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精霊と契約したんだが…

 目の前にはデカイペンギンが跪き、部屋は人口密度に反比例して異様に静かだ。


 あれ? トサカがあるのはイワトビペンギンだったかな?

 しかし結構ダンディな声だな。憧れる。

 あ、そうか。名前を付けて契約しないといけないんだっけか。


 えーと名前名前…

 くっそ。浮かばねぇ! 開け! 俺の厨二病の扉!!

 えーとサスカッチとかイエティは雪男だし、霜の巨人って確か北欧神話の精霊集団だっけ? なんとかヘイムって氷の世界に住んでたような…


「ヨトゥン! ヨトゥンだ!」

「ヨトゥンですね。賜りました。では契約の証である印を刻まさせていただきたいのですが、どこかご希望はありますか? わたくしとしてはあまり人目に晒されないような所がお勧めです」

「え? えーとじゃあむね?」

「ふむ。魔力炉も近いので良い判断だと思います。では、これにて契約完了です主様」


 ヨトゥンが立ち上がる。

 スッと胸が光る。

 襟を引っ張り胸をみると雪の結晶と王冠のようなマークが中央にある紋章が胸の真ん中に刻まれていた。

 つーか思い出して思わず口に出たらそのまま決定しちゃったよ。この事は胸に秘めておこう。


「さて、このままの姿ではこの屋敷で住まうのはいささか不便ですね。主様より目線が高いのも少し不敬ですし。体を小さく致しますので、主様、もう少し魔力を頂戴してもよろしいでしょうか?」

「え、あ、はい」

「お許し頂きありがとうございます。では」


 ヨトゥンがぼんやりと緑青色の光に包まれ、やがて俺の肩くらいのサイズまで縮んでいった。羽根の色も灰色になり、顔の周りだけが黒。しかし王冠のような羽根は健在。全体はふわっとしている。こどものペンギンまんま。

 女子達の口からかわいーとか漏れ出した。


「ふむふむ。こんなもので良いでしょう」


 声まで幼くなった。

 っていうか、皆の精霊は紋章に入ってるのにコイツは出たまんまなのか?

 結構偉い精霊? 『白夜の氷帝』とか言ってたし。見た目はあれだけど結構当たり?



「え、えーとこれで全員契約は終わったね。じゃあ各自お家に帰っていいよ。ククルスと召喚師さんはここに残って下さい・・・」


 ガヤガヤと皆さん上着など羽織ってお帰りのご様子。数人の女子達はまだヨトゥンを見てかわいーとかふわふわーとかおっしゃってます。


 全員が帰宅した後、じいちゃんに言われて椅子に腰掛ける。ヨトゥンが寄って来たので膝の上に乗せておいた。あったかい。テーブルの対面にはフードを取ったエルフのおねーさん。

 淡い水色の髪が肩のあたりまで伸びていて、雪のような白い肌。髪から少しだけエルフ耳が覗いている。顔は綺麗系。平坦な胸の通常エルフ。


 じいちゃんがお茶をテーブルに3つ置いた。俺の隣に座る。


「ククルス、この方はエマさんだ。今日はククルスの部屋に泊まるから仲良くするんだよ? エマさん、食料はもう箱詰めして集会所に置いてありますのでいつものようにお願いします。それで、ククルスと契約した精霊の事なんですが」


 エルフのおねーさん、エマさんはお茶を一口すすると話し出した。


「私も見るのは始めてなんですが、ククルス君の精霊は力の強い上位精霊の中でも更に力の強い『帝号』の精霊です」

「ていごう?」

「えーと」

「ククルスは頭の良い子なのでそのまま説明して頂いて大丈夫ですよ。もし解らないようなら私が後々教えますので」

「はい。では…」




 掻い摘んで話すとこうだ。


 精霊は力の強さで下位精霊、中位精霊、上位精霊に分けられる。

 会話が可能なのは上位精霊からとの事。

 さらに上位の中でも一際力の強い精霊は下から順に『王号』、『帝号』、『神号』に分けられる。


 ちなみにエマさんは号付きの精霊は初めてだとの事。森の奥から出ないハイエルフでもないと号付きはほとんど召喚出来ないとのこと。

 ヨトゥンならば白夜の氷帝というのが号だ。そのため『帝号』となる。

 さらに、氷というのは属性でいうと風と水の複合で上位属性らしい。


 おまけに『白夜の』というワードが問題だった。

 実はあの透明な魔力は闇属性らしいのだ。

 無属性というのは人の扱えるものではないらしく、人には宿らないとか。

 このせいで俺の魔法特訓の事をじいちゃんに強制的に吐かされた。


 ヨトゥンが言うにはこうだ。


「主様は勘違いなさっております。闇とは本来目には見えぬもの。光がさすとそこには見えませんが確かに有るのです。故に魔力も見えにくい。闇属性とはそのような目に見えないものが概念的に合わさってできた単独にして、特異な上位属性なのです。わたくしの『白夜』の号は目に見えない時を表す闇属性の事なのです」



