スキルあれこれと聖剣不適合なんだが
日をまたいでしまった……
すみません……
飯を食いながらぎるじいにサラッと職業やスキルについて聞いた。
まず職業。
これは前のリリーおばあちゃんの説明通り、元は魂と体を結びつける事で体を乗っ取る魔物に対抗する技術だけど、副産物的なもので選んだ職業に見合った能力が解放されるもの。
本人の適性によって出ない職業もあるとか。
職業スキルのレベルが元からある程度あるのは、本人が職業につくまえにその技能をある程度鍛えていたからだとか。
俺の場合は前世の分加算されてるので、料理系に関してはそこそこ高かった訳だ。
さらに、二つ職業を選ぶ利点として、「統合スキル」がある。
統合スキルとは、二つの職業に重複するまたは別々のスキルが混ざると発現するスキルらしい。
俺の場合は料理人の毒知識的な物と暗殺者の拷問耐性が混ざった事で毒耐性になった可能性があるとか。
ただ、両方共俺自身鍛えた覚えもなく、ほぼ初期段階のスキルが混ざったために今後増えたり別のものになったりする可能性もあるとか。
毒耐性とか鍛えたらフグの卵巣を毒抜きなしで食えたりするかもね……
さらに、職業はより上位のものに昇華したり、二つ選んでいる場合は混ざって一つになったりもするようだ。
例えば確認されているのは、魔法使い+剣士で魔法剣士だとか、戦士→闘士
など。
ちなみに俺の組み合わせで合わさるのかは未知数。前例が居ないってさ。
二つが合わさると枠が一つ空くように思えるが、それは聖剣教会でキッチリ検査された後、追加できるか出来ないか分かるとのこと。
つまり出来る可能性もあるけど、できない可能性もある。
大昔、これを悪用して職業合成→空いた枠埋める→職業合成と繰り返し化け物のように強くなった聖剣教会の司祭がいて、無論肉体は死んだが魂が離れず生きた屍となり、発狂して暴れまわったのを大多数の犠牲を払い討伐したとか。
その司祭は自己申告で職業追加しまくったそうで、教会は戒律に教会内の者であっても、別の人に職業の検査と追加をやらせるのが追加されたとか。
そんで、覚得スキル。
これは職業に関係なく、自ら鍛え、覚えて得たスキル。
つまり要特訓、訓練、修行。
固有スキル。
これは生まれ持ったスキル。遺伝や種族固有なものもこの範囲。
俺の転生特典もここ。現時点で発現していなくても、きっかけがあれば目覚めたりもするらしい。
最後にスキルのレベル。
これはスキルの熟練度的なもの。
階級が下級、中級、上級とある。その階級のレベルが高いほど、上の階級に上がりやすい。
つまり一定値までレベルが上がっても上の階級に上がるわけではない。カンストは99らしいけど、あくまで99だから上に上がりやすいだけ。なんか切っ掛けなりなんなり必要なのかな。
そんで、上級より上の階級もある。
これは上級で切っ掛けを得て上位のスキルに変化すると起こるとか。
そうなれば王級、帝級、神級と上がる。それより上は確認されていないらしい。
そんで、ぎるじいは元々剣士と棍士だったらしいのだが、覚得スキルで他に武器系のスキルを取りつつ色々とこなした結果、職業が二度ほど合成した後ウェポンマスターになったのだとか。
条件難しそうね。
ぎるじいは元々色んな武器で戦いたくて最初の二つを選んだので、「色んな武器で戦いたい」という願いがあったのも関係してるんじゃないかと言っていた。
まぁ、魂と体を結ぶんだから、魂から願いとか出てるのかもね。
まあ、おおまかな事はわかった。たぶん。
これから実感すればいい。
「そんじゃ、じいちゃん。ちょっと聖剣適合するか確かめてくる」
「ちょっとな感じはしないね。暗いから気を付けて行くんだよ。ヨトゥンさんお願いね」
「かしこまりました、お爺様」
グラスボードに乗って学び舎へ向かう。
学び舎の前に着くと、ミラーさんとニーナが何故かいた。
「こんばんわ」
「こんばんわ。ククルス君も司祭様に呼ばれたのかね?」
