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同族嫌悪

ここはクロラック城、現皇帝の玉座。

玉座に魔王のように座る男、一人が皇帝。

その玉座の前にてあくびをしている黒髪の青年がまた一人、皇帝の前に立っていた。


「俺は眠いが、そうだな。お前は俺に話があるんだろ? まさか世間話をしようなどと俺もお前もそうはならないことは既に明白だが」


奇妙な言い回しで老練を体現したような存在に黒髪の青年は堂々と言い切った。


「道理よな、ゼロよ」


歪んだ笑みでゼロと呼ばれた黒髪の青年を見据える皇帝。

その笑みには愉快さが滲み出ていた。


「これでも俺は剣剣剣トライナイトだ。暇じゃないから、話は手短にしてくれ」


不遜にもそう皇帝に断じるゼロ。


「ほう、お前は惰眠を貪るだけだろうよ。お前こそ言い様が余興めいておる」


笑みを絶やさず皇帝が面杖を付く。


「確かにな。俺も染まってきたのかもしれないな、ある意味では。まあどうでもいいが」


それこそどうでもいい、と言いたげな表情で皇帝シャロン・アルファ・クロラックは聞き流していた。


「全ては夢幻の如く儚い。お前と儂の存在とてその一部よ。不死にでもならん限りはな」

「お前は憑代つがいだけでは満足できないんだろ? ふん、強欲な奴だ」

「そう言うな。儂の友、ゼロよ。強欲こそが儂の業であり、生き様よ。古来より人は欲することにより虐げ、争い、奪いあってきた。儂は人間の本能に従い続けているに過ぎぬ」


シャロンとゼロは愉快げに笑い合う。


「俺はお前の目的には賛同しかねるが、手助けくらいは考えてやるよ。同類のよしみだ」


剣剣剣トライナイト最強の男ゼロはそう言った。ゼロのような青年が剣剣剣に抜擢されるのは稀有な例に違いない。

それもその中でゼロは最強。

そう噂されていた。

剣剣剣トライナイトとは皇帝を護る三つの刃であり、剣であり、三人の人間だ。

クロラック最強の騎士達である。

ゼロは歪んだ笑みでシャロンに背を向ける。

ゼロはまだ若い。だが彼は他を隔絶する強さを所有しているのは間違いない。

シャロンはゼロに呼びかける。


「見捨てられた草原に二つの巨大な魔素を持つ者が現れた。一つの個体がレイフォルクに潜んでおるかもしれぬ。これを討伐しろ、そいつは儂の計画を崩すイレギュラーかもしれぬ故にな」

「お前が警戒するほどの相手なら期待だな。俺も楽しみにしておくとしよう」

「足を掬われぬのなら構わぬ、だがゼロよ。今回はお前でもあまり余裕はないかもしれぬぞ? 儂が知る限り、レイフォルクに潜む個体は間違いなく最強格の一人。魔素の量が桁違いに違う混沌よ。憑代を使うか純粋な魔族かは知らぬが、化け物よな」


ゼロはシャロンの言葉に愉快そうに笑う。


「同族嫌悪か? 感情論で俺に足を運ばせるのはやめてもらいたいところだが」

「それは儂にも分からん。イレギュラー云々は置くにして、純粋な感情から儂はそやつを警戒しているのかもしれぬ」


珍しく苦い顔をするなシャロン。

あらゆる経験を詰み、クロラックという大帝国を治める豪傑にしては珍しい表情である。ゼロは玉座の間を立ち去る前に言った。


「まあいい。イレギュラーは俺の領分だ。どちらにしても俺もそいつもどっちもまともじゃない。精々語り合っておくさ」


ゼロはレイフォルクへ足を向ける。

栗生 学良が滞在するレイフォルクへ。

心持ちゼロの足は軽やかだった。

ゼロは期待している。

空虚なこの世界で戦い合える同類を。

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