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冬前の準備と鬼襲来なんだが

 突然だが、前世で俺は異世界モノのラノベなんかを読んで、ふと考えた事がある。

 それはもし、転移もしくは転生したとしてその世界にあって欲しい前世の食材。

 その中の筆頭三つ。

 米(日本米に近い短粒種)

 トマト

 ニンニク


 米は最早語るまい。

 日本人なら必須だろう。味噌や醤油の製作にも使うし。


 トマトは嫌いな奴も居るだろうが応用がきく。

 色んな調味料になるし、野菜なのに旨味が高いので調理の幅が広がる。何より俺が大好き。


 そしてニンニク。

 女の人は匂いを嫌う人も多いかもしれないが、匂い消しなんかの点で優れてるし、何より滋養が高い。オマケに保存が利く。あの匂い成分には菌を寄せ付けない効能がある。そして俺には前世の故郷の味でもある。有名な栽培地が近くて、養護施設がおすそ分けなんかを貰ってたので馴染みが深いのだ。





 米もトマトも草原では見当たらなかったが、ニンニクはまだ可能性がある。

 無論栽培どうこうではない。

 自生している可能性だ。あれは大別するとネギの仲間なので、ネギに近い香草のある草原ならと思っていた。

 だが、ドヴァンと遊ぶようになってから、色々と鑑定を用いて探していたが見つかっていない。

 だから発想を変えた。

 本物が無いのなら類似品を見つければ良いのだ。


 行者ニンニクという山菜を知っているだろうか?

 寒い土地の高地に自生している、ニンニクよりもニンニク臭い山菜だ。

 山に入って湿気の高い所を探せば有るかもしれない。


 そしてノビルだ。

 これは日本では川の近くなら普通に見つかる。掘ると小さな球根があって、それを食べる。

 ラッキョのようなネギのようなニンニクのような匂いがする。

 こっちは優先順位が低い。

 匂いを妥協したくないのもあるが、前世ではホントに何処でもあった物だ。それこそアメリカに仕事で一度だけ行ったのだが、普通に雑草で生えていた。

 今無理をして探さなくても生えてそうで、なんか残念な気分になりそうなのだ。


 ニンニクがあると燻製の前段階の漬け込みで差が出る。

 冬を前に探しておきたい。

 行者ニンニクは雪解けと共に現れるが、今は秋、気候的には勘違いして芽を出すやつがいるかもしれない。近似種が今生えてるかもしれない。淡い期待かもしれないが。


 そんな感じなので、今回は北の山の更に奥、海側の方に回ってみたいと思う。



 今回は父ちゃんと一緒だ。小さめの袋と鎌に、父ちゃんのお古の鉈を持って出発。グラスボードで木々を縫って到着。冷たい潮風が髪を撫でつける。


「よし、ククルス。父ちゃんは獣よけの草を採って来る。病の風が去ってからこんな奥まで来るのは初めてだからな。とりあえずこの辺りでその探し物してろ。すぐに戻ってくる。心配ないと思うが獣や鳥に気を付けろよ。向こうの小島にはお前が狩ったルフがうじゃうじゃしてるからな」

「わかった。父ちゃんも気をつけてね」

「おう」



 さて、探索開始だ。

 と、いってもその辺の草を鎌で薙ぐ、匂いを嗅ぐのトライ&エラーだけどね。

 ここはファンタジー世界。見た事もないようなものがニンニクの香りを出しているかも知れないし。








 ない。ない。ない。

 あ、なんか旨そうなキノコ。

 毒ありかよっ!けっ!


 ない。ない。ない。

 見た目は似たのがあったが匂いはユリに近い。ハズレ。


 ない。ない。なーーい!!!



 ダメかな。あー。


「おう。あったか?」

「ない。見つかんないや無いのかな?」

「まーこの先別の大陸とかで探せば有るんじゃないか?」

「そうだね。そうか……も?」


 話していると潮風に乗って父ちゃんからニンニク臭が漂う。


「父ちゃん、なんか匂うんだけど」

「ん? これか?」


 名称・・・・・クラミア草

 種族・・・・・山菜

 状態・・・・・良好


 説明

 全ての大陸に広く分布する山菜。

 切るとキツイ匂いが漂うため、冒険者の間では獣よけの草として知られる。

 近似種が森の中で自生しており、見た目も似てることから一纏めで「獣よけの草」として呼ばれる。多年草。冬以外は基本葉がなっている。

 食用可能だが、「獣も寄らない匂いがする」と食べ物として認識されていない。

 滋養が高いが、食べすぎると腹を下すため注意。

 乾燥した物が売られており、野営の時それを焚き火に放り込み扱われる。



 こ・れ・だ!!!


