お姉ちゃんとサクちゃん
新構成で書き直しました。 https://ncode.syosetu.com/n7651ek/
「姉さん申し訳ありませんが、チンコを突っ込んでもいいですか?」
「お姉ちゃんは、サクちゃんが何を言ってるのか、さっぱりだよ!?」
日曜日の朝。
妹のサクちゃんが、お話がありますと静かに部屋にはいってきた。そして突然に意味不明なことを言いだす。思わず大声を出してしまった。
「それでは、今の件につきまして、お話しをしても、よろしいですか?」
「あ、はい、お願いします――どうぞ」
私が疑問だらけの事に気が付いたのか、説明をしてくれるようだ。この唐突すぎる切り替えの早さは、私の妹ながら慣れない事がある。
「姉さん。たまに全裸で寝ている事がありますよね?」
「あ、うん――風呂上がりに、そのままベッドで寝ていたとか、確かにあるね」
私は人より体温が高いせいか、風呂上がりにすぐ服を着ると汗で湿ってしまう。そのため部屋に戻り、少し涼しんだ後に服を着るのだが、その待ち時間中に、寝てしまう事がよくあるのだ。
「姉さんが風邪を引かないように、私が気が付いた時は布団をかけています」
「あ、今まで、サクちゃんがお布団かぶせてくれてたんだね。ありがとう」
サクちゃんが微笑む。穏やかな視線はどこまでも優しい。
よし、これからは寝落ちしないように気をつけよう。名誉は挽回。汚名は返上するんだ。
「それで、つい昨日も姉さんが全裸で爆睡してまして」
「うん、なんか、本当にごめんなさい」
さっそく名誉を返上し、汚名を挽回してしまった。
申し訳ないですと謝る私に、いえいえ気になさらずとサクちゃん首を横にふる。
サクちゃんのそういう、さり気のない優しいところが、お姉ちゃんは好きだな。
「その、相変わらず、ちまっこい体ですねと見ていたのですけど」
モデルみたいにスレンダーなサクちゃんと違い、私は、ちまっこくてプヨプヨしております。知人からは子豚ちゃんみたいで可愛いよ。と言われることが多いです――あれ、これ地味にディスられてませんか?
「うん、お母さんの遺伝だしね。それがどうしたの?」
「そうしましたら、なんだかムラムラしてきまして」
「へ?」
「姉さんの体って凄く、そそるなーと」
「は、はい? サクちゃん?」
先ほどから何を言ってらっしゃるのか?雲行きが怪しくなってきました。
何だか嫌な予感のする私を置き去りにして、淡々と話すサクちゃん。
「まあ、ぶっちゃけてしまいますと、姉さんと、エロい事をしたい――そんな事を思ってしまいました」
「サクちゃんどうしたの、行き成り意味わかりませんよ!?」
凄まじく引く事を言っておいて、フフッとか何でニヒルに笑ってるのかな――しかも、少し男前だし!
「姉さんを本気で愛してしまったという事です。彼女なって欲しい的な意味で?」
「困ります。サクちゃん。お姉ちゃんそんな事を、急に言われても本当に困りますから!」
サクちゃんの同性愛宣言きました。しかも相手はお姉ちゃん!
うわぁ。ダメなやつだ。これ本当にダメなやつだ。
私としましては、同性愛は辛うじて認めるけど、肉親同士は如何なものかと思う。どちらにしても、お姉ちゃんノーマルだから、サクちゃんの気持ちには答えられないと思うよ。
いやいや、まてまて、あまりの事態に余裕をかまして考えてました。今後は身の安全のために、部屋の鍵は常にかけておいたほうがいいかな、でもそんなことすると、サクちゃんが酷く傷つくねどうしよう。
「そういうわけなので、昨日の夜から辛抱がたまりません。姉さんにチンコ突っ込んで、よろしいでしょうか?」
「どういうわけかは存じかねますが、お姉ちゃんと致しましては、チンコ突っ込んで、よろしくないと思われます」
普通の口調で普通ではない要求を、普通に言うサクちゃんに、慄き怯えながらも即答で却下する―――取りあえず部屋の鍵はかけようと思う。
「チンコ――駄目ですか?」
「チンコ――駄目ですよ!」
なおも言いすがるサクちゃん――ダメなものはダメなのだ。
しかし、花も恥じらう年頃の乙女が二人。日曜日の朝からチンコチンコ連呼するのは如何な物だろうか。
と言いますか、先ほどからチンコ突っ込むて何だろうか――まさか生えたわけでもないだろうに。
このままだと冗談で済まない事態になるかもしれない、上手いことサクちゃんを説得しないと。
「ああ! 告白が上手くいかないと思ったら。姉さんには、まだ見せてなかったですね。ちょと脱ぎますね」
「は、はい?」
私との今までの会話で、微妙な齟齬に気が付いたのか、突然そう言って立ち上がったサクちゃん。いえ、まってください、まってください何故脱ぐの?
