幼景懐古
いつか夢見た大人というものに
手が届いたのはいつだったろう
それはあまりに虚しい称号であり
気づいた時には取り返しがつかないのだ
われはいま心より悔やむ
過ぎ去りし日々の何処かに落としてきた
あの宝物はきっと
もうどこにもありはしないのだ
積み重なる時間に埋没し
風化する運命にあるそれを
未だ諦めきれないこの心の不器用さが
ひどく惨めで物悲しい
ああ、われらよ
夏が照らす在りし日の
無邪気に駆ける少年も
いつかこうなってしまうのだ
ああ、われらよ
まだ見ぬ未来に夢を抱き
目を輝かせていた少年も
いつかこうなってしまうのだ
群青に染まる夏空に
ふわふわ浮かぶ入道雲よ
あの頃と変わらぬその出で立ちに
羨望の眼差しを送るわれは
きっともう変わってしまったのだ