 ちなみに何で触れる体が有るのかというと


「主様の魔力が潤沢だったため、精霊の庭ではそれは激しい争奪戦でした。『風神』や『氷神』等も我先にと召喚の陣に向かって居ました。闇の魔力を感じた私は精霊の庭の時を止め、優雅に召喚陣へたどり着いたのです。すると召喚されている時にも魔力が止めどなく流れて来るものですから、季節が冬だったのも幸いし雪や土等を少し頂戴してちょちょいと錬成したのです。わたくし前回、現界した際に少し錬金術を嗜んでいたもので」


 ちなみに体が死んでも本体は魔力体なので、俺から魔力を供給すれば何回でも作り直せるとのこと。


 何このハイスペック精霊ェ…



 そうこうしていると、母ちゃんが井戸端会議から帰ってきた。寒いのによくやるよほんと。

 ヨトゥンを見ると目を輝かせて俺の膝の上から取り上げた。かわいーを連呼している。



 さて、夕食だ。

 精霊騒動があったが、飯は飯。

 今日は鍋の前に台を置いたその上で、お手伝いという名のアク取りをしたので汁物は少し美味いはず。

 父ちゃんが寒そうにしていたので、すこし香辛料を足してピリ辛である。生姜っぽい味かしてたから体があったまるのを期待する。


 団欒である。

 前世は気付けば孤児院にいた。

 彼女も出来ず、社会人になってからも部屋に帰ると1人で、料理を作っては気を紛らわせた。

 なんというか、今はあったかい。


 ちなみにヨトゥンは飯は食べなくても体の維持には問題ないそうだが、母ちゃんが張り切ってヨトゥンの分も作ったため、俺が差し出したスプーンの上の焼き魚を啄んでいる。

 俺の部屋に戻って感想を聞くと


「体があるというのは良いものですね。焼いた魚があんなに美味しいとは思いませんでした」


 とのこと。



 ヨトゥンと喋っていると、山盛りの布団を抱えたエマさんがやって来た。

 布団が山盛りなのは子供サイズしかないからか。


 ドスンと布団を下ろすとエマさんも号付きの精霊に興味が有るらしく、会話に混ざった。


「えまさんはなんさい?」

「主様、女性に歳を聞くのは得策ではないと進言しますが」

「あ、いいのよ。エルフは草原の民と一緒で見た目は若いままだから、気にする人はあまり居ないわ。私は百歳を過ぎたところよ。ククルス君からしたらまだお姉さんなのかしら。それともおばさんかな?」

「おねーさんだとおもう」

「あら、ありがとう。それで、ヨトゥンさんに質問なんですが、前回現界されたのはどれくらい前になりますか?」

「おそらくですが、二千年ほど前かと思います。世界樹の学び舎の研究室に三ヶ月ほどの限定的な契約だったはずですが。精霊院には記録が残っているのでは?」

「実は院の中で火災が有りまして、一部資料が燃えてしまって…」

「せいれーいん? せかいじゅ?」

「主様。エルフの大森林には学ぶところが三つあるのです。魔術を学ぶための魔術院、精霊召喚などを学ぶ精霊院。そしてエルフの学術の最高峰にして魔窟たる世界樹の学び舎。わたくしは前回の召喚でその世界樹の学び舎で、精霊石と召喚陣による限定的な契約で現界したのです。錬金術を学んだのはその時ですね」

「ほかのしゅぞくでもはいれる?」

「あら、ククルス君も興味がある? でもごめんなさい。エルフしか入れないの。その代わり色んな所の学校にエルフの先生がいるのよ。ククルス君も大きくなったら草原の学び舎で教えてもらえるわ」

「主様、学び舎に入る前にわたくしが手解きをして差し上げます。主様の魔力は草原の民の枠に収まりませんから、きっと歴史に名を残す偉大な魔法使いになれますよ」

「おおー。ヨトゥンありがとう」

「確かに、ククルス君は魔力が多いわ。私より全然あるもの。ちょっと測ってみていいかしら?」

「いいよー」


 エマさんはゴソゴソとバッグを漁り、水晶のような物を取り出した。


「これはね、触るとその人の魔力の量で色が変わるの。普通の草原の民なら黄色くらい。私みたいなエルフだと緑って感じね。さあ、触ってみて」


 水晶に手を触れる。

 みるみる色が変わり、赤よりの紫といった感じでとまった。


「は、ハイエルフの一歩手前だわ。エルフの上位でも青色だもの」

「んー?」

「主様は凄いということです。さ、夜も深くなって来ました。そろそろ眠りましょう」



 魔力もそこそこチートみたいだな。

 転生物でよくある測定器パリンッにはならなかったけど。

 布団に潜ってヨトゥンを抱くとあったかくて、すぐに瞼は落ちてしまった。



食物メインの話が遠い。

ヨトゥンさんと魔法特訓だ!!

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