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神様の宴  作者: 大山椒魚
4/13





ハローハロー


ここは何処ですか?



幼い頃には自然と思い出していた

前世の記憶を


日本とは大きく隔たった世界

幼くして大きなショックを受けた私、未吉(みよしあやめ)はしかし、直ぐに立ち直った


何故なら、この世界は前世で私がドハマリしていた小説の世界だったからだ


小説『神様の宴』だと分かったのには理由がある

重要な登場人物に出会ったからだ


未明(ほのかとばり)

十一家の一つで、主に神事を執り行う家に生まれ、のちに若くして神洞省(しんとうしょう)【国の神事を司る機関】の責任者にまで上り詰める人物

この時は、まだまだ少年だった彼に分家の娘として挨拶をしに行った

中性的な顔立ちに色素の薄い髪と目、陽に透けるような白皙の美形。彼が未明帳(ほのかとばり)だと気付きキョドリながら挨拶をした私にフワリと微笑み、優しく労った

次の瞬間


「今は許してやるがいつまでも落ち着きのない阿呆なら家の恥だ。その時は処分してやるから覚悟しておけ」


耳元でボソリ(もちろん大人には聞こえないようにね!)


当時、八歳の私にも容赦のないドエス腹黒っぷり

シビレました


神様ありがとうございます

私は前世で信心深い人間ではなかったが、こんなに神に感謝したことはない


一番好きなキャラの黒天使すぎる幼少期を拝めたのだ

もう一度死んでも後悔はしない


いや、まだ死ねぬ!!

神様は本当に神だ


(とばり)様がいるということは他のキャラもいて、小説でのあんなシーンやこんなシーンが生で拝めるということ


もう一度、本当にありがとうございます神様ー!!


そう思って未吉家で頑張った

家柄、未明家のサポート役が多いので王宮の女官になるべく奮闘した

そのかいあって神洞省(しんとうしょう)の女官になることができた


この世界は変わっていて、一つの神様を絶対的に崇拝している。それだけならおかしくはないが、その神様が使わした化身として十二の家の人間は何かと特別視されている


小説の設定でもあった干支にちなんだ設定だ

神洞省(しんとうしょう)の人間は神に使える。女官は地球でいうシスター的な立場なので、王宮でも色々な所へお使いに行く。そのおかげで調査しほうだいだった


主要なキャラクターが全員いる!最高!


小説の設定どおりなら、私は主人公と同い年に転生している。このまま行けば順調に胸キュンシーンが見られると思っていた。けれど、おかしな点がいくつか出てきた


アレ?毒椿と暁様の婚約は?

椿の実家の陰謀は?


何だかおかしい……ここまで設定通りなのに椿だけイレギュラーだ

これは直接確かめるしかあるまい






*****************






ハローハロー



アレは誰だ



感想はその一言に尽きる

アレは世紀の悪女、西安椿ではない


今は十一、二歳の少女だが面影はハッキリとある

線の細い華奢な身体に艶やかな黒髪は宮女仕様に結い上げられている

整った儚げな美貌に血のように赤い瞳

後数年もすれば、外見だけはあの毒椿その物になるであろう少女はその眼差しも行動も毒椿とは似ても似つかなかった


まず、王太子である暁様の婚約者じゃない。出会ってすぐ、確か椿が十歳くらいには婚約していたはずだが?

小説では婚約者としてお姫様扱いだったが、何故か後宮で宮女見習いをしている

暁様が彼女を初恋の相手だと見ている事は周知の事実のようなのに、それ以上の関係はないようだ


椿を調査ストーキングし始めて、感じたのは暁様をまったく相手にしていないということだ。暁様が声をかけても素っ気なく、庭園で王子に花を贈られても突き返していた

ありえない……


椿の普段の行動を見ると中々興味深い

彼女は暁様にかまわれていることで宮女の中では浮いているのにあまり気にした様子もなく、淡々と仕事をこなしている。さらに食べ物のことになると目の色を変える

私は見てしまった

厨房でお菓子を横流ししてもらいそれを受け取る時の嬉しそうな顔、それを持って人気のない庭園で貪り食うその姿には孤高の毒椿の面影はない

人目がないのをいいことに芝生に転がり背伸びをする姿は毒椿どころか良家のお嬢様ですらない


のびのびとした女の子

静々と宮女の役目を果たす女の子


彼女と話をしてみたいと思った







*********************************








私とヒロイン、そして椿の十六歳の春


『神の宴』が始まる時が来た

ヒロインの東郷春が進士として王宮に入った瞬間を目撃すべく動いていると、またおかしな事が起こった


暁様が彼女に全く反応しないのだ



小説では春の赤い瞳を見て既視感を覚え、大勢の進士の中から腕を取り引き止める、はずが暁様は何の行動も起こさない


婚約者である椿は暁の前では媚びへつらい、下の者には高圧的で見下した態度をとる。暁様は心優しき初恋の少女であるはずの椿に違和感を感じていた

椿と出会った当時、母を亡くしてボロボロだった彼は椿に救いを求めるが、むなしさが募るばかりで鬱々としていた。そこへ本当の初恋の少女が現れ、幼い日のままの純粋な眼差しを向けられ……


二人は苦難を乗り越えハッピーエンド

のはずだったが………


ヒロインの春タンを観察ストーキングしてしばらくしても暁様に変化はない

胸キュンイベントの場面はあるのに暁様は一向に行動を起こさない


そして、無反応の暁にポカンとしていた春タンは突如行動を起こした



「なんなのよ!アンタの所為であかつきがあたしになびかないわ!」

「アンタが裏で手をまわしてる事はわかってんのよ!あたしのハッピーエンドを邪魔するつもりなら容赦しないからね!!この毒椿!!!」



事実無根なのに罵られた椿は唖然としていた。無理もない

もしかしたらあの春タンは………


色々と筋書きから狂って来たので私も影ながら動いてみようかな?


そう考えていたら呆れたような目でとばり様は私を見ていた


「おい、今度は何を企んでいる?」

「へ?」

「ニマニマして気色悪い」


ヒドイ、執務室で仕事をしている帳様にお茶を出しただけなのに


「何も企んでなどいませんわ」

「どうだか」


いやー目の保養だ

原作通りの美形に成長した帳様はただいま二十三歳です


何も企んでませんよー

明日、椿に会いに行こうと思ってるだけだもんね




ハローハロー


椿さん


貴女はどんな子なんだろう












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