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実習二日目とやっとウサギパーティなんだが

先に書いときますが、ウサギは解体しますので、ウサギ好きな方は後半は飛ばして読んでも構いません。

なるべく事務的に書いたつもりです。

 これは夢だ。

 だってこれは何度も見たことがある。

 でも、転生してからは一度も見ていない。


 俺は薄明かりのなか孤児院の布団から静かに抜け出す。

 昨日木に塗った蜜にカブトムシがいないか見に行くのだろう。

 静かに靴を履き、鍵を開ける。

 空はまだ暗い。夏場特有の明るい夜空だ。

 日の出る前のうす寒い空気と抜け出したワクワク感で高揚した気分に水を差す赤子の声。

 孤児院の門の前に籠に入った我が子を置く女の人。

 その顔は、疲れからきた隈と痩けた頬が幽鬼のようで、しかし、子供を置いた瞬間の安堵、頬が上がり、笑っているように俺は見えた。

 置いた我が子は最早彼女の目には映っていない。

 やめてくれ。

 無責任に産んだのはあんたじゃないか。

 親無しの子供が浴びる視線をしってるのか。

 心無い言葉を掛けられる辛さが分かるか。

 許せない。

 許せない。許せない。

 許せない。許せない。許せない。

 おかしい。

 許せない許せない許せない許せない。

 あの時の俺は石を投げただけだ。

 許せない許せない許せない許せない許せない。

 何故ククルスの顔で剣を持っているんた?

