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無言?のきみと割れた木刀

彼はいつもそうだった。

いつも無表情でそっけなくてつまらなそうだった。

一部の女の子達にはその表情が真剣な表情をしているように見えるらしいけどわたしにはそうは思えなかった。

どうやらわたしの考えは間違っていなかったらしい。

目の前にいる彼は今まで見たこともないくらいまっすぐな目でわたしを見据えていた。

その眼差しに殺気が含まれてなければ飛び跳ねて喜んでるところだけど…目の前の彼から向けられている殺気は尋常じゃなかった。

「本気で来い」

彼はそう言うなり素早く踏み込みわたしののど元に突きを放った。

女の子相手に容赦なしですか…

構えた木刀をそのまま横に振りって軌道を逸らしてかわし、後ろに跳んで距離をとった。

それなりに速い突きだけど静ちゃんが負けるほど強いとは思えないんだけど。

この程度の実力なら怪我させずに十分勝てる。

一気に下がった分の距離を詰め、面を狙って木刀を振り下ろした。

彼は間一髪で受け止めた。

そりゃそうだスピードを加減したんだから。

面を止められた状態からさらに間合いを詰め、柄の先で顎を打った。

そしてバランスを崩したところで木刀を放り、服の襟と袖を掴んで背負い投げた。

彼は呆気にとられていたけどこっちの流派でいいって言ったのは彼なんだし問題ないよね。

「まさか背負いがくるとは…しかもこんなに短い試合時間で負けるなんて」

「この程度でよく静ちゃんに良く勝てたね」

「ド直球だね」

だって信じられないし。

静ちゃんなら問題なく勝てると思うんだけど…

「きみの実力を自覚なしに引き出したからだよ。その証拠にきみ、かなり手加減してただろうけど…この木刀見てみ」

彼がわたしに放り投げた木刀は見事にヒビが走っていた。

確かに手加減してちゃこうはならないよね…

「ん?でも自覚なしってど〜ゆ〜こと?」

「俺がほとんど話さない理由はそれに関係することなんだよね」

いや〜意味が全くわからない。

あまり頭のよろしくないわたしにもわかるように説明してください。

「まぁ説明するよりも実際に見た方が早いと思うよ。打ち合いの前に言ったよね?負けたら君の命令を絶対に実行するって。それを違えようとすると…」

彼はそう言うとわたしが立っている所から十数メートルほど離れたところで立ち止まり、突然何もないところへ向かって体当たりを繰り出した。

ただ何もない空間に向かって体当たりをするだけだったらわたしは迷わず帰っていたと思う。

誰でもそうしたと思う。

普通なら完全に頭のおかしな人にしか見えないと思う。

でも彼の場合普通じゃなかった。

確かに何もない空間に突っ込んだはずなのに何かに弾かれてわたしのところまですっ飛んできた。

「こんな感じで実行せざるを得なくなる」

転がったまま「なはは」なんていいながら頭を照れくさそうに掻いていた。

突然何の前触れもなくファンタジーの世界に引っ張り込まれたお陰で開いた口が塞がらず、ただただ彼の照れ笑いを眺めるしかなかった。

わたしはどうしたらいいんだろう?

とりあえず笑っておこう。

今は頭が真っ白でそれ以外に何も思いつかない。

ハハハ…ハハ…ハァ…

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