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子鬼、森を進む。

読者さんから他の方の作品と今回の料理の内容が被っているのではというご指摘をいただいたので、料理の内容が変わります。

フレッシュチーズの食べ方……

思いつかない……

クラッカーに乗せてウイスキーあおりたいなー

 何事もなく朝が来た。


 今日から森に入る。

 森では見知らぬ魔獣や動物が襲ってくる可能性があるので、大型グラスボードの上に一人警戒要員をつける。

 それと、森の中では二時間ごとに休憩して運転手と監視要員を交代する。


 最初の運転手は俺だ。監視要員はドヴァン。


 森の道に入っていく。


 日差しを計算して道を切り開いたのか、背の高い木に囲まれているが不思議と暗くない。

 流石に暇なのでドヴァンに声をかける。


「ドヴァーン。なんか面白い物見えるかー?」

 少し間が空いて、ドヴァンの声が後ろから聞こえる。

「なんかキノコがちらほら見えるけど、それだけかなー」

 俺も目に入るキノコは運転がてら鑑定しているが、食用になるキノコはなかなかお目にかかれない。


 雑談しながら進むと、二時間くらいは経っただろうか。

 左側に少し広い所が見えた。

 交代のためにそこにグラスボードを停める。


 ドヴァンがグラスボードから降りて、何やら木の実のを差し出す。


「少し槍で突っついてみたら落ちてきたんだ」


 見た目は赤茶色い木の実が、アケビのようにパックリとあいている。

 いや、種は一つのようだ。アーモンドに近いのかな。


 鑑定をかけてみる。



 名称・・・・・ミサイルリーフの実

 種別・・・・・果実

 状態・・・・・良好

 価値400G


 説明

 エルフの勇者アイカワが名付けたミサイルリーフという樹木の果実。

 秋が深まると、枯れた葉の茎にガスがたまり、勢いよく飛んで葉を散らす。

 当時はただ珍しい木という認識だったが、この木を見た勇者が非常に驚いて名付けた。

 果肉は渋くて食用に向かず、種も中心部が弱い毒性を持っている。

 種を割って外殻だけを炒ると、カリッとした食感と香ばしい匂い、そしてほのかな甘味がある。

 近年エルフの大森林で食品として扱われるようになった。




 オモシロ樹木か。

 しかし利用できる部分が少ないんだな。

 まぁ、前世でもそんな食材は沢山あった。

 アーモンドとか杏仁とか。

 しかし、食えると解ってて食わないのは主義に反する。

 この休憩時間中にやっつけてしまうか。


 果肉はもはや開いてしまって用を成さないので、素手で剥ぎ取る。

 出てきた8cm程の楕円形の種に、筋に沿ってナイフを入れる。

 パカリと簡単に割れた。中には白くて柔らかい核が入っているが、これは毒性が有るらしいからぽーい。

 鞄から小さなフライパンを出して、種の殻を入れる。


「ドヴァン。ちょっと火を出してくれ。弱火でな」


 言われてドヴァンは魔力魔法陣でフライパンの下に火を起こす。

 フライパンを振ってカラカラと炒るといい匂いがする。

 コーヒー豆で言ったらミディアムローストくらいの色合いでフライパンを火から離す。え? 明るめの茶色ですよ。


 フライパンの底を、水魔法で冷ましてからヒョイと殻をつまみあげて一口噛じる。

 カリッと音がして殻が離れる。炒った時特有の香ばしさと、この殻が元から持つほんのりとした木の実の香り。

 噛み締めると柔らかい甘さと炒った時に少し焦げた軽い苦味が舌を楽しませる。


 砂糖でコーティングしてパンに混ぜると美味いかも。

 小麦粉系のお菓子は軒並み相性がよさそうだ。


「ドヴァン、美味いぞ。食ってみ」


 手で割って欠片を差し出す。

 ドヴァンはつまむとそのまま口に放る。


「へぇー。木の実の種の殻を炒るだけでこんな味になるんだ」

「これはいいよな。何個か採っておこう」


 物欲しそうな目でセシリーが見ていたので、一欠片やった。

 エイミーに残りをあげて出発の準備をする。


 本来は監視要員にセシリーなのだが、俺とエイミーもグラスボードの上に乗ってミサイルリーフの実を狙う。

 エイミーの魔法の訓練も兼ねて、魔法で実を採るのだ。


「それじゃあ、出発するよ」


 ドヴァンの声でグラスボードが動き出す。

 しかし、この大型グラスボードは他に名前を考えた方がいいかな。

 うーん。

 グラスワゴンでいいかな。

 よし、これからグラスワゴンと呼ぼう。


 なんて考えていると、俺の顔の前にズイっとセシリーが実を突き出した。

 もう採ったのか!

 相変わらず食物への反応だけは早いな!