驚き焦る私を尻目に、彼女は着ていたワンピースの中に手を入れると、履いていたパンツを脱ぎ捨てた。
そのままワンピースの裾を両手で掴むと、胸元あたりまで捲り上げる。服の下に隠れていた、サクちゃんの裸体があらわとなる。
久しぶりに見た、サクちゃんの体は実に細っそりとしていて、女性なら誰もが羨ましがるような魅惑的なラインを描いていた。
しかし違和感を感じるのは何故だろう。肉親かつ同性とはいえじっくり見ることに、僅かな気恥ずかしさを感じながらも、疑問を解くためにその体を眺めた。
そうすると彼女の股間辺りに―――が、生えていた?
はい? サクちゃんにチンコが生えておりました!?
「サクちゃん聞いていいかな。それチンコだよね?」
「はい、姉さん。サクのチンコです。略してサクチンです」
自分が見たものに対し、あり得ないという気持ちが大きかったので、思わず疑問形で尋ねてしまった。サクちゃんは私の言葉を肯定する。
といいますかサクチンてなに? サクちゃん真面目な顔して、不真面目な造語作るのは、思い出し笑いしちゃうから勘弁してほしいかな。
私は額を手で押さえると、現実逃避気味にそんなことを考えた。
「あのさサクちゃん。馬鹿な事、聞いてもいいかな?」
「何ですか姉さん?」
「実はサクちゃんてさ、男の子だったのかな?」
「いいえ、姉さんも知っているように、私は昔から女ですよ」
うん、分かってる。サクちゃんとは十六年ものお付き合いだからね。
私は軽く混乱していた。普通はもっと叫び騒いでもおかしくない状況なのだけど、当の本人が平然としているためか、まだ会話ができる程度には冷静だった。
「これに関していえば、三日くらい前に生えてきましたので」
知らなかったよ――サクチンて女の子に生えるものなんだ凄いね。
「姉さんに対して、こんな感情を持ってしまったのも、コレが原因の一つであると思います」
「そ、そうなの?」
「ええ、サクチンが生えてからというもの姉さんを見ると、どうしようもなく堪らなくなりまして、それでも我慢してたんですが、昨夜の姉さんの全裸で――ね」
そう言ってサクちゃんは、私の子豚ちゃんボディを熱のこもった視線で見る。
ひ、ひいっ――このままだと焼き豚が出来上がっちゃうんじゃないでしょうか。
「そういうわけでして、サクチンがあるので、姉さんと愛し合う事については、問題ないと思われます」
「いやいやいや、待ってねサクちゃん。サクチンあっても大問題だと思うんだな、お姉ちゃんと致しましては!」
サクちゃんてば凄くいい笑顔だよ。
不味いよ不味いよ、ヤル気だよ。何だか凄いヤル気になってるよ。ハッスルしそうだよ。腕力じゃかなわないしどうしよう。
諦めるな。そうだよお姉ちゃん。負けるな、会話を引き伸ばして解決の糸口を掴むんだ!
「えっと――痛くはないの? 病院にはいってきたのかな?」
「少し慣れませんが痛くはないですよ。病院にはまだいってないですね」
「ええ、それって不味いんじゃないかな?」
「そうでしょうか? コレが生えてから母さんには相談したのですが、話を聞く限りはうちの家系的には、問題はないらしいのですが」
――あ、これだ! 孔明先生ひらめきましたよっ!!