 許せない許せない許せない許せない許せない許せない。

 あの赤子が泣くたびに母親に痛みを。頭が痛い。

 許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。

 赤子が母を思う度にあの女に不幸を。身体が熱い。腕に信じられない力がこもる。

 許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。


『許せない。死ね』



 俺は女の首をはねた。

 皮膚が返り血が付いた所から浅黒く染まる。

 ズキリズキリと額が痛む。やがて焼きごてを、頭の中から当てられているように痛みと熱が襲う。

 母ちゃん譲りの緑の瞳は紅く染まり、額には黒い角が一本生えていた。
















 はぁ……

 夢だ。前世で何回も見たことがあるが後半はあんな内容じゃ無かった。

 テントの外は薄明るい。

 身体は汗まみれで、手の平には爪の食い込んだ跡が残っている。

 眠れそうにない。時間も頃合いだろう。バーニーと交代しよう。


「おはよう。交代しようか」

「ん。ん? おう。正直眠気が限界だ。後は頼むな」

「あいよー」


 水を飲んで顔を洗う。

 焚き火に適当に枝を放る。

 手持ち無沙汰だな。朝飯でも作ろう。


 昨日のくま肉の固い部分を叩いてミンチにする。

 クラミア草を刻んで混ぜる。塩をいれて、粘りが出るまで混ぜる。

 ミンチにした方が早く出汁が出る。

 水を貼った鍋にミンチを固まらないようにいれて、とろ火で温める。

 沸騰厳禁。肉をあまり動かさないように灰汁なんかを取りながらゆっくりと出汁を取る。

 最後に別の鍋に布を被せて濾す。

 黄色の澄んだスープだ。


 余った肉は塩をキツめにいれて、軽く炒める。

 風菜を歯ごたえを残す程度に茹でて皿に持ったスープに入れる。

 パンを炙り、穴を開けて炒めた肉を入れる。


 まぁこんなもんでいいだろう。



「いい匂いだねククルス。おかげて目が覚めたよ」

「ククルス君って男の子とは思えないくらいご飯美味しいわよね。今度教えて」

「わぁーいい匂い! ククルス! 僕にも!」

「勝手によそえよ。 あとクリス、俺の職業は料理人と暗殺者だ」

「二つ選んだの!? てか組み合わせおかしくない!?」

「僕も農夫と騎士だけどね。 ククルス、これ塩っぱくない?」

「パン炙ってから穴開けてスプーンで突っ込んで食え。魔獣狩って食いたいんだから別におかしくない」

「うはー。二人とも茨の道ね。あたしは怖くてできないわ」




 バーニーが起き出したのは日が登って2時間くらいしてからだ。

 今日は俺とドヴァンが留守番。

 三人が狩りだ。

 各々準備をして、山に入っていった。


 この大陸に住むヤマアナコハクウサギは発情期が秋で、その間たわわに実った秋の味覚を糧に行為をいたすから、夏の間から昼のうちに巣穴を出て餌を探し身体をつくる。

 毛皮は夏場狩っても毛が固くなく、その美しい日にかざすと透ける琥珀色で他大陸の富裕層の冬の帽子に人気だ。



 いっぱい狩ってきて欲しいところだな。





 留守番中は交代で野菜や香草の確保や鍋の片付けなどをする。

 無論午前中で終わるので余った時間、模擬戦したり、魔法の練習したりしてる。

 そうだ、昼飯食ったらヨトゥンと協力する魔法の構想をねろう。



「ヨトゥン、二人で協力して魔法を使えるかな」

「どういう物を考えているのですか?」

「先に二人のイメージを固めておいて、キーワードを言ったら俺が精霊語で魔法を唱えるから、ヨトゥンに補助とか維持とかしてもらったり?」

「ふむ。出来なくは無いですが、そうなると綿密なイメージのすり合わせが必要ですね」

「ヨトゥンの名前の元になった前世の神話なんかを元にしたいから、知識の複写をするよ」

「わかりました」


『闇よ、我が知識を契約者たる朋友へ注げ』


「なるほど。主様はわたくしに強き精霊の住む霜の世界の名を冠したのですね。光栄です。ですが主様。精霊語で朋友とおっしゃってましたが……」

「ん? ヨトゥンが勝手に主扱いしてるだけだろ? 契約だって主従の契約なんかじゃないし。俺は友達だと思ってるよ」

「なんと! このヨトゥン感涙で涙が凍ります!」

「だからさ、もうちょっと砕けた感じにならないかな?」

「敬語はお許しください。わたくし紳士を目指す故に」

「紳士って別に礼儀正しくて、社会的地位の高い人って意味だと思うんだ。友人関係なら砕けた口調でいいと思うけど」

「なんと!? わたくし紳士とは礼節に通じ、自らの過ちを認める度量と、老いすら愉しむ優雅な人だと前の契約者に聞いておりました」

「その人転生者でしょ……?」

「はい。そうだと申しておりました」

「まー漫画とかの影響でそんなイメージ強いけど、礼儀正しいお偉いさんが退職したあと優雅に老後を過ごしてるイメージだな俺は。とにかく、友人だと思ってるよ人間にあんまり遜られるといい気分はしないよ? せめて主様はやめよう」

「では……ククルス殿などどうでしょうか?」

「うーん。まぁいいか。 口調もそのうちもっと砕けるようになろうなヨトゥン」

「わかりました、ククルス殿」

「それで、協力魔法だよ。ヨトゥンの名前の元になったヨトゥンヘイムをイメージしてさ、氷魔法の威力が上がる霜のフィールドを展開するとか。出来るかな?」

「おそらく出来るでしょう。その分魔力は持っていかれますが、ククルス殿はイメージが豊かですしね。わたくしも霜の巨人のような力強さを発揮できそうですね」

「後は、ニブルヘイムでそのフィールド自体に攻撃力を持たせたバージョンとかね。何せ死者の国と同一視されたりする氷の世界だから。地面から氷の手が出て動きを止めたり、対応策を出さないとそこに居るだけで手足から凍るような」

「そうなるとククルス殿と私で同じイメージを持って同時に精霊語で唱えるとより強固に発現するかもしれませんね。こんど試してみましょう」

「ククルス、僕がいるところでは使わないでね。物騒だ」

「そういうドヴァンも最近物騒な魔法を覚えてきたじゃないか」

「いやぁ。師匠を見てるとさ、あの人戦闘系職業だけでああだろう? そう考えたら僕なんか何でも使わないと魔大陸なんて夢だなって」

「あー、職業か。ドヴァンの職業混ざったら屯田騎士とかになるのかな?」

「だったらククルスは必殺料理人だね」

「作った料理で人が死にそうな職業だな」

「そんな事言ったら僕なんて左遷された騎士じゃないか」

「ぷっ!」

「ふふ」

「「はっはっは!!!」」



「おーい、ウサギ捕れたよー!!!」






 三人組は見事ウサギちゃんを5匹捕まえてきました。

 調理担当の辛いところてすが、このつぶらな瞳で見つめるウサギちゃんを〆ていきます。

 まず、ウサギの首を持って地面に押さえつけ、剣の柄で頭を殴打します。


「美味しく食べるから。ごめんな」


 ウサギの下腹部から胸に向かって腹を裂きます。この時足がビクビクと動いて痛ましい。

 内臓を取り出して、足の骨をナイフで外し、肛門までしっかり裂きます。すると動脈が見えるのでここをナイフで切って血を抜きます。この小さな身体にこんなにも血が入っている。

