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当たり前のこと

クロラックに潜む緑髪の皇子。

その名はミルエル。

彼もまた試練に立ち向かっていた。


「エビデンス、勇者召喚の準備は出来たのか!」

「はい、滞りなく。あとは魔力を坊っちゃまが魔方陣に注ぐだけでございます」


第一皇子ミルエルが尊大に臣下に言った。

臣下の名はエビデンス。

ミルエルの股肱の臣であるエビデンスは頭を下げてミルエルの勇姿を見定めている。

勇者召喚の儀である。

ミルエルの避けて取れない道。

真に皇帝となるのならば勇者の力は必須。

この世の根幹は力だ。

その事にミルエルも気付き始めていた。

だからこそ少年は魔方陣に手をかざす。

素材はある。

策はない。

ルイスのように魔方陣を複数作るような暴挙も仕掛けていない。

エビデンスもミルエルに何も言わなかった。

奇をてらうことはしなかった。

ただ純粋にミルエルは英雄を呼ぶのだ。

いつだって自分の英雄ヒーローを。

それが一番の作戦だとエビデンスは理解していた。

ミルエルはただ未来を求める。

その一点にのみ飽くなき欲がある。


「僕が強力な勇者を呼べば僕もエビデンスも皆からチヤホヤされるのか!」


手に魔力を集中させながらミルエルは子供らしい単純な未来の姿を想像する。


「左様です、坊っちゃま。坊っちゃまも大手を振ってクロラックに君臨出来るでしょう」


ミルエルはエビデンスの言葉に愉快そうに微笑む。

今迄自分を支えてくれたエビデンスの言葉。

ミルエルは信じる他ない。


「はははっ!! それはいいな!! 」


思いっきり最高の未来を想像してミルエルは高笑いした。

そしてふと召喚魔法を行使する中、思う。

ミルエルにとって勇者とは。

英雄ヒーローとは何なのか、と。

ミルエルにはそれが分からない。

だからミルエルは探す。

自分が想像出来る英雄を。

そうしたら自然と、いつもポーカーフェイスを保ちながらミルエルを支えてきたエビデンスの顔が浮かんできた。

その瞬間、光が迸る。


「この反応は......!! 坊っちゃま......!!」


眩い光芒がエビデンスの視界を支配する。

魔法が、作用した。

だが魔方陣に勇者の姿はなく。

ミルエルは魔力を使い果たし倒れていた。

エビデンスはミルエルに駆け寄る。


「坊っちゃま!?」

「エビデンス......? 召喚はどうだ......? 僕はちゃんと勇者を呼ぶことが出来たの、か」


魔力を使い果たし息も絶え絶えなミルエル。

エビデンスはミルエルの手を包み応える。


「いえ。勇者の姿は確認できていません。ですが魔法は確かに成功しました」


ミルエルはエビデンスの言葉に納得する。


「そうか。ならいつか僕が本当に危なくなった時に来てくれるのかもしれないな。僕はきっと、そういう勇者を呼んだのだから」


ミルエルはエビデンスの顔を見て笑う。


「坊っちゃま......それはどういう?」


意味が分からないといったエビデンスの顔。

それを愉快げに眺め、ミルエルは意識を手放した。

物知りなエビデンスが自分に物事を聞くというのがミルエルには可笑しかったのだ。

ミルエルにとってそれは当たり前なのに。

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