「はい。そちらはニーナさんですか?」
「そうですわ! 聖剣は私が頂きますわ!」
「はぁ〜、馬鹿孫や。さっきの説教の内容を忘れてるなら帰ってからまた説教だねぇ。」
「ひっ。ごめんなさいお婆様」
「まったく、誰に似たんだか。ククルス君には迷惑かけたねぇ。砂糖は私に言えば融通するよ。孫の勉強代で一kgはあげるよ。それ以降はお金を払っておくれ。種は商人が売らないだろうから勘弁しておくれ」
「いえいえ。こちらも勉強になりました。砂糖は有り難くいただきます」
「揃っておられましたか。保護者の方はここでお待ちください。二人は私について来てください」
いつの間にか現れた司祭さんに内心ビビったが、直ぐに気を取直して後に続く。
学び舎の中に入る、階段の裏側に司祭さんが回ると何やら仕掛けを動かす。
ゴリゴリと音がなり、地下への階段が現れた。
「暗いですから足元に気を付けてくださいね。灯りは途中からしかないので」
そう言って階段を下っていく。
薄暗い階段も少し下ると、壁に魔石で動かしてるであろうランプのような物が取り付けられている。
最後まで下りるとワンルーム位の部屋に着いた。
部屋の中央には四角く加工されたような石があり、そこに細長い棒が突き刺さっている。
よく見ると指揮棒に見える。全体は銀色で、持ち手の部分にクルクルとした風のような金色の装飾が施されている。
鑑定してみようか。
名称・・・・・操風の指揮剣
種別・・・・・神器
状態・・・・・休眠
価値∞G
説明
遊楽と風の神の力が込められた神器。
召喚されし勇者倉内が持っていた指揮棒に神の力を注いだもの。
短剣として扱う事もできるが、その本領は風を操ることにある。
勇者倉内は、召喚された黄金の草原に住まう民に、奴隷狩りをしていた人族の国を三日三晩、局所的な竜巻を起こし壊滅に追いやった。
また、災厄で溢れ出た魔物を魔大陸で殲滅する折には、小山を風で持ち上げたとも言われる。
時には豪快に、時には繊細に、楽団を指揮するが如く風を操る。
うん。なんか、ここまでくると魔王は城ごとペシャンコに出来そうだな。
「では、ククルス君からこちらに」
俺は聖剣の前に立つ。
「では、聖剣に手を触れ、風属性の魔力を流してください」
風の魔力を流す。だがあまり通りが良くない。
思っきり流してみる。なんか光出した。
「ふぁ〜。無理矢理起こすのはいけないなぁ〜」
「へ?」
「君は〜転生者だね。好きなジャズプレイヤーは?」
「は? えっと……チャーリー・ヘ〇デン?」
「渋い! 渋すぎる! キライじゃないけど、君とは上手くやってけないね」
「はあ」
「はーい。次の人」
え?聖剣ってしゃべるの?
頭にはてなマークを浮かべつつ、すごすご退る。
ニーナが行くようだ。俺が選ばれなかったせいか、自信ありげな表情。
「君はどんな歌が好き?」
「え、えーと、優雅で華麗な物がいいですわ」
「派手派手しいのはあんまり好きじゃないなぁ……君とはもっと合わないね。次の候補が居ないなら、また眠るよ。おやすみー……」
「お疲れ様でした。ククルス君はまた別の聖剣を巡ってください。ニーナさんは水の聖剣の適性が有りますが、現在まだ聖剣保持者が居ますので、何かあれば教会の方からご連絡差し上げます」
ぽかーんとしていたが正気に戻る。
いやしかし。チャーリー・ヘ〇デンでダメか……
無難にジョン・コル〇レーン辺りだと行けたのか?
それとも俺の資質の問題なのかも。
家に帰ってじいちゃんに報告した。
「そうかい。まぁ予想通りだね。実はねククルス。アーヴィング家は風の聖剣の適合者は基本的にいないんだ」
「そうなの?」
「そうさ、だって血の中に風の神の力があるからね。相性的に最高だろう? 。きっと風の神は公平なんだね」
「そんなもんなのかな」
「もしくは身内が戦うのは嫌なのかもね。あれは戦う道具だから」
「理由的にはそっちの方が好きだなぁ」




