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帰郷するんだが。

 社の中に帰ってきた。


 開けっ放しの扉からはリリーおばあちゃんとセシリーが見える。


「ただいま、リリーおばあちゃん。 セシリーは終わったの?」

「おかえりクク坊」

「ん。おかえり。おわった」

「先に入ったのに後から出た事になるのか。俺はトゥルダク様だったけど、セシリーは?」

「ん? 咲雷様」

「んん? 地獄関係でそんな名前あったかな」

「…黄泉の国。雷様の一人」

「うわぁー。神様か。まぁ、トゥルダク様も見方によれば神様か」

「ただいまぁ〜…うっ! おぇ…」


 カーグが帰ってきたようだか、何故だかグロッキーだ。

 近寄ると酒臭い。あ、こいつ吐きやがった!


「うわぁ…カーグ大丈夫か? 飲まされたのか?」

「うぅ…ふぅ。酒呑様が…飲まなきゃ帰さないって…」

「うわぁ。有名どころだな。まぁ、酒と狐には気を付けろよ」

「さて、なにはともあれみんな終わったね。ご苦労様。これでみんな成人だ。酒を飲もうが、子を成そうが孕ませようが、大概の事は自分の責任だ。ようく考えて行動するんだよ? さ、教会へ帰ろうか。カーグ、今日は儀式だから仕方が無いけど、うちは酒はダメだよ。飲みたかったら家を借りて独り立ちしな」


 こうして、ククルス一行は教会へと帰るのであった。







 さて、鬼の制御が出来るので鬼ヶ島は出れる。

 草原へ帰ってギルじいの修行の続きと妹の教育、ドヴァンに野菜の種をお土産に。

 あ、風神祭りなんてのもあったな。

 とりあえず、それだけ終わらせたら旅にでよう。

 まずはドワーフとエルフの国を回ってから鬼ヶ島の交易島で冒険者でもやるか。


「…ククルス、お餅」

「おおう。セシリーか、お前気配消すの上手いな」

「黄色いお餅。約束」

「おう。じゃあ、ひな豆買いに行くか」

「うん」


 教会をでて町の中心部へセシリーと歩く。

 美人と歩いてるとなんだかソワソワしませんか? 俺だけ?

