飛び級試験なん……だが……!?
PV10,000、ユニーク1000あざます!
春が来ました。
今年で五歳になります。
そう。草原の学び舎への入舎でございます。
学び舎から遠い北部と南部の子供達にグラスボードを優先的にまわすために奔走していたじいちゃんは、やりきった目で布団に向かっていきました。
生産は間に合ってたのですが、雪に閉ざされて配送出来ず、雪解けを待ってかなりの数を捌いたらしい。最近は目の下に隈ができとりました。お疲れ様です。
そんなわけで入舎と行きたいのですが、正直理解している内容をまた教えられるのは苦痛なので、本日ドヴァンと共に飛び級の試験を受けます。
試験内容は三つ。
一般知識。
魔法技能&知識。
戦闘技術。
の三本立てです。じゃあ来週も見てくださいね〜。じゃんけんぽん。うふふふふふー。
まあ余裕だろう。
ちなみに飛び級を希望しない場合は試験なんぞございません。
さーてドヴァンと合流しますかね。
さて、ドヴァンと共にやってき来ましたるは草原の学び舎。
じいちゃんから二人分の申請は出してもらってるので、玄関入ってすぐの受付で名前を言えば案内してもらえるとかなんとか。
「ククルス、あれだね。なんかちょっとドキドキするね」
「あー解るかも。初めて入るデカイ建物ってなんかソワソワしちゃうな」
「受付ってあれかな?」
「十中八九あれだろ。あれが受付じゃないなら俺は人間不信になりそうだ」
「ボクちゃん達、飛び級の子? お姉さんにお名前教えてくれる?」
「ど、ドヴァン・ドボルです」
「ククルス・アーヴィングです。よろしくお願いします」
「まー、今回の三氏族は有能な子が多いのかしら。はい、確認したからこの板を持って突き当りのお部屋へ行ってください。最初は一般知識の試験よ。頑張ってね」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
突き当りの部屋には紙束を持った試験官らしい人と、他に飛び級するであろう五人の子供達が座っている。
「お、二人きたね。僕は試験官のシャリアです。今日一日よろしくね。その板は僕に渡して。あ、名前を言ってね」
「ククルス・アーヴィングです、よろしくお願いします」
「ドヴァン・ドボルです。よろしくお願いします」
「はい。よろしく。ククルス君はそこの席、ドヴァン君はそっちに座って。あと一人来たら試験問題を配るから。って言ってるそばから来たね」
水色の髪を背中まで垂らした勝気な感じの女の子が入って来た。
「僕は試験官のシャリアです。よろしくね。名前を言って、板を僕に渡して。そしたらそこに座ってね」
「ニーナ・エルバですわ。よろしくお願いします」
「はい。……みんな揃ったね。これから試験問題を10枚配ります。終わり次第僕に提出してください。僕が鐘を鳴らしたら終わってなくても提出してください。提出したらまた同じ席に座って下さい。私語は試験が終わるまで禁止です。質問があれば今受け付けます。……無いですね。では問題を配ります。僕が初めと言ったら書き初めて下さい」
問題が配られる。
ざっと目を通すが簡単な問題ばかりだ。
「では始めて下さい」
カリカリと羽ペンを紙に擦り付ける音だけが部屋を支配している。
四則計算の問題と三種族の大陸の地理問題、簡単な他大陸についての問題。最後に今後自分がどうなりたいか、今それについて何かしているかを書くサービス的な問題だ。
10分もたっていないだろう。俺は問題を試験官に提出した。それを見たドヴァンも席を立ち提出しに行く。
その10分後ほどに俺達の後に入って来たエルバ家の少女が提出。その後三人提出したところで試験官は鐘を手に持って鳴らした。
「はい、終わりです。書き終わってなくても持ってきて下さい」
おずおずと残り二人が提出。
「はい、一般知識の試験は終わりです。次は魔法知識の問題を5枚配ります。試験のやり方は同じです。質問があれば今受け付けます。……無いですね。では配ります」
試験の内容は魔力魔法について、紋章刻印について、知っている魔法陣を紙に出来るだけ書き出すというもの。
これはエルバ家の少女が一番早く提出し、その後二人が提出。俺とドヴァンはかなりの魔法陣を知っているため時間がかかったが鐘のなる前に提出出来た。残る三人はさっきと違う子たちだ。きっとさっきの二人は魔法が得意なのだろう。