「父ちゃん!!! それ!!!」

「おう? 獣よけの草を探してたのか? でも料理に使うと臭くて食えくなるんじゃないか?」

「いいから! もっと採ろう!」

「お? おう。とりあえずこっちだ」



 父ちゃんついてくと普通に群生してやがった。

 俺の苦労を返せちくせう。


 持ってきた袋いっぱいに持ち帰った。

 母ちゃんと父ちゃんが料理に使うのかと奇異な目で見るので、サッと油に通し、匂いのついた油を少しスープに垂らして出してやったら掌は簡単に返った。


 細かく刻んでルフの漬け汁に混ぜ、スモークチキンを作ってドボル家におすそ分けに行ったら、物凄い勢いでドズルさんにどこに生えてるのか聞かれた。

 土の加護を使って品種改良する気らしい。



 これで食用されるようになるといいけどね。







 さて、冬になった。

 クラミア草を使った保存肉も作ったし、ルフ単体の香油とクラミア草を刻んで漬け込んだニンニク油的なのも作った。

 去年よりずっと肉の食料事情は良くなった。


 そんで、母ちゃんが妊娠してた。

 最近腹が少し大きくなった。父ちゃんは俺の期待に応えたのだ。

 このまま行くと冬があけて春の終頃から夏にかけて産まれるそうだ。

 妹だろうか、弟だろうか。

 ぎるじいは今からそわそわしている。どんだけ孫バカだよ。

 見た目子供で妊婦なのでかなり俺の精神に来るモノがあるが、草原の民では当たり前のことだ。なので当たり前に無事生まれる事を願う。


 あと、ぎるじいとじいちゃんの別邸が完成した。

 なんと二階建て。草原の民感覚だと結構ひろい。

 家から徒歩四十秒である。部屋数もそこそこ。

 ログハウス風な丸太!って感じのお屋敷である。

 そういえば、ばあちゃんはまだ来ないのだろうか。じいちゃんの話だといつもより遅いとのこと。なにも無ければいいけど。





 冬でも修行は続いている。

 天候の変わりやすい魔大陸では足元が雪まみれなんてザラらしい。

 ドヴァンとかわりばんこで、ぎるじいやアサヒさんに挑んでいる。


 雪を蹴り、対するぎるじいに向かって走る。

 反りのある特製の木剣をぎるじいに打ち出す!

 ぎるじいの木剣と衝突するのを見越し力を抜いて左にそれようと身構えたその時である。

 ぎるじいが突如吹っ飛んだ。

 ぎるじいがいた所の少し後ろに、角の生えた妙齢の女性が棍棒を振り抜いた状態で立っている。

 黒髪黒目、白い肌。髪は肩口に切りそろえられている。黒いローブを羽織っているが、ローブだと言うのに自己主張が過ぎるくらい盛り上がる巨乳。妙齢の美しい顔をしているが、額に生えている真っ黒な角と手にした棍棒が何もかもをぶち壊している。

 おかしい……いくら修行途中とはいえぎるじいの後ろに人が近づけば気付くはずだし、ぎるじいが吹っ飛ばされるなんてありえない。


 女性がぎるじいに向き直る。

 ぎるじいが震えてる!?

 そんなに危ない奴なのか!!?

 女性が棍棒を肩に担ぐとぎるじいに大声で言った。


「ギルバルト!!! ひ孫が産まれたならなんでお母さんに言わないんだ!!! 魔大陸に居たなら島に寄って、一言かけるくらいしたらどうなんだ!!!」

「ひっ! ご、ごめんよ母さん!! 」

「まったく……なんであの人の息子がこんな冒険馬鹿に育っちまったんだい……」

「く、ククルス! 前に話しただろう? 俺の父ちゃんは草原の民と人間のハーフで、母さんは鬼族と獣人のハーフだって。この人がお前のひいばあちゃんだ」


 ひ、ひいばあちゃん?


「おお! この子がかい? 私はリリー。リリー・マルレーン。この冒険馬鹿のお母さんで、君のひいおばあちゃんだよ」

「お、俺はククルス・アーヴィングです。初めまして」

「あらあら、ちゃんと挨拶出来たねぇ。礼儀正しい子には飴をあげるよ。ほうら、手をお出し」


 飴だって!? 砂糖があるのか!?


「あ、ありがとう。えーと……」

「そうさね。リリーおばあちゃんと呼べばいい」

「うん。ありがとうリリーおばあちゃん」

「よしよし。いい子だ。そっちの子は友達かい? もう一個あげるから二人でお食べ。さて、いつまでもこんな寒い外にいると風邪をひいちまうね。ギルバルト!! 案内しな!!」




 もう何がなんだかわからない。

 我が家の年寄りは突然にくる病気でも遺伝しているのだろか。

なんとなく出した。

そして僕とククルス君は無類のトマト好き。

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