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第四話の四 アウトローズ②

「ようこそ、ラント商会の活動拠点へ。客人として歓迎しよう」

「……どうして俺達を助けたんですか? 状況が分かっていれば全く利益がない事なんて分かるもんだと思うんですけど……」


 俺はその豪華な装飾に彩られた部屋を見回しながら話を切り出した。するとルーデンドルフは笑い声を上げながらメイドを呼んだ。


「まあまあ、そんなに焦らずに! まずはゆっくりとしなさいな若い者よ。そちらのお嬢さんは既にお茶も出ていないのに菓子類を平らげてしまったよ?」

「……おい元ブタ。てめえはこの状況で緊張感もないのか!」

「ほがほご、はぎはごッ!」

「やめろ汚い……。リスみたいで可愛いとでも思ったか。食べかすが飛び散ってんだよ」


 普段は絶対に食えないからと死に物狂いでお菓子を口に詰め込んでいたアホから少し距離を取った。するとリラが不安げな表情で俺の服を掴んだ。この状況に巻き込んでしまった負い目があるのだろう。


「お父様~。お茶の用意が出来ましたよ」

「む? メイド諸君は?」

「お菓子を調達中ですよ。どうぞお客様」


 このアホのせいで迷惑をかけたみたいだと申し訳なるのと同時に、目の前に現れたケモ耳を大胆にも装備した茶髪で小柄な、それでいて出るところは出たスタイルの良い美少女に俺の目を映っていた。


「ルーデンドルフさん! お嬢さん可愛いですね」

「ハッハッハッ! やらんぞ? うちの娘だ。シオンという」

「し、シオンです。お客様はこの耳が気持ち悪くないんですか?」

「え? ケモ耳が気持ち悪いってどういう事? 最強の萌え要素だと思うんだけど」

「ほごは、ごほへはひで――」

「しゃべるなブタ。カスが飛ぶって言ってんだろうが」


 何かを解説してくれていたようだが、今の元女神は食べかす製造機でしかないためその口を罵倒の一言で黙らせた。すると元女神は流石にキレた。尤も追加のお菓子を見てすぐにその怒りを収めたが。


「お客様って変な人ですね。エーデ族の子と仲良くなったりするなんて」

「美少女と仲良くなるためなら世界を敵に回してもいい」

「その意気込みやよし! そのお前さんの蛮行のお陰で俺様は稼ぐ絶好のチャンスを手に入れたわけだしな!」

「チャンス?」


 その予想外の言葉に俺と、リラは首を傾げた。どうも俺達の行動でこの人が儲けることが出来る様になったらしいが、一体それはどういうことなのだろうか?


「さて、ではお茶も来たことだし本題に入ろう。君たちをここに呼んだのは、俺が商売敵、ウルリス商会を打倒できる駒になると踏んだからだ」

「ウルリス商会って何やってんの?」

「貧困ビジネス、君たちが止まっていた共同宿舎などを経営している」


 先ほど自分たちを追い出したところと聞いて、ますますこの男が何を狙っているかが分からなくなった。するとルーデンドルフはいくつかの資料を俺達に渡した。


「ウルリス商会は貧困者を狙ったビジネスと、さらに貧困者を狙った武器ビジネスで利益を得ている。が、彼らのブレインであるウルリス氏はここ最近の業績不振に悩んでいた。そこで、目を付けたのが今起こっている四人の大悪魔との戦争だった。彼は裏でこの辺りを攻略中の土のアネモネと密約を交わした」

「密約!? 人類の敵なんですよね?」

「そうだな。しかし大金が手に入る絶好のチャンスとなるからな。アネモネにこの町の情報を与え、さらに内部に誤情報を流して撹乱する。するとアネモネ派が優勢になってこの町の住民が家を失う。すると共同宿舎などに押し寄せてさらに身を守るために武器も購入される。労働力もその共同宿舎から持ってこれる」


 確かにそう考えると外道だが合理的だと俺は思った。しかし、するとなるとリラがつるし上げられる理由が分からなかった。


「なあ、それなら何でリラが悪者になってるんだ?」

「それは簡単、彼女を刺激して暴れさせればアネモネの娘が敵のスパイだったことが分かり、町は混乱する。そうすれば住民は武器を買うしアネモネは攻めやすくなるからな。言ってみれば布石と言う奴だ」

「そ、そんなことのために……」


 リラは商売のために利用されたのだ。母に裏切られ、町に敵視され、その理由が金儲けのため……。そんな外道、許されるわけがなかった。

 すると隣でお菓子を食べていたニニエが机を叩いた。


「金儲けのためッ!? ただ、それだけだっていうの?」

「そうだともお嬢さん。まあ、商会の人なんて金の事しか考えていないからな。現に俺様もお前たちとこの話をするのは金儲けのためだし、ウルリス氏だけを非難できない」

「でも! そいつは外道よ。僕はもしもリラを差し出して町が平穏になるっていうならそれでもいいかと思っていた位のろくでなしだけど、それでもそこまでの外道を許すことは出来ない!」


 なるほど、先ほどからニニエがやけに静かだったのはそれが理由だったのかと納得した。確かにひどいかもしれないが元女神なりに何とか場を治めようとしていたのだろう。だから俺は少しだけ元女神を見直していた。こいつにも大切なものがあるのだなと分かったから。


「それで、こんな話をするのだからこの状況をどうにかできて、しかもがっぽりと稼げるのよね? 僕たちに速くそれを教えなさい!」

「ハッハッハッ! 焦るなお嬢さん。今から話すところだ。シオン、お茶の追加を持ってこい」

「はい、お父様」


 シオンがパタパタと部屋から出て行くと、笑顔だったルーデンドルフの表情が何とも言えない悪い表情に変わった。


「ウルリス氏は今回の出来事を僥倖と思っているだろうが、あれは失策だ。現に俺達に内通が察知されているしな。そこで俺はウルリス商会に対して今回の件を弾劾する。そして致命的な犯罪行為出ることを理由に奴らの本拠地を武力で攻略することにしている。君たちは、その先兵として私の私兵団の先鋒を行ってほしい。報酬は獲得戦利品の一割だ」

「一割!? 少な過ぎよ! 僕たちにもっと出しなさい!」

「いやいや、冷静になれ元女神。相手はウルリス商会っていうでっかい組織だぞ。そこから略奪するとして、その一割だから相当な金額だ」

「え? いくら位?」


 一割と言う数字だけ見て怒った元女神は目をぱちくりとしながらルーデンドルフに尋ねた。するとルーデンドルフはひげをいじりながらその数字を口にした。


「推定で五億ガランだな。前後はするだろうが」

「ご、五億ガラン!? 三人で分けても最低一億はゲットできるってこと!?」

「落ち着け金の亡者。参加すると決まったわけじゃないんだからな」

「しないの!?」


 俺の言葉にニニエは右往左往する。すると俺の意図を理解したのか、リラがルーデンドルフに質問を飛ばした。


「なぜ私たちが参加する必要があるの?」


 それは真っ当な考えだと思った。自分たちが参加することにどんな意義があるのか、それが分からなければ嘘の可能性も出てくるだろう。

 するとルーデンドルフは表情を変えることなく即答した。


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