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第一話 誰だお前から始まる物語

前作の方が大体書き終わったので異世界物を少しかじります。

 今日も一日の労働が終わり、俺は共同宿舎へと向かっていた。異世界に来てから一か月、いや二か月は経過しただろうか。とにかく長い事異世界らしいこともせずにお金だけをかき集める日々だった。しかしそんな毎日からも今日でおさらばとなる。なぜならば、今日で目標としていた金額が集まるからだ。異世界転生特典として貰った能力が圧倒的に使い道のない無能で日本にいた時と同じデブのまま転生してしまったときは本当にどうしようかと思ったが何とかここまで何とかやって来られた。俺は感極まって涙を流しそうになる。糞みたいなメンタル弱者の引きこもりが一つの目標をやり遂げる、これはものすごい成長なのではないかと思うのだ。


「ただいま! 予定の金額集まったぞニニエ! ……おいデブ聞いてんのか!」

「痛い。そしてうるさいなぁ……。それはまだ予定金額を集めきれていない僕に対する当てつけかなデブ」

「お前まだ集まってないのかよ。あとお前にだけは言われたくないよデブ」

「くたばれ、デブ」


 共同宿舎に戻った俺はいつも通り仕事終わりの疲れで布団に包まる元女神見習いのニニエのけつを蹴り飛ばした。詳しい事情は伏せるがニニエは元々様々な世界を管理する女神の見習いであったのだが同期の策略によって女神の権利をはく奪された可哀想なデブなのだ。

 ……そう、女神のくせに彼女はデブなのだ。そして俺もデブ。そのため異世界に来たころはデブデブコンビで町中仕事を探し回ったものだ。ギルドはあるのだが諸事情により利用できず、何とか二人生活できるだけの資金を集めるためにバイトに明け暮れたのだった。それはもう、最初のうちはデブなので死ぬかと思った。しかし最近は筋肉も付いてきたのでデブなりにだいぶ仕事もしやすくなった。


「全く、俺も協力してやるから頑張ろうぜ。お前の事は未だに嫌いだけど、折角のパートナーなんだしさ」

「ただ単にぼっちが嫌なだけだろう? 僕はそう言うの大丈夫だから。一人でだって生きて行けるし」

「初日はそう言いながら俺の布団に入って来ただろう……。あれやっていいのは美少女だけだぞ? デブにやられて悪寒が全身に走ったわ」


 このデブとはもうそろそろ高校の俺をいじめた奴らよりも付き合いが長くなるかもしれない。そして、口では嫌だと言いつつもこのニニエとの関係は意外に悪くないと思っていた。気兼ねなく話せる兄妹のようで、デブという罵り合いも学校時代のいじめに比べれば随分と心地のいいものだった。だから今日は目標達成祝いといつもの感謝になんかこのデブに奢ってやろうと思っていたのだ。


「おいデブ! いい加減布団から出ろ! 飯奢ってやるから……。と言うか俺お前の顔しばらく見てないぞ。いっつも布団にくるまって……」


 俺はそう言ってニニエをミイラにしている安い布団を引きはがした。


「ん? なんか軽かったような」


 何時もは布団を引っ張ると物凄くデカい重りがあるはずなのだが、今回はそれをまるで感じなかった。と、不思議に思った俺は布団の中のデブに視線を向け、びっくりしてひっくり返った。


「なんだよぅ……。飯奢ってくれるなら自分で出るよ。って、何やってんの?」

「……………………誰だてめええええええええええええええええええええッ!?」

「記憶喪失かよ。このデブの顔を忘れたか」


 布団の中から出てきたのは予想していたデブではなく、なんか物凄くすらっとしたスタイルのいい美人だった。胸が異常に小さい以外は全てにおいて完璧と言ってもいい様な美少女であった。ありえないことに。


「…………って、誰だお前ええええええええええええええええええッ!?」


 すると目の前の超絶美少女も俺を見るなり滅茶苦茶驚いていた。いや、それはこっちのセリフ。あのデブ女神何処やったこの野郎。


「誰って、俺はスズキ、お前こそ誰だよ」

「ニニエに決まってんだろうこの野郎! 何お前奇跡のダイエットに成功してんの!? 一月前はデブだったろ!?」

「え? そんなこと――、誰だお前は!?」


 美少女に指摘されて俺は久しぶりに自分のクッソ汚い顔を鏡で見て、別人が映ったためビビった。誰だこの男前……。いや俺なんだろうけど、俺ってもっとこう、ブタみたいに脂乗っていませんでしたか?


「……って、お前ニニエだって!?」

「反応遅いよ。第一声で気が付けよデブ、じゃなくて……、何て呼べばいい?」

「普通にスズキって呼べよ! このデブ、ではなく、えっと……、女神さま」

「見習いだっつうのボケ。しかも元だ。普通に名前で呼べよ」


 顔をしばらく合わせていないとはいえ、つい最近まで普通に会話していた人の豹変ぶりに俺もニニエも驚嘆していた。そして今度はこうなってしまった理由について考え始めた。が、考えるまでもなかった。


「まあ、二か月もあの厳しい労働をしていればこうもなるか」


 むしろなんで気が付かなかった。よっぽど周りが見えないくらい頑張っていたのか、それとも単に馬鹿なだけなのか……。


「……お、お前って結構男前だったんだな。僕びっくりだ」


 ニニエは顔を赤くしてそう言った。かく言う俺も彼女と全く同じ様な事を考えていた。


「お前こそ滅茶苦茶美少女やん……。ブタ枠じゃなかったのかよ……」

「ブタ枠って何だよ! お前こそここに来る前は養豚場出荷前みたいだったじゃないか!」

「やめろ、あの時期の事を思い出したくはない」


 しかし俺は指摘されて思い出し始める。あの、日本にいたころの救いようのない自分の事を。

 ……俺は二か月前の苦い記憶を呼び起こした。


特に何も考えず頭を空っぽにして書きました。

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