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ぼっちは勇者を目指さない。  作者: タネモリ チコ
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第九話

異世界のとある地方にて。

身分証明書は手に入れた。

お金もとりあえず手に入れた。

精霊王たちからそろそろ連絡が入りそうなんだが。


「君のお蔭でこちらも助かった。何かあれば私の名前を出してもらっても構わない。」

商業ギルドに所属するリチャードにとっても今回の出来事は得しかなかったようで。

冒険者ギルドのあれやこれやが終わって、こっちも助かったと言えば助かったんだが。

・・・確かに魔獣の素材絡みが納品量多すぎたのは否定できない。

冒険者ギルドだけでなく商業ギルドにも引き取ってもらって何とかなったのが現実。

それでも一度に払いきれないから分割払い。勿論ランクはそれなりに頂いた。

おかげで商業ギルドにも登録してランクが上がる事態にもなったんだが。

冒険者よりも商人の立場の方が良い時もあるから貰えるものは貰っておくが。

「我儘を聞いていただいてありがとうございます。」

「送り出すのは心苦しいが、また無事に会えることを心から祈ってる。」

私自身からすると魔族たちが集団で掛かってこない限りはそうそう困る事はないんだが。

と言うよりも邪神と魔族たちの件が無ければこの街で・・・と言うのは有りかもしれなかったが。

正直巻き込むわけにいかないからなと。

「人探しをしてるので人の多い所に行きたいのですが、近くになると王都でしょうか?」

私の質問にリチャードが表情を変える。

「出来る事なら東の王都は・・・と言いたいところですが、君の強さであればなんとかなるのかな。」

「何か起きてるということになるのでしょうか?」

そういえば私がリチャード達を助けた時・・・うん。これ厄介な事態になってるかもしれないね。

リチャードが次に発した内容で察するしかなかったのは言うまでもなく。

「元々私は王都で商売をしてたんだが、色々様子がおかしかったので先代の事情でかこつけてね。」

「あの時襲われてたのはただの野盗的な感じでしたけれど。」

「どうして街道の治安が悪くなったのか。王都の状況が悪くなれば自然にそうなるって事だよ。」

これ、最悪の事態考えないといけないパターンだな。

と言っても今の時点では正確な部分が判らないし、ひとまず王都に行くしかないって感じかな。

「注意して向かう事にします。情報ありがとうございます。」

私は馬車のような物を土の精霊術で作り上げると、そのまま乗り込んだ。

馬車の様なものと言えば聞こえはいいが、外見は自動車にしか見えないので仕方ない。

戦車とかだと物々しいし、バイクだと襲われた時に面倒だ。

なので車。道が舗装されてない事を考えて、映画で見るような4WDを作ってみた。

8人ぐらいが乗れる大型仕様なのは途中で合流する方々に合わせたのは言うまでもなく。

土の精霊術を使ってるので勝手に自走するし、動力なしで簡単に動く。

「その馬車はわざとやってるのかな?」

「わざとですよ。今は邪神たちも表立って動けないし、多少目立ったところで問題ないですから。」

「君ならば王都の問題も解決させそうだな。気をつけていってらっしゃい。」

街を出ようとしたところで、リチャード達家族だけでなく、大勢の人が見送りに来ていた。

冒険者ギルドと商業ギルドで色々派手にやった結果なのは言うまでもなく。

ギルドに提供した素材と、街周辺の魔獣の目撃情報の減少を結びつけるのは簡単な事で。

それ以前に精霊たちによる邪神・魔族軍撤退の事も考えると、今は平穏に近い状態で。

だからこそ安心して見送りに出れると言った雰囲気で。

「それではまた、どこかでお会いしましょう。」


地方都市を出発し、私は王都に向かう。

人族国家の一つであるラナーンの王都ラーナ。良い話が出てこないのが不安な所だ。

途中六人の精霊王と合流する。馬車の様な物に顔を引きつらせてたのは言うまでもなく。

自重はしない。自重した所で邪神や邪神側の魔族たちの軍勢が引いてくれるわけはないし。


『精霊界の方は精霊神様が結界を張ったので心配無用ですが、人族の世界は拙そうですね。』

『話を聞く限り、王都が相当宜しくない状態になってそうだね。』

「その前に先の侵攻の時に東側の攻め具合が割ときつかったんじゃなかったっけ。」

私が不意に思い出したように言うと、精霊王たちは何かを察したような表情を浮かべる。

『恐らく邪神側の手に落ちてるかと。貴方が出会った商人は運が良かったんでしょうね。』

『商人としては有能だったんでしょうね。機を見れたからこそ貴方と出会えたのでしょう。』

「やっぱりそうなるか。それでも手がかりが完全にないと言い切れない以上は行くしかないな。」

ある意味地上最強パーティーなのだが、如何せん人間側と交流が全くない。

私では邪神は倒せない。神と言う概念を滅ぼすための力を私が持っていないからだ。

邪神と言う存在を止めるためには、私にはどうしても勇者やそれに準ずる存在が必要になる。

だが、私と精霊側にはその知識や情報が足りてない。

本当は邪神なんて存在とは出来る限り関わり合いにはなりたくなかった。

生贄としてこの世界に召喚された時点でそんな事は言ってられなかったんだが。

ただ生きるために人間を辞めてしまった私も邪神の事をとやかく言えない。

それでも向こうが命を狙ってくる以上私とて無抵抗のままでは居られない。

正直面倒すぎるが、私としては生きるための理由がある。


だから私は足掻くことにした。

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