 三年のうちに通いなれた商店へ向かう。気っ風のいいお姉さんが切り盛りしてる気持ちのいい店だ。


「シムスのお姉さん、干したひな豆ください」

「やだねぇ。お姉さんだなんて歳じゃないよ。計りにかけるから袋に入れな」

「えーと、これでお願いします」

「はいよ。…半銀貨と銅貨三枚だね」

「はい、丁度です。それとお姉さん、黄色汁茄子の種って売ってますか?」

「毎度どうも。有るには有るけど、苗で買わないのかい? 言っちゃあなんだけど面倒くさいよ?」

「あー、育てるのはこの島じゃ無いんで」

「なんだい坊主、島を出るのかい?」

「はい、生まれは黄金の草原なんです。山頂の儀式が終わったんで帰ろうかと思いまして。種はお土産に」

「そういう事かい。じゃあ坊主じゃいけないね。名前は?」

「ククルスです」

「じゃあククルス。種はオマケだ。鬼の精神を忘れちゃ行けないよ」

「良いんですか?」

「どうせたいして売れやしないんだ。持ってきな」

「ありがとうございます!」

「達者でな!」


 いやー、得したな。

 お土産代金浮いたぜ。これで草原でも夏場にトマト料理が作れるな。


「…ククルス」

「なんだ。帰らないと餅は食べれないぞ」

「島を出るの?」

「おう。まだ見ぬ妹も待ってるしな」

「…そう。わかった」



 さーて、きなこ餅を作るには、餅を突かねばなりません。

 しかし、もち米さんに一日水を吸わせねばなりません。ですのでちょいと時間を加速してしまいやしょう。へえ。

 そんで水を吸った米畜生を、布でくるんで蒸してやるんでさあ。へえ。

 蒸かしてる間に、臼と杵を湯であっためて置くといいんでさあ。水をすってくっつきにくくなりやすんで。

 二十分から二五分も蒸してやりぁ、いい塩梅になってやす。一応確認で芯がないか食ってみるといいですぜ。

 そしたら臼に移しまして、杵でゴリゴリと潰しておくんなせぇ。

 粒がなくなってきやしたら、これぞ餅つきって具合にペッタンペッタンやるんでさあ。

 引っくりかえたり、畳んだりして満遍なく突いていくと、艶のある餅畜生の出来上がりってもんでえ。


 これは直ぐ食べるから良いけど、ちょっと置くなら上新粉まぶすといいですよ、奥さん。



 さて、きなこ。

 これは簡単。本来は大豆だけどね。

 ひな豆を炒って、甘さを高め、すり鉢で粉にする。

 これだけ。素朴な甘さがいいね。

 お好みで砂糖を混ぜるなんて人も居るみたいだけどね。



 さて、餅を分けて皿に盛り、きな粉をかけて完成。

 さぁ食えガキンチョ共。


「おーい。できたぞー」

「「「「「わーい!!!」」」」」


 セシリーはモッキュモッキュと食べております。

 喉詰まらせんなよ。

 しかし、あれだね。美人の食べてる姿ってなんかこう来るね。何とは言わないけど。

 そんじゃあ荷物纏めますか。出発は明日ですな。


「クク坊、ちょっと来な」

「ん? わかったけど何の用?」

「聖剣だよ。私もすっかり忘れてたんだ。ついておいで」

「ああ、はい」


 リリーおばあちゃんに付いて行くと、普さ段は子供達が入れない聖堂に入っていく。

 御神体かなにかのように高くなった装飾された台には…

 金色の幾何学模様の装飾が施された、黒いバットが何故か突き刺さっている。



 名称・・・・・闇夜の打撃棍

 種別・・・・・神器

 状態・・・・・休眠

 価値∞G


 説明

 輪廻と時空の神の力が込められた神器。

 召喚されし勇者三木杉が持っていた野球バットに神の力を注いだもの。

 打撃武器としても有能だが、その本領は闇属性の目に見えない力である。

 勇者三木杉は、目に見えない超常の力で敵を引き寄せては打ち抜き、時には目に見えない力で地面に押さえつけ、地面ごと陥没させ押しつぶしたという。

 災厄で現れた魔物に身体を乗っ取られた人を見た勇者三木杉は、泣きながら打ち付け、魂を抜いたという。

 魔大陸での魔物の殲滅の折には、降り注ぐ光すら曲げるナニカで魔物を消しさったとも言われる。

 豪快な攻撃力とは裏腹に、闇の特性を理解していなければ扱えない難しい武器。




 うーん。俺、球技得意じゃなかったなー。

 つーか、ブラックホール的なの使ってますよね、説明文的には。危ないよ!?


 俺は内心ビビりつつ、黒いバットに手を触れ、闇属性の魔力を注ぐ。



「……ショタには興味ない。草原の民以外に転生してから来て」

「はあ!?」

「不適合。お休み」

「……。」



 俺はなんとも言えない気持ちで聖堂を去った。










「それじゃ、帰るよリリーおばあちゃん」

「寂しくなるねぇ。クク坊、またおいでよ?」

「リリーおばあちゃんもたまには来てね」

「えぐっ! ククルスぅ…またなぁ…元気でなぁ!!!」

「相変わらず声がデカイな。そのうちまた来るよカーグ」

「…ククルス」

「はうあっ!? なんでいっつも背後なんだセシリー。 というかその荷物はなんだ?」

「ついていく」

「草原にか?」

「…ずっと。ククルスのごはんたべたい」

「お、おう? まぁ良いけどさ。魔大陸とか行くかも知れないぞ? 大丈夫か?」


 普通は魔大陸なんて聞くと怖がったりするもんだが、セシリーは逆に少し口の端によだれを輝かせて、爛々とした目で答える。


「魔大陸。危ないけどおいしい。いく」

「あー、じゃあ一緒に修行するか」

「…ほうほう。セシリー、行っておいで。皆には言っておくさね」

「あーっと、それじゃ、行くよ」

「待ちな、最後にこれを持っていきな。ひいおじいちゃんの手帳だよ。帰ったら読んでおくれ」

「わかったよ。それじゃあ、行ってくる」


 年代を感じる分厚い手帳を受け取り、カバンに入れる。


 魔力で魔法陣を形成。発動。

 黒い扉が現れる。それを潜ると、庭に当たる部分に何も見えない黒い回廊が現れる。

 この魔法は、熟練しないと不安定で、回廊にでる扉の数も少ない。俺の場合は入口と出口しかまだない。

 真っ直ぐ歩いていると対面にあたる部分に扉が見える。

 あの先は草原だろう。

 ふと、振り返るが扉は閉じてしまったようだ。

 鬼ヶ島の風景が見えず、なんだか寂しい気持ちになった。セシリーが不思議そうな顔をこちらに向ける。


 まぁいい。また来ればいいさ。

 俺は前を向いて、扉に手をかけた。


 黄金色の麦穂が広がる草原が迎えてくれた。

ステータス



名前……ククルス・アーヴィング

年齢……9歳

種族……草原の民・鬼族

職業……料理人・暗殺者

加護……狩猟神の加護(異)・遊楽と風の神の愛子・豊穣と食の神の熱望・輪廻と時空の神の畏怖


固有スキル

魔力炉(水)・鑑定・食材断定・平々凡々・風の血統・鬼化・病の舞踏


職業スキル

料理人……包丁術(上級Lv.68)・目利き(中級Lv.45)・解体術(中級Lv.68)・調理術(上級Lv.21)・味覚強化(下級Lv.12)

暗殺者……暗器術(下級Lv.5)・隠密術(中級Lv.38)・気配察知(中級Lv.51)・必殺の極意(中級Lv.11)

統合スキル……毒耐性(下級Lv.9)


覚得スキル

剣術(中級Lv.45)・奇策(下級Lv.3)・斬鉄(下級Lv.15)・舞踏歩法(下級Lv.2)・属性融合・反射展開・摂食回復・魔道具作成

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