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世にも奇妙な異世界転生  作者: えろいむえっさいむ
失敗その1 原因:スキルの効果範囲を広くしすぎた
14/32

『翻訳』意思疎通ができない異なる個体との意思確認及び意思明示が可能となるスキル

主人公:学生、男、ひねくれ者

    異世界転生物の小説は熟読


【注意事項】

今回、作者の実験(遊び)で少し読みづらい部分が2か所ほどあります。

申し訳ありませんが、ぜひ「あとがき」まで含めてご覧ください m(_ _)m

あと、『翻訳』については全3部作予定です。続きも乞うご期待!

「ではお主には『翻訳』スキルを与えよう。そしてこの先にある光り輝く扉を抜けろ。そうすれば君は異世界に転生できる」


「はい、わかりました」


 そうして僕は異世界へと転生することにした。


 スキル選びはさほど悩まなかった。僕は異世界転生物の小説を読むに当たり、よく懸念していたことがあった。


 それは言葉だ。


 異世界へと転生するという超常現象を当たり前のように行っているのは、まあ物語上仕方ないと思う。そうじゃないと転生物小説としては面白くない。でも、そこで当たり前のように異世界人と会話できるのが不思議でならなかった。


 魔法の作用? スキルの恩恵? おまけでもらえる特殊効果? バカバカしい。日本語は世界でもかなり特殊な言語体系なのだ。パソコンの日本語訳版のプログラムを開発するのにどれだけ大変だったかとか、日本好きの外国人が日本語を学ぶのにどれだけ努力してるかとか、そういう話を知らんのか。

 そんな特殊言語を使ってる日本人が、異世界で当たり前のように会話できるわけがない。


 だからこそ僕はこの『翻訳』スキルを貰った。これなら確実に会話が成立する。会話さえ成立されればあとは簡単だ。

 現代の技術や知識を勝手に横流ししたり、先人の経験に沿った適切な対応を心掛けたりすればなんとかなるはずだ。それに最低でも異なる言語間や、もしくは人間と魔物との会話なんかを生業にすれば十分生活できるに違いない。

 『翻訳』スキルを使いこなしてモンスターテイマーなんてできたらなかなか乙じゃないか。


 僕はこれから先の展望を考えてニヤリとしつつ、光る扉を潜り抜けた。




…………




 飢餓、繁殖、飢餓、日光、飢餓、異変、異変、不安、警戒、警戒、人間、警戒、退避、警戒、退避。

 穴掘、穴掘、穴掘、穴掘、穴掘、穴掘、休憩、困惑、警戒、警戒、困惑、穴掘、穴掘、身繕、休憩。

 成長、成長、成長、水乾、成長、成長、成長、成長、成長、吸飲、成長、成長、成長、成長、成長。 

 探索、探索、探索、発見、齧切、確保、確保、帰還、帰還、帰還、目印、集結、進軍、進軍、確保。

 飢餓、探索、飢餓、探索、発見、観察、飢餓、観察、観察、機会、急襲、集中、襲撃、確保、帰還。

 不審、警戒、警戒、観察、発見、飢餓、舌舐、腹伏、警戒、不審、警戒、舌舐、飢餓、飢餓、飢餓。

 分解、分解、分解、分解、分解、分解、分解、分解、分裂、分裂、分裂、分裂、分裂、分解、分解。

 飢餓、喚声、飢餓、喚声、発見、確保、伸舌、咀嚼、満足、喚声、異変、警戒、遅延、苦痛、苦悶。

 生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、生殖、分裂、分裂、分裂、分裂、分裂。

 日光、合成、日光、合成、水乾、日光、合成、日光、合成、水乾、日光、合成、日光、合成、日光。





「んぎっ!!??」


 異世界に降り立った僕に突如大量の情報が襲い掛かってきた。

 あまりに多すぎるその情報の嵐に僕の脳みそは耐えきれずに悲鳴をあげる。脳みそに存在する全てのシナプスを放電しかねない勢いで生体電流が巡り、ありえない負荷で荷電されたその電流は文字通りの意味で脳を焼いた。

 耳や目鼻から血が流れ落ちると同時に焦げ臭い煙が噴き出てくる。膝から崩れ落ちる。

 そして僕は死んでしまった。


 おしまい。

光る老人「さて、今回はどんな感じになるかなぁ……って、あれ? もう死んでる!?


 え、え、何があったの? いきなり魔物に襲われたとか? でも転生先は危なくないように厳選したはずなんだけどな。何があったんだろ。えっとログを確認っと、えーっと、ふむふむ。


 あー、うわ。ふむ、ふむ。なるほどね。あー、あー、これはマジか……。


 しまったなぁ。スキルの対象範囲の「意思疎通ができない異なる個体」をそのまま使ってて、対象者を選択できないようになってたのが原因か、これ。いきなり50億近い個体の思考をいっぺんに『翻訳』しちゃってるなぁ。


 しかも認識可能な範囲って制限がダメな方に作用しちゃってるっぽいな。視界に映る範囲だけのつもりだったけど、たぶんこれ「視界に入る範囲全て」及び「体に触れているもの全て」って解釈されちゃってるな。えっぐいことになってる。


 鳥とかアリとかカエルとかはまだしも、周辺の草花とかコケとか、さらには自分の体の中にいる大腸菌とかのバクテリアやウィルス、精子の思考まで読んじゃってるわ。

 ほんの1秒もしないで死んじゃったのに『翻訳』に残ってるログカウントが兆超えちゃってるわ。そりゃ脳みそ焼き切れるよね。これは酷い。


 あー、失敗したなぁ。地味なスキルだからせめて性能だけは高めにしとこうと思ったけど、まさかこんな副作用があるとは気付かなかったなぁ……。

 ていうかそもそも、翻訳効果はおまけでつけとくから、わざわざこんなスキル選ぶ奴がいるとは思ってなかったわ。

 完全に予想外だ。相手も知らなかったしオレも知らなかった。ついでに悪気もなかったわけだから誰も悪くない、ただの不幸な事故だ。うん、だからオレは悪くない。


 よし、気を取り直して、次のときのために改良だけはしとこうかな。もうちょっと範囲を狭めておかなきゃ。


 ……うーん、こんな感じかなぁ。よし、まあいっか。次の転生者に無理やり押し付けて実験してみよう。次の転生者早く来ないかなぁ」

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