600秒で無理矢理取得!ヨトゥンさんの精霊語教室〜 なのだが…
書ける時に書いてすぐさま上げるスタンスでいきたい。
朝起きたらエマさんは既に黄金の草原を発っていた。
もう少しお話ししたかったのだが…
まぁいいか。
そんなことより魔法の特訓だ!!
俺はヨチヨチと後をついてくるヨトゥンへと向き直り、今後の作戦を伝えた。
つまりじいちゃんの説得である。
父ちゃんはちょろいので言わずもがな。
母ちゃんはのほほんとしてるので多分説得可能。
しかし、じいちゃんは違う。
おそらくじいちゃんは次の氏族長に俺を据えようとしている。
なので危ない事なんかには結構敏感に対処してくる。
俺の事を考えてくれているのは素直に嬉しいのだが、俺の目標は世界中を巡る食道楽の旅なのだ。
前世でだって、調理は狩りの準備を始めるところから調理なスタンスの俺だ。
成人したらすぐさま旅立ちたいのである。なので子供期間は色々と早いうちから準備をしたいのだ。
なので作戦だ。
知識欲旺盛なじいちゃんのことだ、ヨトゥンの魔法の知識には食指が動くはず。
とりあえずヨトゥンの知識でも釣れないのなら仕方が無いので、俺が今後どうしたいかを真摯に話すとしよう。
昨日はじいちゃんは我が家に泊まった筈なので、居間に居るはずだ。
それでは作戦開始!
「じいちゃんじいちゃん」
「やぁ、おはようククルス」
「おはよう。じいちゃん、おはなしがあるの」
「なんだい?精霊のことかい?それともまた本の中に解らないとこでもあったかい?」
「とってもだいじなおはなしなの。だからぼくのへやにきて」
「わかったわかった。じゃあこのお茶を飲んだら行くよ。先に部屋で待っていてくれるかい?」
「わかったー」
部屋に移動。
カーペットに座りヨトゥンを抱いて待つ。こいつマジふわふわ。
さて、たいして時間も経って居ないがじいちゃんが来た。
「じいちゃん、すわってー」
「はいはい。失礼するね。よいしょっと。それで、大事なお話っていうのは何かなククルス?」
「まほうをおぼえたいの」
「…ククルス、5歳になったら学校へ通ってもらうんだけど、そこで教えてもらえるよ?わざわざ今覚えなくてもいいんじゃないかい?それに、おじいちゃんはククルスが心配なんだ。魔法は確かに素晴らしいものだけれど、扱いを間違えるととっても危険だ」
「だいじょうぶ!ヨトゥンはとってもすごいからきちんとおしえてくれるよ!」
「不肖わたくしめが、目を光らせておりますので危険はありません。それに、万が一、億が一ククルス様が扱いを間違え、人様や御自身を傷付けるような事になりましても、時間が経ったり即死で無い限りはわたくしが癒す事が可能です」
おっと、じいちゃんの瞳にほんの少し興味の光が。
これはいけるかな?
「おじいちゃんはそれでもククルスが心配だ。それに、ククルスは魔法を今から覚えていったいどうしたいんだい?さっきも言ったけど、5歳からでも遅くはないと思うし、ヨトゥンさんみたいな凄い精霊と契約しているんだ。今の時点でもほかの子供達なんかより遥かに先を行っているんだよ?」
うーむ。これは普通に本音をぶっちゃけた方がいいかな?
「じいちゃん、おれはね。りょうりしたり、たべるのがすきなんだ」
「そうだね。この前のベーコンだっけ?あれはとっても美味しかった」
「ありがとう。それでね、おおきくなったら世界中をまわっていろーんなたべものをたべて、いろんなりょうりをつくりたいんだ」
「それは獲物を獲るのも自分でやる気かい?人に任せてはダメなのかい?」
「だめだよ。たおしかたで味がかわるまじゅうもいるかもしれない。それに、じぶんでたおした命のをむだにしたくないんだ。ひとかけらものこさずたべたいんだ。ひとまかせなんてできない」
「おじいちゃんはね。ククルスにアーヴィングの家を任せようと思っているんだ。ククルスの子供が育って家を任せられるようになってからでも遅くはないんじゃないかな?草原の民の寿命はエルフ程じゃ無いけど長いんだよ?」
