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第二話の三 ヒロインは豚小屋の臭い

 未来が見えたらいいのにな。そう思いながら地面に突っ伏した。道行く人たちが変人を見るような視線を向けるが気にならなかった。


「死ぬ、絶対死ぬ……」

「どうしてそんな依頼受けちゃったのこのブタさんは」

「仕方がないじゃないか……。商業ギルドに恩を売れると思って……」

「やっぱりあのビッチ共は信用ならないな」

「受付のお姉さん達関係ないんすけど……」


 元女神に恨みを持たれた受付のお姉さんの事はさておき、俺は本格的に依頼をどうするかを考え始めた。まさか今すぐに断るわけにもいかない。つまりほどほどに頑張って任務失敗がベストだが、それをやっているうちに死ぬかもしれないのだ


「……ところで、私お風呂入って来たんだけど」

「知ってる。それが?」

「服変わってないんですけど」


 俺はニニエの服を上から下まで見回した。確かに仕事で支給された作業服のままである。


「なら買いに行くか? 余裕あるし」

「ほんと? おしゃれしていいの?」

「動きやすい奴な」


 考えていても仕方がないので俺はニニエの服を買うために店を目指すことにした。


「どんな服がいいかな~」

「お前元女神だろう。お洒落くらいで来たんじゃないのか?」

「やったらいじめれるからずっとジャージだった」

「せ、世知辛いな」


 なんだかニニエの黒歴史に触れそうになったので口を閉ざすことにした。いつも機嫌の悪そうなニニエがこの時は特に闇の深そうな表情をしていたのが怖かった。


「ほら、着いたぞ! 服屋、初めて来たぜ!」


 話を逸らすべく、たどり着いた服屋の事を話題にあげる。するとニニエは闇の深そうな表情が薄れて愛らしい少女の表情に変わっていった。


「色々な服がある。一つだけ?」

「もちろん。当たり前だろ?」

「じゃあどれにしようかな……」


 ニニエは店の中を探索し始めた。俺はすることもないので適当に服を見て回ることにした。

 そして二時間が経過した。


「おっせええええええええええッ! 何やってんのお前!?」

「だ、だって……、決めれれなくて……」

「早くして! 店員さんがめっちゃ迷惑そうに見てるから! と言うか、お前自身が綺麗になっても服は豚小屋みたいな匂いしてんの! 店員さんさりげなく換気始めてるからね!」

「そ、そんなに言うならあなたが決めてよ。僕決められないよ」

「じゃあ、これで」


 俺はニニエが二時間で決められなかったことを一秒で決めて店を出た。適当に決められたのは癪なようだったがそれでも嬉しそうに彼女は服の入った紙袋を大事そうに抱えていた。


「しっかし、服屋は市民権持ってないと買えないとはな……。この国やっぱりよそ者に厳しいな」

「でもいいじゃない。僕はこうしてスズキのお陰で服を買えたんだしね」

「まあ、そうだけど……、これ家買えるかな?」


 この世界に永住を目標としている俺からしてみれば死活問題であった。お金を貯めても家を買えないのは流石に嫌だった。


「ふーん、やっぱり家が欲しいんだ。永住するって言ったもんね」

「お前は良いのかよ、このまま共同宿舎で。やっぱり個人の部屋が欲しくない?」

「欲しいか欲しくないかで言えば欲しいけど、そこまで躍起になるほどでもないかな。僕はとりあえず暮らせていれば」

「……もう大悪魔の事は本当にどうでもいいのね」

「僕もあまり帰りたくないしね。……それよりも、早く服着たい!」

「はいはい今すぐ帰りましょうね。後その服洗わないと……」


 流石に豚小屋臭いのが我慢ならなくなったスズキは足早に共同宿舎を目指して歩き始めた。その後をスキップするように上機嫌なニニエが続いて行った。


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