第8章:目覚める殺戮と天空(中)
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激しい戦いの跡か、いたるところに破壊の痕跡が見てとれた。
「哭け!アヴェイス&ヘイルダム【聖と冥を打ち貫きし双銃】!」
轟音と共に、大量の弾丸が吐き出された。
「そんなちんけな銃がまだ効くと思ったか!」
不可視の結界に阻まれ、一撃も加える事が出来ない、だが、プルガトリオは攻撃をくらって居るのだろう、傷が明らかに多い。
「そこか!」
見えない腕により、体ごと薙払われ、吹き飛ばされた。
「ハァ、はぁ、ハァ……まだ……まだ、戦える…エリアが…目覚めるまで…」
「エリア?もう、つまらん、もう死ねよ」
「待ちなよ、ここからは、絶世と乖離が相手をする」
いつもの様に黒い外套を身に纏い、紫電ほとばしる槍を握った絶世帝クオルフェイド、極細の白剣[レイ]と極薄の黒剣[シェイド]を握った乖離帝エリシェが、プルガトリオを守る様に立っている。
「邪魔だ!退け!」
「喰らえ!レイ&シェイド【筋光と薄影】!」
レイから吐き出された光線とシェイドから吐き出された闇の刃が衝突し合い、空間に歪みを生じさせた。
「駆けろ!ゲイル・ヴォルテックス【激雷の槍】!」
紫電が大気を分解し、真空を駆け抜ける。
「馬鹿か?こんな能力で勝てるとでも思ったか!」
二つとも不可視の結界に阻まれ、殺戮に届く事はなかった。
「そこまでだ、スレイクヴァルエ」
「矛を収めなさい」
「ちっ!明星に混沌か…」
「み、明星帝…に混沌帝…亡くなられた筈では!」
「ん?あんな奴に負ける訳がない、が……コイツは無理かもな」
一度も見たことのない程の真剣な表情で、殺戮帝を見つめている。
「かかって来いよ!この俺によ!」
「分かった、悪いな…殺す気で相手をしてやる、生かすつもりはない、覚悟しろ」
すでに腕と足には、篭手と具足を装着している
「ソウル・タイド…どうやら、エリアごと俺を殺す気みたいだな」
見えなかった、突然殺戮帝が吹き飛んだかと思ったら、殺戮帝がいた場所に明星帝が立っていた。
「そんなモノか?」
「う…うぐぅ…く、クソが…」
「早く攻めてこい」
余裕なのか、明星帝は構えすらとっていない。
「シネェェ!」
殺し尽くすという概念が籠った塊が、容赦なく明星帝に襲いかかる
「甘い!ぬるい!遅い!」
刹那だった、刹那にして殺戮帝が更に遠くまで吹き飛んだ。
「もう…死んでくれ、殺戮帝、そして次が最後だ!蒼天剣エリヴァサス!」
腕に持っているのは、蒼い刀身をもち、身の丈ほどあろうかという剣。
「受けろ、これが最後だ」
「お、親父?何で生きてるんだ?」
「エヴァイクレイス……なのか?」
先程までの緊張の糸が切れたのか、握っていた大剣を地面に突き刺して、ヨロヨロと近寄った。
「バカじゃねぇの?簡単に騙されてよ!」
「なっ!」
深々と脇腹を腕が貫通した。
「グフッ!スレイク……貴様…」
「騙されるアンタが悪い、じゃあな、蒼天剣は頂くぜ」
近寄ろうとした瞬間、足元が数十センチえぐれた。
「止まりなさい、次は当てるわ」
「……マグ=ディスレイヴ【破壊し破戒する魔銃】か、流石と言うべきだ、混沌帝」
「誉められても嬉しく無いわ」
顔は真剣だが、目は悲しんでいる。
「受け取りなさい、真の月蝕刀・新月を」
腰に刺してある新月は粉微塵とかし、大気のマナとなった。
「は?何故俺に渡す?」
「所持者が貴方だからよ」
「まぁ良い、受け取ってやる」
地面に鞘ごと刺さっている、短刀を抜きとった。
「深い闇に沈みし者の、意思を汲み取りたまえ、我等が願う……」
「ちぃ!貴様!」
「させんわ!」
混沌帝に近付こうとした瞬間、間に明星帝が入り進行を妨げた。
「退けぇ!」
全力の攻撃も、ソウル・タイドにより受け止められた。
「祖の銘は……全てを掴みし銘……」
明星帝を意識の外にした瞬間、一撃が見事に決まり、派手に吹き飛んだ。
「ッグハッ!糞が!」
「目覚めよ、天空帝エルヴァクレイス」
刹那、完全に掌握していたはずのエリアの意識が、急激に加速する。
「ギァァァグッッ!この俺が侵食される!」
「身体は二つ、分かれよ!」
ほとばしる閃光、光が止んだ時、立って居たのは二人の帝位者だった。
一人はあさ黒い肌に、地面に着くほどの黒髪に鮮やかすぎる鮮紅の瞳をもつ殺戮帝スレイクヴァルエ。
もう一人は病的にまで白い肌と、ふくらはぎ辺りまである、蒼穹の様に鮮やかな蒼の髪、片目が蒼穹色、もう片方が紅蓮のような鮮紅の瞳を持つ、境界のエリア……いや、天空帝エルヴァクレイス。