「そんなのまっていられないよ」
「どうしてもかい?」
「どうしても。ぜったい」
少しの間、じいちゃんは目を瞑った。
長いため息を吐いて、口を閉じ、目を開く。
なにか決意したような瞳で俺に問いかけた。
「ククルス。君は転生者かい?」
その言葉を聞いて俺は目を見開いた。
あまりの驚きに言葉を発せない。
俺の様子をみたじいちゃんは納得したような顔で短く息を吐いた後、語りだした。
「薄々そうではないかと思っていたんだ。草原の民は死ぬまで子供なために早熟で物覚えも早い方だけど、ククルスは早熟なんて言葉では片付けられない。草原の民でもね、何人かは過去に転生者はいたんだ。有名な所だと絵本の勇者クラウチ様とかだね。彼等はとても早熟だったし、色々な発明なんかもした。ベーコンを作ったククルスを見ていてもしかしてとは思っていたのさ」
「じいちゃんはおれがぜんせのきおくをもっているのをきもちわるくおもったりしない?おれがククルスじゃなくてべつのやつでククルスをおいだしたとかおもわない?」
「何を言っているんだククルス。ここにいるククルス以外の誰が僕の孫だって言うんだい。僕はククルスが生まれた時には飛び上がって喜んだし、ククルスが本を読んだり、僕の書いた本の感想を聞かせてもらった時なんか、ああこの子は僕に似て本が好きな子供なんだと内心はしゃいでいたんだよ?」
やばい…泣く…
「よがっだ…ありがどうじいぢゃん…」
泣き止むまでじいちゃんとヨトゥンはずっと傍に居てくれた。
前世で孤児院育ちだったせいか、こういう家族愛みたいなのには耐性がないな俺…
「でも、それとこれとは別問題だ。ククルス。君は僕の孫だからこそあまり危険な事はして欲しくない。あと、氏族長もやってほしい。早く隠居したい」
「じいちゃん、ほんねもれてる」
「おっと失礼」
「じいちゃんがまほうのくんれんをみてるときでもだめ?」
「うーん」
「あと前世のきおくでつかえそうなことはおしえるからじいちゃんの代でやりたいことはまとめてかたづければいいじゃん。おさとかしょうじきやりたくない。とうちゃんとかあちゃんに弟か妹をはやくつくってもらってさ」
「いやー正直あのふたりの子供はあんまり期待出来ないようなきがするんだ」
「うまれたらおれがきょういくするよ。これでも前世では16年がくふでべんきょうしてたんだ」
「ほう。それは興味があるね」
「さんじゅつなんかはじいちゃんでもわからないようなもんだいもとける。前世はまほうがなかったけど、とってもぶんかはすすんでた」
「ほうほう」
「だいたい、前世でしんだときは29さいでおとなだったんだ。きけんかそうじゃないかくらいはわかるはずだよ」
「それもそうか。よし。僕もヨトゥンさんの魔法には興味があったし。僕が見ている間は許可しよう」
やっと許可が出た。やったぜ。
早速魔法の訓練だ!
しかし、窓から覗く風景は夕方だった。
今日は飯食って寝よう。
夕食の席で父ちゃんと母ちゃんに転生者だとじいちゃんの説明付きで打ち明けた。
二人の反応はこうだ。
「まぁー。じゃあ、ククルスはベーコンみたいな美味しいお料理を、いっぱい知ってるのね。あとでお母さんに教えてね」
「おおー。じゃあ、ククルスも将来は勇者のクラウチ様みたいな、凄い人になるかもな。明日ミーチャの奴に自慢してやろう」
結構軽かった。
別に隠してた訳じゃないけどなんか泣いて損をした気分だ。
さて、新しい朝が来た。希望の朝である。
じいちゃんはまだ見ぬばあちゃんを連れてこの家の傍に小さな別邸
を建てて二世帯で暮らす心算らしい。
ちなみにばあちゃんをなぜ見たことがないか聞いてみると「シーマは竜たちの孤島群で研究しているから数十年単位でしか帰ってこないんだ。」との事。
俺が産まれた時に手紙を出したそうなので、もうそろそろ帰って来るだろうと言ってた。
まぁーさておき魔法だ。魔法。
今は俺の部屋で今日の講師たるヨトゥン先生の前にじいちゃん共々座っている。
座学からだ。基本だよね?
