第四話 リラの事情①
ちょっぴりシリアスが入り始めます。しかしすぐ終わります。
とある朝、共同宿舎で優雅にクズパンを食べていた俺に速報が届いた。それはコガレオン討伐隊が全滅したという知らせであった。詳細は不明だがかなりの激戦が繰り広げられたとの事が記事に書かれていた。それを見た俺は心底参加しなくてよかったと安堵した。
「おい元女神。見ろよ、コガレオン討伐隊が全滅だって」
「マジで? それ超ヤバじゃない。参加してなくてよかった」
「本当にな。いやあ、俺達に実害なくてよかったわ」
非常に最低な会話を交わしながらモソモソのパンを口に頬張った。朝からパンが食えるなんて幸せだなあ、としか思わなかった辺り俺もこの過酷な世界になじんできたのだろうと思った。すると、次の記事を見て俺はパンをのどに詰まらせて咳き込んだ。
「きたな……、落ち着いて食べようよ。ブタみたいだゾ」
「そんなこと言っている場合かああああああッ!? これ見ろこれ!」
俺はそう言って冷たい視線を向けるニニエにその記事を見せた。そこにはエーデ族の少女、リラ・ユーストルニッグを逮捕したとのことが書かれていた。
「あのクソ女捕まったの? 窃盗でも働いたのかしら」
「いやいやいや、ねーよ! あいつは盗むくらいなら正面から殴り込んですべてを略奪していくわ! えっと、留置所はアヤーニ地区か……」
「待ちなさい」
「俺を止めるのか」
「違うわ。留置所への訪問は一回憲兵隊から許可を貰わないとダメよ」
ニニエはそう言うとパンを口に押し込み、俺達の汗水流して貯めたお金を預けてある銀行の通帳を持ってきた。
「あと、保釈には金がかかるけどどうする?」
「払うに決まってるだろう。見捨ててはおけない。仲間なんだから」
「ま、あのクソ女いないと討伐ギルドで働けないしいいんじゃない」
そっけなく言うがニニエも恐らく心配なのだろう。金にがめつい彼女があっさり許可を出すなど今までには一度もなかったからだ。
「よし、じゃあ面会に行きますか」
俺達はリラに会うためにアヤーニ地区を目指して共同宿舎を後にした。