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神様の宴  作者: 大山椒魚
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衝撃を通り越して怒髪天だ



「何それ!!付きまとってんのはあっちじゃん!!ていうか、つばきの役割酷すぎない!?」

「まあまあ、それはお話の中でのことだからさ。色んな思惑や策略が巡らされてて面白いんだから。椿だって歪んでても本気で暁様を愛してて…」

「二次元での『椿』がでしょ!私はあんな残念王子様好きじゃないの!」

「残念王子なんて言わないでよぉ!初恋の相手を間違えたのだって事情が…」

「もういいわ」


確かにこの世界はその小説がもとになっているのかもしれないが私が椿として生まれた時点で話の筋書きは大幅に変わっている

まず現在、私と暁は婚約などしていない。するつもりもない

寵愛だなんだと騒ごうとした親類はなんとか抑えているし、宮中ではなるべく変な噂は立たないようにしている


「つまり、平和な生活を送るには暁と転生者のヒロインをさっさとくっつければいいんだ!」

「あっ、やっぱりあのヒロイン転生者なんだね」

「知ってたの?」

「はい!東郷春が王宮に入った時から絶賛ストーキングしてましたから!」


この子今、カワイイ顔してなんて言った?

いい笑顔で親指を立てるな


「…菖サン?」

「春タンがんばってたよ。暁様との出会いを忠実に再現してたけどアッサリ対応されてポカーンてしててさ、ウププ」

「……そっかぁ」


転生仲間の菖はかなり変わった子のようだ

わりと可愛い柔らかな容姿が今はニマニマと歪み、邪なオーラを噴出している

その菖がふと真顔に戻る


「椿は暁様のことホントに好きじゃないの?」

「まったく」

「じゃあ、ホントに暁様とヒロインくっつけるの?」

「もちろん」

「うーん。なら、性格のひねくれた性悪女『元祖毒椿』を演じるの!?」

「そんなわけないでしょ!!」

「ええー…高慢ちきな椿様好きなのにー。決めポーズ付きの「オホホホホホ、この小娘が!!」って言わないの?」

「言わない!!」

「でも二人をくっつけるなら当て馬が必要だと思います。個人的に春タンにドエスな嫌がらせする椿様を拝みたいであります」

「却下」



菖は思ったよりも末期のようだ



「でも、そう簡単にはいかないだろうなぁ」



ヤレヤレと思っているとポツリと菖が何か言った


「えっ?何か言った?」

「何でもないよー」


いや、気になる

何?その含みのある笑顔









*********************************************








さっそく平穏な生活のため動く

菖に聞くところによると、初恋の相手を間違えたのは私が珍しい赤い瞳をしていたせいだ

暁も最初にいっていたな。その赤い瞳は間違いないって


だが、ヒロインの春と出会ったのは春が四歳、暁が八歳の時だ

地方から、医者である父親と王宮に登城していた春は父親から離れて後宮まで迷い混んだ。そこに当時、母親を病気で亡くしたばかりの少年暁がいたのだ

幼い春は無邪気さとその心の暖かさで暁を癒した


春に惚れた暁だったが、春はすぐに消えてしまった

名前さえわからなかった赤い瞳の少女を暁は探し続け、見つけたのが十歳の私だったわけだ


完全に馬鹿だろ


名前くらい聞いとけ。そして椿が赤い目になったのは五歳の時だからね

まぁ、二次元椿は上手いこと勘違いを利用して証拠を偽造、隠蔽したらしい


「その証拠が登城記録らしいの」

「はい?」


呆れ半分に首をかしげたのは兵部(ひょうぶ)【軍や警備兵等の統括機関】所属の戌爪隼いぬづめはやと二十四歳(男前!)


兵部(ひょうぶ)で登城記録をつけてるでしょう?王太子が八歳頃の記録が欲しいの」

「なんでまたそんなもんが必要なんだ?」


凛々しい眉を下げて苦笑する様もとても精悍な男前だ。若くして部隊長を拝命している実力者であり、十一家の一つ戌爪家の嫡男様

十一家の人たちとは何人か知り合いがいるが、暁をはじめ全員ことごとく美形や男前だらけだと思っていたがこの世界が恋愛小説をもとにしていると知って納得した。眼福眼福

次期将軍と名高い彼とは友達だ


「王太子様とのケリをつけるためよ。証拠を上げればちゃんと現実を見てくださるはずだわ」

「……お前いいかげんあきらめたら?王太子の何が不満なんだよ」

「勘違いで人生預けてたまるもんですか。戌爪様には貸がたくさんあると思いますけど?」


ウッと気まずい顔をしてはやとは目を逸らす

何故、彼と友人かというとそれは隼の弱点をカバーして来たのが私だからだ


「この間の宴席でも貴方のお酒を水にすり替えて差し上げたのは誰でしたかしら?」

「………」

「大切な酔い止めを提供しているのは?」


隼は腕も確かだし頭も良いがとことん酒に弱い

何年か前の宴席で演奏した後、庭を散歩していたらお酒に苦しむ彼を見つけたのだ。それ以来できる限りフォローしている内に親しくなった


「……わかった。登城記録はなんとかするよ」

「ありがとございます!やっぱり頼りになりますわ~」

「本当にイイ性格してるな、西安殿は」



あらやだ、心優しい私に惚れてはダメよ?

……スミマセン調子に乗りすぎました



取りあえず暁とヒロインの誤解を解くのが先だ












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