「さて、では、講義を始めたいと思います」
「よろしくおねがいしまーす」
「お願いします」
「では。主様は魔法発動の前段階である魔力の操作は出来ているようなので、発動の方法を紹介するところから始めます。発動の方法は複数有るのですが、主様には精霊語をお勧め致します」
「せいれいご?」
「はい。精霊語とは精霊の話す言葉で、魔力を口から発しながら喋る事で魔法が発現します。また、その魔法のイメージを明確に持って発動するとかなり細かく制御することも可能です。例を見せましょう」
『Hdoebdlabw』
ヨトゥンがよく分からない言葉を発すると、目の前に氷で出来た精緻な細工の王冠が現れた。
「これが精霊語です。これは精霊ならば下位の精霊でも扱えます。特徴としては扱いやすく、応用が利きます。しかし習得が非常に困難です」
「むずかしいの?」
「ええ、とても。わたくしが上位精霊になって知恵を得てから、この世界の人々の言葉を覚えた時には戦慄を覚えました。なんて簡単な言葉なんだと。しかし、このややこしい精霊語でなければ言葉を発するだけでは魔法の発動たり得ません」
「ヨトゥン。もしかしてだけどやみぞくせい?」
「…流石主様。慧眼でございますね。そうです。わたくしの持つ、目に見えない知識。これを闇属性の精霊語で共有、転写するのです。ですので主様には1文だけ精霊語を覚えて頂きわたくしの精霊語の知識をそのまま頭に刻み込んで頂きます」
この後一時間程、英語の練習のように何度もヨトゥンの指摘を受けながら発音を直したり、声に魔力を乗せる練習をした。
「主様。完璧でございます。それではわたくの中にある精霊語の知識をイメージしながら魔力を声に乗せ、先ほどの言葉を言ってください」
『Thdkbbwikpo.shscstwj』
瞬間、膨大な知識が脳を熱する。
視界が白く染まる。ヨトゥンとじいちゃんが何か言っているがよく分からない。
だめだ。意識が持たない…
知ってる天井だ…
「んあー」
「目が覚めたかい?大丈夫かい?」
「んー。とくにへんなとこはない。どれくらい気絶してた?」
『10分ほどですよ主様』
『あーそんなもんか。じいちゃんどいて、起き上がるから』
「???」
「どうやら上手くいった様子ですね。主様、精霊語で語りかけてもお爺様には通じませんよ」
「ああ、なるほど。なんかへんなかんじだね。じいちゃんどいて、起き上がるから」
「ああ、はいはい」
さて、では精霊語を試してみよう。
『優しい風よ、ヨトゥンの体を我が元へ運んでおくれ』
ヨトゥンはふわりと浮き上がり僕の胸元へゆっくりと向かってくる。
危なげなくキャッチ。実験は成功だ。
「できた!」
「おめでとうございます主様」
「おめでとうククルス。時にヨトゥンさん。精霊語は僕にも教えて貰えるのかな?」
「ええ。主様、これも訓練です。明確にイメージし、分かり易い言葉を使えば失敗はありません」
「わかった。やってみる」
『闇よ、我が知識を祖父たるジーンに優しく注いでおくれ』
じいちゃんは白目を剥いて倒れた。
優しくって言ったんだけどなー。
十分くらい後。
『風よ僕の元へかの本を届けよ』
じいちゃんに本棚の本が飛んでいく。
じいちゃんは片手でキャッチ。
「おおー」
「いやー、ふざけるなってくらい複雑な言語だけど覚えてしまえば便利だね」
「では次の講義に入りましょう」
「え、まだやるの?」
「今日の内は他の発動方法を口頭で伝えるだけですよ。あと少し頑張ってください主様」
「あいあい」
「では。他に主な発動方法として、魔力魔法陣という方法と紋章刻印という方法があります」
「僕なんかは紋章刻印をつかってるんだ」
「では実技はお爺様にも手伝って頂きましょう。説明を続けます。
魔力魔法陣とは魔力で魔法陣を空中や地面に描き魔法を発動する方法です。これは暗記力が必要になりますね。魔法陣毎にある程度決まった魔法が発動します。そこにイメージを付け加える事で細やかな微調整を施します。魔法の発動方法もイメージで行うのが主流ですね。メリットとしては同時展開が容易ですので殲滅力が優れています。
また、設置して任意で発動する等のトリッキーな扱い方も出来ます。デメリットとしては、目に魔力を注ぐ魔力視を使うと割と簡単に魔法陣から目的が悟られ、対応されてしまう事があります」
「ふーん」
「あんまり草原の民は魔力魔法陣を使わないんだ。この方法は年がら年中戦争してる人族なんかがよくやるね。あとは環境の厳しい魔大陸なんかは生きるためになんでも使うというから覚えてる人は多いかもね」
面倒だが、戦術の幅は広いほうがいいし、これも習得しておこう。
「さて、残る紋章刻印ですが、これはそのままです。先ほどの魔力魔法陣で扱った魔法陣を物に刻み込み、それに魔力を流すと発動する方法です。これが最もポピュラーですね。メリットとしては魔法の内容を発動するまで相手に悟られにくいこと。また、魔力を流し続ければ魔力が尽きるまで延々発動する事です。デメリットは様々ですが、あえて挙げるならあくまでも道具の延長だということですかね」
ふーん。まぁ要は魔法の道具って事か。覚えとくにこしたことはないけど、これは多分職人さんに任せた方がいいんじゃないかな。
「これが大まかな発動方法です。他にも細やかなものはありますが、それは次の機会に。どうでしたでしょうか主様」
「まー、大体わかった。ところで精霊語がつかえるひとたちはどれくらいいるの?」
「正確な数はわかりませんが少ないでしょう。余程の努力家かわたくしたちのように闇属性の適性があり尚且つ知識の転写が扱える精霊と契約してる者に限りますからね」
「お父さん、ククルス。お昼ご飯よー」
「今日はここまでに致しましょう」
「そうだね。お腹もすいたし」
「ごはーんごはーん。ヨトゥンはやくいこうー」
覚える事は多そうだが、胸は高鳴っている。
きっとこれからは楽しい時間が過ぎていくのだろう。
まだ見ぬ食材まってろよー!!
前半ひらがなばっかでつかれたぜ。
読むのも大変でしょうから次あたりから少し時間飛ばして呂律だけははっきりさせます。