 セシリーをたしなめて、エイミーに魔法で狙うよう指示する。


「とりあえず風の魔法で撃ち落としてごらん。茎を狙えば傷つかないよ。回収はお兄ちゃんがやるから。慣れたら回収も教えるよ」

「うーん。できるかなー」


 エイミーは周りを見て、ミサイルリーフの実を見つけると魔法陣を作り出す。

 しかし、移動するグラスワゴンの上だとなかなか当たらない。


「エイミー、先に魔法陣を作っておいて、それから見つかったら撃てば当たりやすいはずだよ。やってごらん」


 魔法陣構築分のタイムラグが無くなったせいか、狙う余裕が出来て、三個目には当たって落ちる。


『風よ、果実を分けて我が元へ』


 落ちる前に風が果物を弾き返し、ミチリと果肉を剥いで飛んでくる。

 籠二つを用意しているので、籠を持ってその中に種が入るようにキャッチ。


 その後何十回かやって、エイミーの命中率はグンと上がった。

 ドヴァンが2回目の休憩に良さそうな所を見つけたので、そこにグラスワゴンを停めて昼食をとる。


 ちょっとだけ森に入った記念に生肉とか使ってもいいよね?

 干物とかばっかりだとビタミンとかがね? ね?


 さて、さっきのミサイルリーフの種の殻を使ってみよう。

 まずは砂糖を少量フライパンで焦げないように溶かして、殻を小さく砕いて入れる。

 軽くかき混ぜたら魔法で急速に冷やす。

 木ベラでフライパンからガリゴリ削り取って、皿に移す。


 鍋にお湯を沸かしてボウルに移し、人肌より少し熱いくらいまで冷ます。

 冷めたら小さいボールに牛乳を入れて湯煎。

 ひときわ酸っぱい柑橘(リンモと言うらしい)の汁を少しずつ入れて、ゆっくり混ぜる。1、2分混ぜたら固まりはじめるので、20分くらい放置。


 その間に、人数分の旅用の固いパンを二つに割って、フライパンで焦げないようにサクサクにしていく。



 牛乳が透明な汁と白い固まりに別れる。

 透明な方をホエーといい、白い方をカードという。

 勘のいい人はこの単語でわかるだろうが、これはフレッシュチーズを作っている。


 ザルに清潔な布きんを敷いて、ボウルの中身を空ける。

 ホエーを切ったら、布きんの上をゆっくり縛り、水分を少しずつ抜く。


 本来はこれから更に水分を抜くのだが、今回は昼食分だけなのでこれで終了。


 フレッシュチーズを二つのボウルに分けて、片方に少量の塩、片方に砂糖少量とミサイルリーフの種の殻の砂糖絡めを入れて混ぜる。


 サクサクのパンに塩を入れた方を塗って、パロルのロースを塩とクラミア草で炒めてのせ、サッと茹でて水を充分に切った風菜、黄色汁茄子の輪切りを崩れないように乗せて、上からパンで挟む。


 もう一つのパンには、砂糖の方のフレッシュチーズを塗って、久しぶりの甘いものだし、奮発してハチミツを塗る。これも、挟んで完成。


「フレッシュチーズのホットサンド、塩っぱいのと甘いの」完成!!!




 サクッとしたパンから滴るロースの肉汁とクラミア草のニンニクな香り、食感の良い風菜。

 リンモの風味がまだ残るフレッシュチーズと黄色汁茄子の酸味でお肉はこってりなのにサッバリとして美味い!



 甘い方もたまらない。クセのないあっさりとしたフレッシュチーズとハチミツの甘さが相性が抜群だ。時折くるカリッとしたミサイルリーフの種の殻もまたいい。




 エイミーとセシリーに催促されたので、おやつ分も余分に作った。



 このまま俺は監視要員を引き継いで、運転はセシリーだ。


「行く」


 とグラスワゴンが動き出す。


 エイミーの魔法の訓練の続きをしながら、辺りに目を向ける。

 緑が深くなり、苔をつけた大きな木が増えてきた。

 じいちゃんは明日の夕方には着けそうだと言っていた。


 エルフの食生活が楽しみだ。


 エイミーの魔法の命中率もかなり上がった。

 そろそろ回収も教えようか。

 そんな事を考えながら、進んでいると、けたたましい獣の鳴き声が聞こえる。


 グラスワゴンは停止した。

 ドヴァンも室内から出て警戒をする。


 多数の獣の息遣いが聞こえてくる。

 ガサリと六匹の狼が現れると、最後に大きな影が出てきた。


 それは、3m程はある、水晶のような角を持つ鹿だった。


 んん?

杏仁豆腐の杏仁は杏の種の中身。


知識が無いと、胃の中で青酸がカリッとするかもしれないので、梅や杏の扱いは注意しましょう。いやマジで。


アーモンドさんも種の中身なんですぜ、げへへ

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