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星と雪の輪舞《ロンド》  作者: アドミラル
王国編 第一章 伝承の御子
13/21

基礎訓練 的当て

 今日の授業は次元競技場でボール系やランス系の訓練が行われていた。ここは昔使い魔召喚場だったため別の次元に存在している。だから最悪俺とリューカが戦い始めてもなんら影響がない空間なのだ。しかし使い魔か……そんなの数百年前くらいの話だ。そんな前からあったのかこの学院



 俺たちに与えられている課題としては的に正確に命中させることと詠唱の高速化又は破棄の訓練だ。ユキは雪魔法(スノウマジック)でボール系を再現できるが俺には出来ないので新星(ノヴァ)を撃つことになる。的を吹き飛ばしてもいいってことなのかこれは



「セイ。貴方が本気でやると的が跡形も無くなるから少しは手加減してやりなさいよ」


 難なく雷球(サンダーボール)を当てたリューカがそう耳打ちしてくる。こいつは俺の事マジで信用してないんだなと思いながらも的の前に立った


「まあさすがに全力だすと的どころか周りも吹き飛ぶからな。最悪的だけに抑える」


「全然大丈夫じゃないわ……」


 魔力を極力抑えるようにしながら照準を合わせていく。ちなみにこの的はかなりの耐久を誇り上級魔法でも傷一つ付かないらしい。発動できるぎりぎりまで魔力を落とし俺は無詠唱で新星(ノヴァ)を放った。軽く発動したはずのそれは的に触れた瞬間に大きな音を響かせた。そして辺りは静まり返る。なぜなら当たった的が爆散してしまったからだ


「みんなこれが星帝の力だ。分かってくれたかな」


「セイ。弁償はさせるからな」


 引いているのか無言だった空気を破った先生からのその一言で、魔力切れを起こしていないはずのに何故か頭痛がした。俺の馬鹿やろうなんでもうちょっと落とさなかったんだ


「あんたは馬鹿なの?私の魔法と撃ち合ってたあの魔法撃ったら的が弾け飛ぶくらい分かるでしょ?」


「これでもかなり落としたほうだぞ。あの的が弱いんだ」


 かなり反省した俺は端の方に座っていたリューカと付かず離れずの距離で喋っていた。あまり交流があるとバレるからという理由でこいつは表の場ではあまり話したがらないのだ。さっきもみんなとは陰になるように俺に喋りかけてたしどれだけ目立ちたくないんだこいつ


 奥の方にエコルの姿が見えた。おっ的当てに参加するようだ。しかし前に見た時初級魔法(ファイアボール)ですら不安定な軌道を描いていたから少し心配になる


火矢(ファイアアロー)!」


 エコルの放った火の矢は的へ飛んだかと思えば左下の地面へと落下していった。まあフェイントには使えるかもしれんがあれでは牽制にすらならない。前の時は図体のでかいグリズリーだから当たったのか。もしかしたらあれも頭とかを狙ってたのかもな。後ろに回ったのに急所外してたし


「ふははっエコル。得意の頭で弾道を計算しなかったのかい?的当てとはこうやるんだよ!泥球(マッドボール)!」


 確かあいつはソワン・クラークだったか。貴族であることを鼻にかけてしゃべるから苦手だが、確かに実力はあるようだ。あれだけ小さく調整した泥球で的の中心に跡がついている


「あの手の技はソワンが圧倒的よ。彼の緻密な魔力操作は岩から砂粒まで自在に操るわ。実際にそのクラーク家から帝が出たこともある名門だしね」


 リューカが言うようにここには特別な人間しかいないらしい。確かに抜群のコントロールだ。その後も訓練が続いたが俺とリューカは特に何もせず適当に見ているだけという感じになった。まあ俺はやるとああなるしこいつは力の抜き方完璧だしやる必要がないからな。もう少し戦闘の訓練に近くなれば楽しみも増えるのかもしれない


「さてそろそろ終わりにしよう。各自今日の課題を忘れないように。では解散」


 教師のその言葉に皆からは疲労混じりのため息がこぼれる。魔力だけじゃなくて集中力も要求されたから座学とはまた別の疲れがきているのだろう。授業の終わりを告げる鐘の音が鳴ると皆一斉にここ次元競技場から外へ出る。俺も行こうとしたのだが、肩を掴まれ止められた


