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ぼっちは勇者を目指さない。  作者: タネモリ チコ
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第二話

私が異世界に飛ばされてから、正直この世界の他の人間に会ってない。

今周りにいるのは精霊王と精霊たちばかり。

ここが精霊界だから当たり前と言えば当たり前なんだが。


食べるものと寝る所については問題なかった。

飲み物?水の精霊がいる所で困るわけがない。

寧ろ綺麗すぎて他の場所で生水が飲めないような気がする。

食べ物は精霊界の森で採れた果実が数種類。

体に合わないなんてこともなく、元の世界のフルーツに似た食感で問題なく食べられた。

味は・・・凄く美味しかった。これ、他で食べ物に困らないか心配になりそうだ。

寝る所に関しては森の中の空き地に木製の扉が佇んでるっていうのは違和感があったけれど。

せめて巨木の幹にとかだったらまだマシだったんだけれど。文句は言えない。

扉の向こうにはちゃんとした住居スペースがあったからだ。

私の記憶から精霊神と王たちが作ったそうだ。扉の中だけ現代社会が広がっている。

ベッドにお願いしたら勝手に服が出て来るクローゼット。

学校の制服姿もここでは合わないので、今は無地のトレーナーにズボンを履いている。

多分今の服もこの世界には合わないかもしれないけれど、精霊しかいないので問題ないか。

流石にトイレと洗面と浴室まで揃ってた時は思わず頬をつねってたけど。

この部屋を案内された時に光の精霊王から、

『これから大変だから、出来る限り休める場所は貴方に合わせた。』

って言われた時には、嫌な予感しかしなかったんだけど。


精霊神に確認したんだけれど、私は正直危険な立場にあるらしい。

利害が一致したいじめられっ子と魔族が目論んだクラスごとの異世界転移。

邪神として選ばれたいじめられっ子以外の人間は私も含めて生贄的な扱い。

いじめを止めようとした私をいじめられっ子は見逃そうとしていた。

でも、邪神を完全に復活させたい魔族からすれば私の存在は見逃せない。

だから魔族たちは私を狙う。実に簡単な話だ。

そして精霊神をはじめとした精霊たちは邪神の完全復活を阻止したいので私を保護しようとした。

問題は私に何の力もない事だ。

よくお話では異世界転移とか転生とかしたらチート能力とかチート存在とかになったりするんだが。

生贄として召喚された私にはそういったものが一つもない。

どう考えてもお先真っ暗だ。


だから私はこの精霊界で地獄の特訓を受けることになる。

うん、ファンタジーの世界だよね。普通なら魔法で何とかなる筈だよね。

なんで10km走ってるんだろう。なんで筋トレやってるんだろう。

接近されたら魔法つかう間もなく殺される?それは確かにそうだけれど。

武器や護身術ぐらい使えないと駄目だって?その前に基礎体力が足りないって?

科学技術の発展したごくごく普通の中学生に一体何を求めてるんだろう。

多分というか、明らかに目標設定がおかしいと思うんだ。

火の精霊王がせめてこのぐらい使えてほしいと剣を振るってたんだけど。

動体視力を鍛える所から始めないといけない感じだったよ。どれだけ掛かるんだろう。


午前中は筋トレ、午後は座学でこの世界についての勉強と精霊術の訓練。

精霊術は私に使うだけの適性があったかららしい。そもそも適性が無いと精霊の姿が見えないとか。

六体の精霊王は割とカッコいい人間の男性姿でそれぞれ得意な分野で私を指導していた。

精霊たちは元々実体がないらしい。精霊神ですら概念的な感じだった。

でもそれでは訓練に支障が出るからと精霊王たちは敢えて人間体になってくれたようで。


『体が出来たら剣術を教えますから、後3セットスクワットして下さいね。』

爽やかにきつい筋トレを求めるカッコつけたがりな火の精霊王。

『理論も大事だけど発想も重要だから。基本さえ押さえたら後は使い方次第だ。』

常識にとらわれない魔法や精霊術の使い方を考えさせようとする水の精霊王。

『言語や文化は大事ですからね。無知が命に関わる事もあるんですよ。』

善人そうに見えて、腹黒く徹底した交渉術を叩き込もうとする風の精霊王。

『相手の一歩先を読む事だ。種族が異なっても根本は変わらない。』

自己愛が良い意味で心理戦や戦略への応用に繋がってる無骨な態度の土の精霊王。

『ここでの普通の移動手段は馬とか生き物だから、覚えておいて困る事はないからね。』

騎乗を好きなのが原因か、魔物を含めた生き物に詳しい闇の精霊王。

『皆、結構無理を求めてるけれど、君にそれができるって判ってるから頑張ろうね。』

色々あって残念なまとめ役。それでもリーダー役の光の精霊王。


個性豊かな6体の精霊王たちが特別に訓練をしているのだ。

人間のままでいられたら・・・良いね。

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