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精霊と契約するらしいんだが

 3歳冬。


 草原の民の料理は美味しいのだが物足りない。



 前世で同級生だった友人Aくんは、大学1年の時に宝クジでそこそこの金額を当てて世界中をバックパッカーとして渡り歩き、色々なお土産をくれた。主に俺がお願いした珍肉。


 そのA君と社会に出てから飲みに行く機会があり、交わされた会話の中にこんな物があった。


「敗戦国の飯ってさー、基本うまいんだよ」

「ほうほう?」

「いや、ほら某メシマズ国ってさー? 戦争してても勝ってるか、負けても植民地から搾取で国自体はそんな困窮してるイメージないじゃん?」

「ああー、確かにそうかも」

「要はさぁー? 戦争云々じゃなくて、困窮した中で旨いもの物を作ろうっていうハングリー精神? みたいな?」

「ああー。高級品ばっかりで素材がそのまま美味いから、調理技術が上達しないみたいな?」

「みたいな?」


 ギャハハハハハ


「その点、我が国はさー? 何百年とちっさい国が争って、争ってなくても飢饉だなんだ。オマケに島統一した後も最後戦争で負けてんじゃん? このタコワサ開発した人マジ天才」

「その理論で言うと、今現在貧困真っ只中のミサイル外交マンセー国は飯うまいってこと?」

「あそこの冷麺、牛骨ダシでマジうめーからw」

「行ってたんかいw」


 ギャハハハハハ


「ちなみに今までで一番美味しくなかった物は?」

「サルミアッキとベジマイトがどっこいかなー?」




 お分かりいただけただろうか?


 え?わかんない?


 要は草原の民の飯は素材が良いから普通に美味いけど、調理が簡単過ぎてなんか物足りないって話。



 まず、焼くと煮るしかない。

 次に、悪くなる前に食べるが基本で保存の概念が薄い。せいぜい塩漬け肉。

 輸出品も持ちがいい食品ばっかりみたいだしね。

 おまけにこの前母ちゃんの料理風景見てたけど、アクとかとらねーんだ。

 まぁそれでもそこそこ美味いんだけどね。


 つーわけで、このやる事のない冬の間に、蒸し器を作ろうと思う。

 蒸しパンとか作れるしね?




 うん。無理だった。

 三歳の非力さを舐めてた。竹っぽいのを曲げられない。留め金打てない。

 流石に道具は人任せにしても完成形が伝わりづらいだろうからなぁ。

 ここは体の成長を待とう。



 という訳で魔法の訓練をしている。


 つっても魔法系統の本は何故か本棚に収納されてないし、じいちゃんに言っても5歳になったら教えるとのこと。


 なんで体の中で魔力を動かしたり、外に出して形を作ったりしている。基礎は大事よ。


 そんなこんなしてても飽きてきてふと考える。

 今俺の体内には三色の魔力がある。

 混ぜれば面白そうではないか?



 という訳でやってみようか。


 まず、右の手の平に風の魔力で玉を作り上げる。緑色の玉。

 次に、左の手の平に水の魔力で玉を作り上げる。水色の玉。こっちの方はちょっと作るのに時間がかかった。後で練習しよ。


 さて両手に持ちましたる魔力の塊。

 これを拍手の要領でぶつけて、混ざるか試してみようと思います。


 せい!


 パチン!




 えー、混ざらず手の平に健在。

 やり方を変えてみよう。


 魔力は胸の辺りから出ているので、手の平から外に出す前に体内で螺旋を描くように魔力を出して玉を作ってみる。属性云々で混ざらなかった可能性があるので、今度は風と無属性っぽい輪郭だけが見える魔力で。


 体内で右の腕の付け根あたりから魔力の回転を始めて、回転数を上げながら手の平に持っていく。手の平から出た魔力を回転させながら玉に成形。


 形は出来た。あとは崩れないように集中しながら徐々に回転を遅くしていく。



 回転が止まった。魔力を注いだ目には半透明の緑色をした玉が見える。


 成功だ!


 よし、次はバリエーションや体内で混ぜるやり方を工夫していこう。




 結果で言えば体内なら余裕で混ざった。外に出した魔力は何回やっても混ざらなかった。

 空気中の魔力かなんかが干渉してんのかな?

 混ぜ方も色々試したが、基本となる魔力に別の魔力をとくようなイメージでやると早かった。濃淡も自由自在。やったぜ。



 そんなこんな練習していると、何だか居間の方が騒がしくなってきて集中出来ない。

 なんだろうと俺の部屋を出るとわらわらと子供達がぎっしり。

 いや、一人だけ大人が居る!? 別の種族か?