「何だよリューカ」

「ちょっと話したいことがあるのよ」


 皆の目から逃れながら人気のない校舎の陰に連れてこられた。ここなら誰もいないだろう。“裏話”をするにはもってこいだ。風と雷の探知で誰もいないことを探ったリューカはゆっくりと口を開き始める


「あの件少し派手にやりすぎだわ。貴方たちに捜査権限を与えているのは事実だけどあれほどまでにやっていいとは言ってないでしょう」


 リューカが言っているのはこの前の闇オークションの件だろう。そこに潜入した俺が中の人間を全員半殺しにしたが、その中に貴族も混じっていてそっち側から苦言を呈されたらしい。とんちに近いが闇オークションであって奴隷市とは言ってないとか奴隷を見ていただけで持ってはいないとかで。帝とはいえ貴族に危害を加えるのはどうかと言っているのだ。面倒くさい連中だ。権力にふんぞり返って何でも自分たちの思いどおりになると思っていやがる


「別にいいだろ。奴隷はこの国ではご法度。それを手に入れようとしたんだからああなって当然だ」


 あの場に数人鎖をつけられた人間や獣人がいたのを確認している。あれは間違いなく奴隷のオークションだった


「それでも限度というものがあるわ。いくら貴方が帝と言えやっていい事の限界はある。私達帝は国の象徴。民の模範となるべき存在なのよ。それがあんなことをしたら反感を買うのは目に見えているでしょう」


「王国民じゃない俺には関係ない。俺は俺のやりたいようにするだけだ。お前らに指図される筋合いはない。俺はこの国から奴隷商人を絶滅させる。ただそれだけだ」


 緊張が高まっていく。俺の怒りとリューカの怒りがうねりながらぶつかり合う。そして一瞬にしてお互いが距離を取り構えた。


「……やめよ。こんなことで時間を無駄にするなんて愚かな行為だわ」


 リューカの言葉でお互いに臨戦態勢を解く。星王を纏いかけてた右腕を軽く振って落ち着きを取り戻した。冷静になれば俺にも非があったし。奴隷がエルフなら殺していいけどそれ以外なら逮捕って言われてたからな。


 どうせ逮捕してもこういうのは無くならないから潰して抑止力を働かせようと思ったがその考えがこの結果を呼ぶのなら少し考えないといけない。俺がそんなことを考えているうちにリューカはその場から離れようとする


「今日の説教はここまでにするわ。私はもう戻るから」


 そう言い残し去っていった。俺も戻るか。というか腹減って飯食おうとしてたのにあいつが呼び止めるから腹の虫がどっか行っちゃったよ


「遅いぞセイ!何していたんだ」

 食堂に行くと真っ先にダミアンの声が飛んできた。そんなに遅かったか?

「悪い悪い。ちょっと用があってさ」

「そうなのか?」

「ああ」


 少し視線を遠くにするとリューカが居た。さっきの手前喋ることはしないがあいつはいつも一人で食ってるらしい。そんなに一人が好きなんだなあいつ


「もしかして…セイが告白されてたり?」


「校舎裏に呼び出されてたとか」


 ミュレンは外れだがルルの指摘は合っていた。でもあの会話をここでする訳にはいかないから適当に誤魔化しておくか


「的ぶっ壊したから怒られてただけだよ」


「なんだ。てっきり……本当に」


「てっきり?」


「いや……何でもないよ」


 ミュレンはぱたぱたと手を振りながらボソリと何かを言ったが聞き取れなかった。ちなみにこの間ユキは笑顔で鎮座していたが俺に念話で喋りかけていた。リューカに詰められたこととこれからの捜査に気をつけなければいけないことを話した。告白されてないか念押しで聞かれたけどミュレンの話そんな鵜呑みにしなくてもいいじゃん。



頭の中の会話と口でする会話に齟齬が出ないよう気をつけながら少し急いで食べる形になった昼食を済ませた


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