架空職業・監視屋ときお『Old story』
超巨大国際都市、東京。通称帝都。
華やかな街並みとは裏腹に、ここには『特区』と呼ばれる地域がある。
国際社会では表向き『存在していない』とされている、危険区域。
──人はそれを、『暗黒街』と呼ぶ。
弱者の命は使い捨て。
強者のみが生き残り、かと言って生きることが果たして幸福へと繋がるのか、誰も教えてはくれない。
そんな闇の底にも、小さな小さな、物語がある…
診断メーカー『仕事屋さんになったー』から触発され、Twitter上で投下したストーリーを、編集、加筆したのものです。
Twitter上では『#架空職業』のタグ付きで投下しています。
【注意】
こちらは普段書いている『監視屋ときお』の過去編です。まだときおが『トウキョウ』と呼ばれていた頃のお話。
「なぁ、トウキョウ」
「…何」
「お前さ、おれと一緒にギルドに行かないか?」
「…ギルド?」
「ああ、おれたちみたいな親なしに仕事くれんだって」
「…」
「そう怖い顔するなよ。一応調べたんだ。ギルドは『淵』の外側にあるんだ。ここよりマシな場所だろ?」
「…」
「もし罠だったら逃げればいいだろ」
「…」
「…お前も、もう行くとこ無いんだろ?」
「…なんで、オレ?」
「なんでって…まぁなんつうの…一人よりは誰かいた方がいいし。それに…」
「…」
「…お前がメンバーのこと、こっそり助けてたの、おれ知ってる」
「!」
「D.Cが何をやっていたのかも…お前が、リオを助けようとしてたのも」
「…」
「ずっと前に、おれが刺されそうになったの、助けてくれただろ。あれ、お前だろ?」
「…」
「お前の『目玉』が飛んでいくの、見たんだ」
「…オレは、お前が思ってるようなヤツじゃない」
「…でも、おれには、命の恩人だ!」
「! …タイペイ」
「行こうぜ、トウキョウ。おれ、お前より馬鹿だから、もしかしたら足手まといになるかもしれないけど、ここに染まってはいないつもりだ!」
「…」
「…ダメか?」
「…いや。…行こうか」
「! ああ!」
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「よっ」
「…タイペイ」
「久しぶり。そっちどうだ?」
「…まあまあ」
「そっか。お前要領いいもんな。おれ全然慣れねー」
「…」
「でも、なんつうの?…仕事終えると、感謝?されんの。あれ、ちょっと嬉しい」
「…れも」
「え?」
「オレも」
「…そっか!」
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「…タイペイ」
「おっ?トウキョウじゃん!なに、珍しいな、お前から話しかけてくんの」
「…」
「あ、ごめ、悪い意味じゃなくて、その、」
「…わかってる」
「ご、ごめん」
「…。タイペイ、今、文字習ってるって…」
「あ、うん、ギルドで定期的に教えてもらえるんだ。お前も行く?」
「…ん。…行って、みたい」
「おお!じゃあおれ、ギルドの人に話してみるよ!」
「…タイペイさ」
「ん、なに?」
「勉強すんの、楽しい?」
「ああ、楽しいよ!町にある看板とか、読めるようになるしさ。色んなことがわかるようになるのは、楽しいよ」
「そっか。…やっぱり、そうか」
「?」
「こっちの話」
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「なんだ、トウキョウ、文字わかるんじゃん」
「…読めないのもある…から…」
「そっかー。でもそれなら教えてくれたら良かったのに」
「…」
「トウキョウ?」
「…ごめん。…D.Cに知られるの、嫌だったから…」
「…あ…そっか、…ごめん」
「…」
「ごめん…」
「…大丈夫」
「…怒ってない?」
「うん」
「よかった」
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「…」
「…トウキョウ」
「ん?」
「…なんか最近変わったよな」
「…そ?」
「うん。いいことでもあったのか?」
「…別に…」
「恋人ができたとか」
「…」
「えっえっ?!何その反応!マジで?!マジで?!!!」
「タイペイ、うるさい」
「あっ逃げんなって!照れた顔初めて見た!!」
「うるさい」
「いや、だってさぁ!!…トウキョウ良かったな!!」
「…」
「?」
「…今度、会う?」
「!!…もちろん!!」
───けれど結局、その約束は果たされなかった。
ムカシ、ムカシの、ハナシ。
タイペイくんが思った以上にうざ可愛くなって、アレやソレ。