「では一度休憩を挟みます。お昼ご飯を用意してますのでここで待っていて下さい。席は自由にしても構いません。お昼ご飯が終わったら少し休んで魔法の技能試験があります。じゃあ楽にしてください。お喋りも休憩中はいいですよ」
試験官が出ていくとドヴァンが小走りでよって来て隣に座った。
「どういう事だよククルス。三年分どころじゃないじゃないかー。 計算なんて簡単すぎる!」
「まー落ち着けよドヴァン。簡単で悪い事は無いだろ。それだけドヴァンも勉強したんだから」
「それはそうだけどさぁ」
「それより昼飯でるのかよ。俺、昼飯作って来ちまったんだけど。あ、ドヴァンの分もあるぞ」
「ホントに? やったね。冬の修行中ククルスのご飯ばっかり食べてたから最近家のご飯が味気ないんだ」
「母ちゃんに言って俺の書いたレシピ貰えよ。母ちゃんはもう大体作れるから大丈夫だろ」
「隣よろしいかしら?」
「え? うん。どーぞ。えーと……」
「ニーナ・エルバですわ」
「ミラーさんのお孫さん?」
「お婆様をご存知ですの?」
「去年の新年一発目の氏族会議にね。こっちのドヴァンと一緒に見学してたんだ」
「では貴方がお婆様の言っていた……ククルスさんでしたっけ?」
「そーだけど?」
「私と次の試験で勝負しませんか?」
「は? 嫌だけど」
「な! なんでですの?」
「勝負してなんかあんの?」
「そ、それは……」
「はーい、お昼ご飯を持ってきたよ。皆取りに来てー」
「お、行くかドヴァン」
「え? いいの? 話の途中じゃ……」
「飯より大事な事なんざそうそうない。ないったらない」
「はぁ……」
飯を取りに行って戻ったらニーナは別の席に移動してた。
気にせず昼飯食った。ああ言う手合いは絶対面倒だから放置に限る。
配られた昼のサンドイッチは良くも悪くも普通だった。
ドヴァンは先に俺の作ったサンドイッチを食べたので後半きつそうだった。
「はい。休憩おしまいです。移動しますから僕に付いてきてください」
入って来た玄関の正面にある入口から、土壁に囲まれたグラウンドっぽい所に来た。
「ここでは普段、魔法の実技や戦闘の手ほどきなんかをしてます。休憩中は開放してますから入舎したらここで遊べますよ。では、ヒンメル君から順番に僕の前に来てこれに触って下さい。これは属性と魔力の量を調べます。全員調べたらあの壁の的に得意な魔法を撃ってもらいます。じゃあヒンメル君お願いします」
ヒンメル君から順番に水晶玉みたいなのに触る。誰かが触れる度、何色か色が出た後それが混ざるように別の色に変わる。おそらく先に出た複数の色が属性で、その後が魔力量だろう。
俺の場合は緑と水色と透明だ。魔力量は赤紫色だった。テンプレのパリンッとか無くて残念。試験官は魔力量のところで目を擦ってたけど。そういや、いつかの精霊召喚のエルフのお姉さんも俺の魔力が多いって言ってたなぁ。懐かしい。
そんで皆、順番に魔法を撃っている。やっぱり風が多い。竜巻っぽいのを真横に出したり、カマイタチ的なのを飛ばしたり。
ドヴァンは砂嵐の縮小版を細い方を的に向けて放って的を削りきった。怖い。
ニーナは水の龍みたいなのを出して壁を貫いた。どうかしてる。オマケに俺に向かってドヤ顔。
さて、俺の番だ。
最近精霊語と魔力魔法陣の同時発動が出来ないかなって思って練習してたんだけど、出来ないんだよなぁ。そのかわり魔力魔法陣の新しい運用方法を思いついんたんだけど。
「思考加速」発動。前方に斥力魔法陣重ねて展開。
『氷の礫よ、我が前の壁を破れ』
氷の礫を精霊語で呼び出し射出したのを斥力魔法陣で押し出し加速。今回は斥力魔法陣三つ。
的に着弾。まぁ氷だから弾けたけどね。隣二つの的まで壁ごと氷に包まれたけど。オマケに壁に鳥が止まった衝撃で凍った壁ごと崩れたけど。て、てへっ☆
試験官さんが頑張って修復してくれました。
試験官さんごめんなさい。そして鳥さんごんなさい。
「次に精霊を用いて、また的に攻撃して貰います。皆さん、的にですよ? 壁は違いますからね!」
これも似たような展開でございます。
それでも的だけに絞りました。ヨトゥンさんが早とちりで的全て粉砕しちゃっただけです。犯人は俺かっ!? みんなそんな目で見るなっ!!
ふとニーナを見たら顔を背けられました。
さっきの勢いカムバァアアアック!!!