 取った内臓のうち腎臓と肝臓は串焼きにするので皿に移して、他はその辺にぽい! 他の動物が美味しく食べるから大丈夫。

 血が抜けたら、腹の中を水で丁寧に洗います。


 そしたら、両足を開いて吊るし、皮を剥ぎます。

 足首に切り込みをいれて、腹の穴から足首の切込みまで皮だけ外すようにナイフで切っていきます。

 両足の皮を外したら、きちんと固定して、毛皮を下に引っ張る!

 こうすると綺麗に毛皮が外れていきます。つっかかるとこは要ナイフ。

 前足は面倒です。手首にあたる所を切り落として、チョットずつ剥がしていくと、そのまんまズルリと剥けました。ひゃっふー!

 更に頭を剥ぐのは大変。耳の骨を切ると、マスクみたいに耳が残ったまま綺麗に剥けます。


 母ちゃんにお土産でもって帰ろう。



 さーて、解体じゃー!



 尻尾の付け根から後ろ足の付け根まで切る。骨も切るのがポイント。

 んで、モモの関節の骨を切り離す。これを丁寧に脂とって、モモはオッケー。

 前足も似た感じで付け根から切り離す。これで前足はオッケー。

 胴体は先に肋骨の下にで切り離す。

 これで肋骨の周りと、肉のついた後ろ半身に分ける。

 肋骨の方は首を落とし、背骨を包丁で切って左右に分ける。肋骨の先っぽの肉を引っ張って肋骨を浮かせて肉を包丁で押して剥く。残った肋骨は、前足と頭でスープのダシにする。


 後ろ半身は背骨の節に包丁を合わせてぶつ切りにしてく。こうした方が骨を取りやすい。俺的に。こっちも脂は綺麗に取る。


 ここからは熟成だが、あいにくとそんな時間は無いので、周りの環境を熟成用にひんやりさせて、綺麗にしたら袋に入れる。


『闇よ、かの袋の内側の時を進めよ』


 これで無理やり熟成です。

 初めて家の近くで試した時は瞬く間にカビが生えてビビったっす。

 なので、きちんと殺菌&温度調整。





 モモは串に刺して遠火でゆっくりと火を通す。味付けは塩とペパの実だけ。シンプルイズベスト。


 肝臓と腎臓、それと肋骨から削いだ肉も串に刺して中火くらいで炙る。赤くて綺麗。


 後ろ半身のぶつ切りは下味に塩とクラミア草で揉んで、バターで焼く。

 骨付きやで!


 骨のスープもいい感じだ。




 皆さん食べましょう。



「うーん。肉!!」

「バターと獣よけの草の香りが合うなんて……」

「スープも美味しいね。ほんのり甘い気がする」

「ククルスは女になったほうがいいな」



 うさぎは肉質は鴨とかに似てるかな。

 出汁はうまい。なんか普通の旨み以外も出てる気がする。

 レバーやなんかはクセが少ないけど、これこそ命を食べているという実感の湧く味だ。

 そんで、モモ肉。

 これは齧り付く旨さ。歯の裏にあたる食感といい、滴る肉汁といい。原始的な旨さ。

 これぞ肉!!!



 はぁー幸せ。



 軽く皆で談笑しながら夜のローテーションを決めていく。


 今日は留守番だったから、このまま火の番だ。

 ヨトゥンを抱いて星を眺める。

 今日糧になった命に感謝しながら。

それでもウサギ食うなんて馬鹿じゃないかという人は、普段なに食わぬ顔で食べている肉たちがどういう工程を経てあなたの口に入るのか、ベジタリアンでも、その野菜を作るためにどれくらいの命が犠牲になるか真面目に考えて見てください。

魔法の言葉『いただきます』

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