第7章:目覚める殺戮と天空(前)
凄まじい強風が吹く果てしなく広がる不毛の荒野、二人の男が服をはためかせながら、向かい会って立っている、その手には一方が黒い刀を、もう一人は蒼い大剣が握られていた。
「さぁ……殺してやる、かかって来いよ、本気でな!」
「もう……終わりにする、そう、俺もお前も…今、ここから!」
風により、舞い飛んできた木の葉が地面に接触した瞬間、二つの影が交錯した。
この事態が起きた前に戻ってみる。
「実際……どうなんた?乖離帝、俺の強さは」
「ん…そうだなぁ、帝位者には遠いが、少なくとも、並の神よりは強い事はたしかよ」
一瞬、全員が巨大な力を感じたが、直ぐに消えたため、誰も気にしなかった。
「ん……お前か?境界のエリアはよ」
いつの間にか居たのは、面倒くさそうに頭を掻きながら話しかけてきた男だった。
「あんたは……誰だ?」
「あぁ、失礼、俺はエトワズだ、他のヤツは存在神とも呼ぶ」
『存在だと!』
「何か…知ってるのか?」
『知ってるもなにも、最高神の一人で、技巧の無双と言われる最高神だ』
「ん〜中のヤツは、随分お喋りみたいだな、流石は煉獄帝、物知りだと言うべきか?」
『なっ!存在、き、貴様!』
エリアが反応を示す前に、ヴァストリィクとエリシェが襲いかかった。
「全く、仲間思いだな…お前等も、存在ヨ…敵ヲ弾ケ!」
二人の攻撃が接触する前に、二人を強く弾き飛ばした。
「クソッ!境界よ、砕き散らせ!」
一瞬で構築した力の塊が、エトワズ自身を砕く為に飛翔する。
「どうした?本当にその程度か?エリア」
何も防御策を取らず、素手で受け止め、消し去った。
「なッ!」
『変われ!エリア!』
強制的に変わったプルガトリオは、炎を投げつけた。
「なるほど…これが煉獄炎か、予想外の威力だが…残念ながら俺には効かない」
「煉獄炎がダメでも…コイツなら…!アヴェイス&ヘイルダム【聖廟と冥界を撃ち貫きし双銃】!」
右の紅の装飾銃から出た紅い弾丸が、一直線上に立て続けに9発、左の漆黒の装飾銃より黒いホーミング弾が、四方八方より迫り来る18発吐き出した。
「その銃も知ってる、この世の双魔導銃はすべて、この俺自ら鋳造したからな、まぁ、そのオリジナルは完全に残っているがな」
何も持って無かった筈の手には、いつの間にか双銃が握られていた。
「叫び吠えろ!スカイガァ&ブレィカン【天空と大地を撃ち砕く双銃】!」
一瞬の内に全ての弾丸は撃ち落とされた。
「えッ…?」
あろう事か、撃ち落とすだけでなく、二倍の量での攻撃まで仕掛けてきた。
『プルト!変われ!』
プルガトリオが了承する前に、エリアの意思により入れ代わっていた。
「力を……弾け!」
殆どを弾く事が出来たが、数発がエリアの身体を貫いた。
「グァぁァっっ!」
「全く……そろそろ、決めるぞ…」
腕から暗黒が吐き出され、大剣を形成した。
「混沌解放、第一次束縛解放」
あっという間に、手には黒い大剣が握られていた。
「アビス・ホロウ・クレイドル【虚な奈落の揺篭】…そろそろ、さよなら、だ」
それを見た瞬間に、自らの死を悟った。
「確かに……そうかも知れない、だが!最後まで、あがいてみせる!」
「ほう……最強と言われる宝具を前に、それだけの事を言えた奴は初めてだ、本当の全力で相手をしてやる」
「境界よ………俺に、力を…明星の剣を…」
「いくぞ!全束縛解放!唸れ、アビス・ホロウ・クレイドル【奈落の虚ろな揺篭】」
解放された混沌は、剣には収まりきれず、放出されている。
「一瞬だけ…蒼天の剣を…」
一瞬の振りを見きって、一撃を回避したかにみえたが、飛来する様々な物により、至る所がダメージを受けた。
「トドメだ!ゴースト・エッジ【虚ろな刃】!」
突如として出現した様々な形の刃が襲いかかった瞬間に、蒼い閃光が辺りを駆け巡った。
「出来た!蒼天…」
「悪いな、これで終わりだ……フェリオス・ルート【宿命の楔】!」
手にはいつの間にか、レイピアの様な剣が握られ、それをエリアの心臓に突き刺した。
「う……グァアァァァ!」
エリアの身体から、黒色の炎が吹き出して、その炎が人を形造った。
「なんで……エリアの外に…」
「プルガトリオ、お前なら分かるだろ?これは皇位二名に依頼された事だ」
倒れているエリアの髪は、蒼から一瞬で黒に変化して、髪が伸びた。
「久しぶりに空気を吸ったぜ、プルガトリオよ!」
先程までエリアが居た場所には、あさ黒い肌に地面に届く程に長い黒髪、何よりも鮮やかな紅い瞳を持つ男だった。
「さ、殺戮帝……」
「残念だったな、エリアは消えた!可哀想なプルガトリオ、愛する者を無くして悔しいか?哀しいか?歯がゆいか?」
気丈に振る舞おうとしていたプルガトリオは、振る舞えずに、手にしていた双銃を落とした。
「なんで…何で!エリア…居るんでしょ!…答えてよ…エリアァァァ!」
紅い瞳には大粒の涙が湧いている、次々と落下し地面にシミを作っている。
「エリア、エリアうるせぇなあ…エリアは消えたんだよ!」
泣きじゃくるプルガトリオは、どれだけ殺戮帝が苛立っているのかが分かって居ないようだった。
「煉獄、絶世、乖離帝処理は任せた……ついでに言っておく、殺戮よエリアはまだ生きている」
「なっ!」
「エッ?」
二人とも声色の違う驚きの声を上げた。
「それなら……戦える!エリアが目覚めるまで!」
取り落とした銃を握り直すと、煉獄炎が回りに展開された、まるで戦う意思を表明するかの様に……。
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