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子鬼、キノコを探す

感想にて重大なご指摘を受けまして、一話の狩猟免許の記述を変えました。

自分の浅学さと浅慮さに恥じ入るばかりです。


狩猟免許に興味のある方は一度一話を読み返して頂けるとありがたく思います。

 ばあちゃんが連れているクルエルサンチは、龍神の塔と呼ばれる遺跡でばあちゃんが偶然見つけたのだという。

 クルエルサンチは製作者が帰って来ないと判断し、ばあちゃんをマスターと決めたのだとか。


 クルエルサンチ曰く、孤島に俺の居た世界以外から転移した科学者が自分の世界に帰るために作ったのが龍神の塔であり、クルエルサンチ自身はその塔を作るために作られたナノマシンだという。


塔自体が大きな実験装置であり、クルエルサンチ自身もある種の部品として扱われていた時期もあったとか。


 これは考古学者垂涎の世紀の大発見なのだが、学者たちを統括する「委員会」が情報を抑えているらしい。

 何故ならば、解き明かしてこそ意味があるからだとか。どんな情熱だ……

 クルエルサンチの所有については、名義の上では委員会なのだが、あまりに知識が先を行き過ぎているのと、自らの研究の答案が目の前にあると欲に負けそうになるとの理由で、発見者のばあちゃんに委ねられているとか。



 クルエルサンチに製作者の事を聞くと


「製作者様は、神秘を科学で解き明かす事を至上命題に掲げておりました。ご自分が体験した世界を渡るという神秘を解き明かし、元の世界に帰る事に大変な情熱を抱いていたご様子でした」



 なんでも、最後の実験の際に製作者は光に飲まれて消えてしまったらしい。

 クルエルサンチは帰ったのだと信じている。

 他の機械などは風化してしまい、クルエルサンチはナノマシンな上に増殖ができる特性上、周りの物質を使って延々と自分を作っていたのだとか。

 今の見た目は、あくまでもナノマシンが群体で結合している状態で、色々と形は変えられるのだとか。



 作られた当時はかなりの昔であり、それこそ人型の生物はまだいなかったとのこと。

 孤島にも竜の元になった恐竜みたいな生き物ばかりだったという。


 しかし、転移した時になにか便利な道具でも持っていたのだろうか。

 何もないところからのナノマシン制作や帰還実験なんて途方も無い時間がかかりそうだが。


 動力は空気中の魔力だと言っている。

 本人は精神感応高エネルギー透過なんたらかんたら……粒子と、言っていたが、確認すると魔力だった。

 見た目が怖いので、姿を変えてもらい、某ロボット犬みたいな感じになっている。

 ばあちゃん共々大型グラスボードの中でエイミーとじゃれ合っている。





 さて、大森林を目指して二日目。

 昨日は獣と遭遇しなかったので、今日運転しない俺は愛用のグラスボードに乗って獲物を探している。


 大型グラスボードから離れ過ぎないように気を付けながら飛んでいると、ポツポツと草の間に白い塊が見える。


 グラスボードを止めて、確認するとキノコのようだ。

 めくって笠の裏をみると、ヒダが毒々しい原色の赤色って感じだ。キノコは見た目で判断すると痛い目に逢うので、鑑定スキルに任せよう。



 名称……コウハククサゴロシ

 種別・・・・・菌類

 状態・・・・・良好

 価値0G


 説明

 世界各地の草原地に生えるキノコ。

 周りに生える草の根に寄生し、養分を取り尽くして草を枯らす性質を持つ。

 食用可能だが、熱を通した時の匂いが独特なのと、見分けるのが難しい毒をもった近縁種がいるために食べる者はいない。

 また、牧草などを枯らすために人の管理地域では定期的に除去されている。

 傘は肉厚。柄は土に潜っているためか非常に硬い。



 ふぅーむ。

 鑑定したこれ自体は無毒のようだし、取り敢えず採っておこう。

 しかし、匂いが独特かぁ……

 せめて食える匂いだといいのだか。


 一つずつ鑑定して毒のないものだけを採っておいた。

 ものの三十cmくらい先に毒のあるコウハクウマゴロシという全く見た目が同じなキノコが生えていて、かなり戦慄した。一口で死ねるらしい。怖いわ!!

 鑑定さんありがとうございます。


 その後も散策したが、ウサギ一匹居ませんでした……

 畜生!



 さーて、お夕飯を作る前に本日採ったキノコの匂いチェックです。

 生の状態だと少し青臭い程度。

 串で刺して焚き火に当てます。


 ……甘い匂いがするな。

 と、思った瞬間鼻と喉に氷の針でも突っ込まれたかのような痛み。


 ゲホッカッ!! ゲホゲホゲホ!!!!