「えっと、その、ダメだよ! 頭がお花畑のお母さんの話じゃ信用できないよ! 病院に行かないとダメだよ!!」
「え、うん? やはり、そうですか姉さん?」
「うん、何かあったら病院へ、これ当然だよ!」
私はここで勝負をかける事にした。
ポヨポヨしてて、普段から発言の信用度が低いお母さん(ごめんなさい)を盾とし、病院に行く事ですべてを有耶無耶にする。サクちゃんのサクチンをお姉ちゃんに使用させないための完璧な布陣。
サクちゃんを(精神的に)傷つけず、私も(精神的・肉体的に)傷つかないで済む。うん二人とも不幸にならないむしろ幸せです。
――まあ、この時までは、まだ問題がなかったんだな。
彼女に詰め寄り左手で肩をつかんだ。そして右手でサクちゃんのサクチンを、えいやっと握りしめる。サクちゃんが悲鳴を上げた。後になって考えてみると、そんな事をやる必要はなかった。
焦りもあった、その元凶たる患部サクチンをどうにか隠し無いものにしようと、無意識に掴んでしまったのかもしれない。気持ちだけが先走り、空回りしてしまったのだ。
「ちょ、ちょと姉さん。そこは握らないでください」
「なに言ってるのサクちゃん、すぐにでも行くよ!」
サクちゃんの呼吸が早くなる。私から逃げようとしているのか体をよじる。
私がぐいぐいとサクちゃんの体を引っ張ると、右手に掴んだサクチンが、だんだん熱をおびて、硬くなってきているような気がした。
「うぅ――ね、姉さん、お願いですから、わ、私の話をきいてください」
「サクちゃん、いいから落ち着いて、お姉ちゃんに任せて怖くないから」
いや、気のせいじゃない、僅かな時間でこんなにも腫れ膨れあがってる。ひょとしてこれは本当に不味いのでは? ここまで硬くなるなんて、本当に病気なのかもしれない。
普通に考えて、女の子にサクチンが生えること自体が異常で、下手したら命に関わるかもしれない事なのに、のんびり突っ込む突っ込まないとか、馬鹿な話をしている場合じゃなかった!
すぐにでも治療しないと、でもどうしたら!?
「ね、姉さん離してください、このままではイってしまいます、イってしまいますから、サクチンを離してください!」
「え、ええ!? 逝く? 逝っちゃうの? だめだよサクちゃん! お姉ちゃん、サクちゃんを逝かせないからね!」
私は、震えだしたサクちゃんの肩と、サクチンを強く握りしめた。
サクちゃんの呼吸がより荒くなり、額から凄い汗をかいて目がうつろになっていく。私はその様子に恐怖を感じ、涙ぐみながらも彼女の意識が失なわれないように、呼びかけ両手で体を小刻みに揺さぶった。
サクちゃんの体の震えがますます激しくなり、うーうーと唸って足がガクガクとなっている。どうしよう、サクちゃんがこんなにも苦しんでるよ。
救急車を呼ぶ事すら思いつかない。今の私に出来るのは、彼女の体を抱きしめる事だけだった。ごめんね、無力なお姉ちゃんでごめんね―――
そして暫くして、看病のかいなく―――サクちゃんはイった。
私は正気を取り戻した――サクちゃんは死ななかった。
彼女は栽培男さんに自爆攻撃されたヤ○チャさんのように、フローリングの床に横たわっている。その目は開いているが、どこにも焦点があっておらず体は弛緩し――虚脱状態になっていた。
しばらくすると怠そうな様子で、ノロノロとサクちゃんが起き上がり、そして私の前でなぜか正座する。そのまま土下座でも始めそうな雰囲気だった。なんだろうか、ナニが悪いというわけではないけど、この状況は酷く気まずいです。
「すいません姉さん身を清めたいので――少しシャワーを浴びる時間を頂いてもよろしいですか――お話はその後にという事で」
「あ、うん、どうぞ――その、サクチンごめんね? ゆっくり洗ってきてね?」
サクちゃんはワンピースの裾を伸ばして直すと、両手で股間を抑え前かがみになりながら、失礼しますと部屋を出ていった。丸まった背中には、女子では永遠に理解できない哀愁がただよっていた。
私はウェットテッシュで手を拭き、フローリングの床を掃除した。
サクちゃんの股間にサクチンが生えた理由だけど、サクちゃんがお母さんに相談した時に聞かされたのは、母方のご先祖様に、神か妖らしき物の血がはいっていて、それが原因ではないかという、何ともな嘘みたいな話だった。
過去にも一族で何人かいたらしく、私が生まれる前に亡くなったため、一度も会ったことのないお祖父ちゃんも、サクちゃんと同じ体質だったらしい。
その後、母方一族かかりつけの病院で検査を受けたのだが、命に別状はないということで一先ず安心した。
神様とか妖怪とか本当にいたのかな不思議だよね。と、サクちゃんに言ったら、私の姉さんのほうが不思議で魅力的ですよ。と微笑みながら返され、何故か後ろから抱きしめられ頭をナデナデされた。
んん――あれ、お姉ちゃん何か肝心なことを忘れている気がするぞ??