちていく死神さんの目が紅く光って右腕に焼けるような痛みが走った。嘘反応できないで攻撃されてた!?


「ぐふっ……はぁ……はぁ……“強き”娘よ。もはやお前の命をとることは諦めよう。だがしかしそれでは私の顔がたたない。そこでお前に呪いをかけた。使い魔召喚を悪用した罰。“死の呪い”だ。貴様がまた悪事を成せばそこから死の魔力が噴出し己とその周りの人間を死に陥れる。手の甲の髑髏印がそれだ」


 これが私の罪。一生かけても償えない魂の冒涜という業。私は善であることを強いられる。きっともう悪事を考えるということすら罪になるんだろう


「強き者たちよ死神を退けたことを誇るがいい。だが忘れるな。同じ過ちを繰り返せばまた私は現れる。現世も正しき行いがされるのならば私の出る幕はないのだからな。ゆめゆめそれを忘れてくれるな」


 骨がぶつかる乾いた音が鳴り響き死神さんは細かい粒子となって空気に溶け込み消えていった。帰ったって事でいいんだよね?身体中から力が抜けへなへなと座り込む。私は立ち向かえたんだ。


「ありがとうエコル。さあ帰って休もう」


 暖かい温もりに包まれてまた涙が溢れた。前みたいな悲しい涙じゃない。セイに抱きしめられたから溢れた涙だ。心臓がキュッとなって苦しい。嬉しいのか分からないしなぜ泣いたのかも分からない。ただこの感情をずっと大切にしたいと思った


 ──────

interlude



「俺が責任を持ってエコルを指導します。だから期待しすぎるのをやめてあげてください」

「既に聞いたよ。死神を召喚したんだってね」

「はい」


エコルに言い渡された自宅謹慎一月(ひとつき)の処分はこれでも俺やリューカが嘆願して減った内容だ。最初は退学の話まで出たが負傷者は俺たちだけだし、何よりエコルに対するいじめがあったのがこの騒動の原因となったのがデカかった。その結果精神不安定状態での暴走行為として処理されたわけだ。名前は知らんがいじめをしてたメンツも処分されたらしいしな


「そうか。いつしか私の夢だったものをエコルに重石として乗せてしまっていたのか。私は愚かだな。親として失格だ」

「必ず娘さんを宮廷魔術師にしてみせます。だから……そっと見守ってあげて貰えませんか?」

「娘を宮廷魔術師にしてくれると言って貰えるのは物凄い有難いことなんだがところで君は」

「あぁ自己紹介が遅れて申し訳ない。あなたの娘さんをお預かりにあがった星帝セイです」


術式を書き換えるという歴代の魔術をひっくり返すようなことをしたエコルは必ず魔術の発展に貢献するだろう。と言ってもこれはあの中にいた三人しか知らない情報だ。既に上級魔法を使える以上宮廷には入ろうと思えば入れるが、その情報が出回れば厄介なことに巻き込まれる可能性がある。それは避けたい


「お父さん」

「エコル。すまなかった」

「いいの。きっと今までやってきたことも無駄じゃなかったから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