 あれだ、ハッカ。ハッカ油を鼻の近くで一気に揮発させたような感じ。

 食えんのかこれ……


 意を決して、するりと繊維を細く裂いて咥える。

 一口噛むとキノコ特有の上品な旨み。

 それをぶち壊してしまう甘いのに喉を冷やす香りが駆け抜けた。


 うん。料理には使えない。

 お酒とか漬けるのには良いんじゃないかな。匂いだけは。


 生憎と酒は持ってきてもないし、成人まで飲む気もない。

 小さい体だが、まだ少しずつ成長してるのだ。

 ただでさえ子供な見た目なのに、背が皆より低くなったりしたら嫌だしね。




 うん!

 今日はあれだ! チリコンカンにしよう! そうしよう!

 そして忘れよう!


 パロルの干し肉をお湯で戻し、出汁と肉に分ける。

 肉は細かく刻み皿移す。

 野菜は、風菜のシャキシャキの茎の部分だけ細かく刻む。

 更に黄色汁茄子とネギっぽい香草(鑑定してもなぜか名前がでない)も細かく刻んでお皿にイン。



 サラサ油、刻んだクラミア草を中華鍋風の鍋に入れて火にかける。

 匂いが出てきたらネギっぽい香草と風菜の茎を炒める。

 油がまわったら戻した干し肉を入れて炒め、小麦粉と叩いて粉末状にしたレッドペパの実を加えて、しっとりするまで炒める。


 さっき炒めた物に干し肉の出汁をヒタヒタになるくらいまで注ぎ、黄色汁茄子とひな豆を加えて煮込む。

 もうそろそろといった時に、残った風菜の葉っぱを軽く刻んで鍋に入れる。


 さーて、皿に移して「異世界即席チリコンカン」完成だ。

 パプリカとかパセリとかあれば良かったなぁ。


 皆辛いのは得意ではないため、少し抑え気味の辛さだが、酸味と辛味がパンを進ませる。

 干し肉じゃなくて生のひき肉ならもっと美味しかったな。

 これはチーズの完成が楽しみだ。




 野営の夜番は真ん中だ。

 明日はセシリーが運転するため、セシリー、俺、ドヴァンの順番。


 流石に今日の夜は何もなかった。





 三日目はエイミーにグラスボードの訓練をつけた。

 昼飯を摂って、訓練を再開すると、視界に森が見え始めた。


「うわぁ、森が地平線みたいに見えるな」

「すごい! あ! お兄ちゃん、あそこ! 緑が盛り上がってる!」

「おー、世界樹ってやつかなぁ。エイミー、楽しみだな!」

「うん! どんな精霊さんなんだろう。ヨトゥンさんみたいな可愛いのがいいなぁ」


 しばらく進むと、森の木々の間に道が見えてきた。

 じいちゃんと相談して、森の手前で野営する事にした。

 あんまり森に近いと夜番が大変なので少し離れた所。


 早めに野営の準備が整ったので、少し森の中を散策。

 風が通り、木々の葉の擦れる音が耳に心地いい。

 キノコのリベンジと、笹のような植物が見えるので、小さな筍を狙って探す。


 木の根が大きくうねって、影が出来た所に赤い、なんともファンタジーな見た目のキノコが見えた。

 赤い笠に、白い水玉模様と言えばいいのか。

 そして、デカイ。笠の肉厚さだけで十cmは有るんじゃなかろうか。

 鑑定先生お願いいたします。




 名称・・・・・アカガサヒダケ

 種別・・・・・菌類

 状態・・・・・良好

 価値100,070G


 説明

 笠の部分に強力な毒を持つキノコ。

 匂いがほとんどなく、これを使って作った毒薬は非常に高値で売れ、キノコ自体の価値も高い。

 エルフの大森林と人族の大大陸北西部の森にのみ確認されている。

 柄の部分は毒性が少なく、食べると軽度の発熱を引き起こす。

 そのため、エルフ達の冬の味覚としても持ちいられる。

 わざわざ寒い雪の中でこれを食べるほどにエルフに好まれており、収穫が時期によって規制されている。




 毒性あるのに食うのか。

 それぐらいうまいのか……

 待てよ……? 俺確か毒耐性ってスキルがあったな……

 いけるんじゃないか?

 まぁでも、エルフの許可なく採るのはまずいかな。

 ひとまず森の中の街に着いてから考えようかな。


 筍は見つからなかった。時期が悪いかな……


 俺は森を抜け出て、皆の所に帰った。

 さて、夕食のメニューを考えるとしよう。



笹からとれる小さい筍の味噌汁が祖母の味。


今日中に投稿できてよかったぁ……



チリコンカン


刑事コロンボの「チリ頂戴。」のセリフでお馴染みの、アメリカはテキサスのソウルフード。

基本的に牛挽肉と玉ねぎを炒めて、そこにトマトとチリパウダー、水煮した多様な豆を入れて煮込んだ料理。

元々は家庭料理であり、様々なバリエーションがある。

略称はたぶんチリ。


テキサスで発祥し、アメリカの色々な地域で色々なバリエーションがあるため、これがチリコンカンっていうのはあんまりないイメージです。


日本だと、豆の入っていないチリをトッピングした「チリドック」などが身近かもしれません。

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