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閑話「妹の憂鬱」

短め一話。


 私の名前は棟方(むなかた) 結衣(ゆい)

 なんて事はない、田舎の中学一年生だ。


 いや、だった。


 今の私は何故か赤ん坊だ。

 おまけに捨てられたのか、目が見えるようになって辺りを見渡せば子供しかいない。

 昔の時代のスラムという所にでも生まれ変わってしまったのだろうか。

 周りの子供達の言葉は聞き取れないし、可愛い金髪の女の子は胸を押しつけてくるし。いや、その歳で妊娠もしてないのに母乳はでないだろう。

 そんな私を不安そうな目で見る金髪の美少女が不憫なので、口を付けて吸ってあげらたらビックリ。口に液体が入ってきた。

 どうやらこの美少女は母親のようだ。





 そもそも、なんでこんな事になったのだろうか。

 確か私は五月の部活の勧誘合戦に揉まれていた筈だ。

 私が入った中学は公立で、辺りの小学校八校から生徒が入学してくるマンモス校だ。

 それはそれは勧誘合戦も激しく、教室を出たら先輩方がいろいろなポスターや服装であれやこれやと語りかけるのだ。

 この学校は全生徒が何らかの部活に入る決まりらしい。

 私は吹奏楽部か文学部と言う名の帰宅部を選ぼうと考えていたのだが、どうやら吹奏楽部の方は結構真面目に大会なんかを目指すらしい。

 これは文学部一択だなと、図書室を目指して階段を降りようとしていた所までは覚えている。


 ……もしかして階段から落ちて死んでしまったのだろか。











 二歳くらいだろうか。

 どうやらここは地球では無いことが確定した。

 お母さんにお外に連れられて行ったのだが、見る人全員子供だ。

 そういう種族なんだろうか。ゲームの小人族みたいな。

 おまけに外にでて、なんか浮く金属の塊みたいなのに乗ったのだ。

 魔法の乗り物だろうか?

 私はとんでもない所に産まれて来てしまったのかも知れない。

 あと、去年辺りから隣の家に二mくらいの大きな男の人が住みだした。

 家にもよく来て、私を抱えあげるのだが、顔が凄く怖い。

 あと、外でよく他の家の子供だろうか、小学二年生くらいの子供を訓練している。

 モンスターとかいるのだろうか。いたら怖いな。










 三歳くらいになっただろか。

 そろそろしゃべり出す子供もいるだろう。いや、喋るだろう普通に。たぶん。

 だが、私は違う。喋れない。いや、声は出るんだ。言葉が未だに理解できない。

 わかった言葉は今の名前「エイミー」と、やたら会話にでる「ククルス」という単語だけ。

 なんかとてつもなく不安になってくる。

 日本語は辿々しい口調で喋れるのだが、家族全員はてなマークを頭の上に浮かべ、決まって「ククルス」どうたら言うのだ。

 はぁ。

 もう、どうしていいのか解らない。

















 四歳くらいにはなっただろう。

 居間の方が騒がしい。しきりに「ククルス」という単語が聞こえる。

 ゴロゴロと布団の上を転がっていると、お母さんによく似た、角の生えた男の子が、ペンギンの子供を抱えて入ってきた。

 私は驚いて、思わず日本語で「ペンギンだ!」と言ってしまった。

 男の子は目を見開いたあと、なんと日本語で語りかけてきた。


『初めまして、エイミー。俺は君のお兄ちゃんのククルスだ』


 なにかの単語だと思っていたのは兄の名前だったようだ。

 私はまさか日本語で言葉が帰ってくるとは思わず、驚いて少し黙ってしまった。


『エイミー、君は日本から生まれ変わってきたのかい?』

『うん。そうなの。言葉も解らなくて、中学校にいたはずなのに…』


 私は日本語で会話できたのが嬉しかったのか、泣いてしまった。

 兄だという、ククルスは、私の背中をゆっくりと子供をあやすようにポンポンと叩いた。

 そして、思いも寄らない事を囁いた。


『エイミー、魔法でここの世界の言葉を喋れるようにしてあげる』

『っぐ…えっぐ…え゛?』

『少し寝てしまうけど、起きたら喋れるようになっているよ。おやすみ、エイミー』


 そう兄は言うと、よく分からない言葉を呟き出した。

 唐突に頭にナニカが入ってくる。

 私はそこで、意識を手放した。









 目が覚めると、そこには兄がいた。


「おはよう、エイミー。言葉はわかる?」

「あ、う。 おはようございます」

「よかった。わかるみたいだね」

「なんで? まほう?」

「そうだよ。お兄ちゃんは言葉は自力で覚えたけどね」

「う。だって、えいごもちゃんとしゃべれないのに…」

「まぁ、いいさ。これからお兄ちゃんが魔法と勉強を教えてあげるから」

「う。べんきょう、にがて。」

「大丈夫、だって、お兄ちゃんの妹なんだから」







 こうして、私の異世界での生活は始まった。

 お兄ちゃんはわかるまでずっと教えてくれる。

 おじいちゃんは、いろんな本を貸してくれる。

 お母さんは美味しい料理を作ってくれる。

 お父さんは、気持ち悪いけど、色んな生き物を捕ってくる。

 ギルじいは、なんか怖い。あとお酒くさい。

 たまに来るリリーおばあちゃんはいい匂いがする。

 この前初めて来たシーマおばあちゃんは、何時もなにか機械みたいなのをいじってる。



 前の世界の家族や友達に会えないのは寂しいけど、今はとっても幸せだ。




リアルの妹に可愛いさを求めるのは間違っている。

姪っ子が可愛い。

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