 そうして呆けていると子供達の中からじいちゃんが出てきた。


「いやーちょうど良かった、ククルスを呼びに行こうと思っていたんだ」

「じいちゃん、なにごと?」

「これはね、五年に一回エルフの精霊召喚師の方に来て貰って、冬の食料を渡す代わりに子供達に精霊契約をしてもらっているんだ。南部から順番に北に上がって来るんだけど、北部は毎回冬の真っ只中なのさ。ククルスも契約するから他の子達と並んでね。難しい事はしないから大丈夫」


 そう言ってエルフらしき大人の横に小走りでじいちゃんは行ってしまった。

 とりあえず子供達の端っこに行こう。


「はい、じゃーそっちの端っこから精霊召喚師さんの前に来てね」


 お、逆端からだから最後か。

 よし。精霊召喚とやらを見物しますかな。

 目に魔力を注いでっと。


 お、エルフの人は水色の魔力が体いっぱいに巡ってるな。

 フード被ってて顔はよく見えないけど、体格的に女の人かなー?


「では、お名前を教えて下さい」

「ワッケインです!」

「ワッケイン君ですね。じゃあ手を出してね。ちょっと力が抜けるかもしれないけど頑張って」


 声色は女だな。

 エルフは子供の手に人差し指と中指を添えると呪文のようなものを静かに口ずさむ。


「魔力を糧に精霊の庭への道を開く。契約を望む精霊よワッケインとの契約を望むなら顕現せよ」


 カッ!!


 光が瞬き、その光がワッケイン君の腕に収束していく。ワッケイン君の腕には燕の様な半透明の緑の色の鳥が止っていた。


 エルフが口を開く。


「ワッケイン君、この子は貴方と一緒に居たいってここに来たの。一緒に居るためにはこの子に名前を付けてあげないといけないわ。名前を付けてあげて」


「じゃあ、君はスウィー! スウィーだ!」

「ピィイー!」


 燕は一声鳴くとワッケイン君の腕に吸い込まれ、そこには燕を模した紋章のみたいな物が現れていた。


「これで契約は完了よ。ワッケイン君お疲れ様。スウィーは出てきてってお願いすると出てくるから。後は学校で習ってね。じゃあ、次の人」


 うえーファンタジーだなぁ。

 やべー何が出てくるかワクワクしてきた!


 その後も契約は続いた。

 鳥系が多いのは風の魔術適性が高いからかな?

 たまにモモンガや子犬みたいなのもいた。紋章はみんな腕というわけではないようだ。


 さて、俺の番です!

 エルフのおねーさんの前に到着!


「お名前は?」

「ククルス・アーヴィングです」

「ククルス君ね。じゃあ、腕を出して」


 エルフのおねーさんが俺の腕に指を添える。


「魔力を糧に精霊の庭への道を開く。契約を望む精霊よククルスとの契約を望むなら顕現せよ」


 腕から魔力が吸い出される。

 ん?風の魔力しか吸われてねーな。精霊が他の子供達と似たようなのは面白くない。

 俺は吸われている風の魔力に無属性と水属性を溶かしだした。

 エルフのおねーさんの指がびくりと震える。


 腕が光だした。

 眩しい! 反射的に目を瞑る。

 てか長い。え? なんかまずったか!?

 複属性アウト?



 数十秒を経て光が収まった。


 目を開くとそこにはエルフのおねーさんの、肩の辺りまで身長のあるペンギンが立っていた。皇帝ペンギン? だっけ? 鶏冠のようなものが雄々しく立っている。緑青色のメッシュがステキ。


 ペンギンがヨチヨチと俺の前に歩きだす。あ、エルフのおねーさんビックリして目をメッチャ開いてる。


 ペンギンは俺の目の前までくると右のヒレ? 羽? を胸の前に付けて跪いた。


「召喚により参じました。わたくしは『白夜の氷帝』と呼ばれております、しがない精霊にごさいます。お気に召されましたら名前を付けて頂けると光栄です」




 …アイエエエ?!シャ、シャァベッタアアアアア?!!

サルミアッキ


悪名高き北欧の飴玉。

塩化アンモニウムとリコリス(彼岸花ではなく甘草の一種)の奇跡のコラボレーション。

筆者は一口で吐き出した。

北欧五カ国では大人から子供まで親しまれている。



べジマイト


謎ジャム。非公式オーストラリア国民食。

オーストラリア内でもアンチべジマイトとべジマイト原理派が日夜争っているとかいないとか。

筆者は興味本位で某輸入品珈琲&食品店で購入。

薬くさく塩っぱい。健康には良いらしい。案の定良く噛んで吐き出した。



いや、普段はなんでも残さず食べますよ?

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