第5章:煉獄の目覚め
絶世帝に格の違いを見せ付けられたエリアは、気を失っている。
「やり過ぎたわ…」
「違うだろ?やり過ぎるしかなかった、だろ?」
「確かに、そうねアレを放たなかったら確実に、次の攻撃で私が膝を付いていたと思うわ」
「だろうな」
表層意識がリンクになって居る、がその姿はオルクを倒した時と同じ、脚まで届くほどに真紅の髪、全身に浮き上がっているのは魔術殺しの刻印である、よく見ると男とは思えない凹凸のある身体をしている。
「プルガ…いえ、リンクそろそろ正体を教えてあげてもいいんじゃないの?」
「明星帝、混沌帝の間に生まれし子供で最高神を除いて、事実上最強の神になりつつある事をか?」
「そうね、あと貴方が何者なのかとかね」
「フェイド!それは…ま、まだ…言う必要は無いだろう」
明らかに慌てている様な雰囲気をだしている。
「ついでに好きって言えば良いじゃないの」
「なっな、何をなにを言い出すんだ!」
「あら?図星だったの?」
からかわれた事に気付いたのか、見たことも無いほどに顔を真っ赤にしている。
「ヒヒッ!良いこと聞いた!」
「囁きのマカルか…厄介な奴に聞かれたわね」
「暗黒十神の候補とあろう者が、聖面にうつつを抜かすか…」
「少し黙って頂けるかしら?でないと本当に死ぬわよ?」
「ヒヒッ、逃げ足には自信がある、暗黒面に報告……だ?」
リンクが構えて居たのは、ペラーデストではなく、二丁の装飾銃であった。
「貫けアヴェイス、吠えろヘイルダム【聖と冥を撃ちし双銃】!」
アヴェイスと呼ばれた紅を基調とした装飾銃からは拒絶を表する紅い弾丸が吐き出され、ヘイルダムと呼ばれた漆黒を基調とした装飾銃からは怨霊の様な禍々しい黒い波動が打ち出された。
「貫きなさい!ゲイル・ヴォルテックス【疾風迅雷】!」
本質は投げ槍立ったのか、構わず投げられた槍は発生した紫電により分解去れた空気中を減速無しで飛んでいっている。
「なぁぁぁぁー!逃げ…ハブシッ!」
逃げるどころか全てが命中し、一瞬にして完全に絶命していた。
「フェイ、表だった行動は控えろっ…!」
「よう、エリシェ、久しぶりだな」
リンクを見た瞬間にエリシェと呼ばれた濃緑のショートカットで碧眼の女性の表情が一瞬にして変化した。
「ここであったが百年目!いざ尋常に勝負!」
「上から84:58:73か、残念だな私は上から89:57:75だ」
「くっ!胸にだけ栄養が行ってんじゃねえのか?」
リンクの顔が一瞬にして引き攣った、それは言葉に対してではなく、クオルフェイドの顔を見たためだった。
「あらあら、乖離帝、死にたいのかしら?」
「い、いやぁ失言だったなぁ」
明らかに冷や汗を掻きながら、訂正した。
「暗黒三帝が集まって何の会談かしら?」
突然現れたのは、腰に形は違うが僅かに光を纏った双剣を腰に装備した金髪の女性だった。
「シェイスか…どうだ、首尾は」
「聞かれなくても分かるでしょ、もちろんバッチリよ」
四人はとりとめのない話を始めたが、その会話を破る様に一人の男が現れた。
「我が名は、独裁のハーケンクロイツ、暗黒十神が第五位だ」
「なんのようだ?独裁の者よ」
最初に気付いたのか、リンクが聞き返した。
「リンク、貴様を同胞殺しの罪で殺しに来た」
「へぇ、殺せるのなら、殺してみれば?」
返された言葉はなかった、ただ返事の変わりに来たのは、銃により吐き出された弾丸だった。
「トライヘッド・ガンスリンガーか、良いものを持ってるな」
手に持たれているのは、ノコ刃の刀のペラーデストだった。
「我が前より消えよ、ペラーデスト【魔なる行進】!」
刃が顕現し、ハーケンクロイツに向かいとんでいく。
「このような物、効かぬわ!」
銃身に着いた鎖によって波動は掻き消され、その鎖が刀身に巻き付いた。
「どうした、絆のリンク、貴様はそんなものか!」
気迫と一緒にペラーデストが砕け散った。
「やっちゃったわね、全く…」
「どういう事だ?フェイド」
「武器が破壊され、不利なのはリンクだろう?絶世よ」
光輝帝、乖離帝は理解していないが、絶世帝だけは理解為ているようだ。
「見れば分かるわ、刀が何を抑えていたわ」
折れた刀身からは固形な炎が吹き出している、それと同時に爆発的なプレッシャーが押し寄せた。
「全く、なかなか気に入っていたんだけどね…」
吹き出している固形の炎をみた瞬間に、ハーケンクロイツの動きは止まった。
「れ、煉獄炎…」
「そう、私が煉獄帝プルガトリオよ、運が良かったわね、煉獄の炎に焼かれるのは」
「う、うわぁぁぁ!」
滅茶苦茶に銃を放って居るが、全てが煉獄炎に阻まれ当たる事はない。
「煉獄の炎は、燃え付きず、聖廟と冥界をてらしだす…煉獄爆砕【ヘイル・バースト】!」
ただの一瞬だった、二丁拳銃により吐き出された炎により、一瞬にしてそこに居たはずのハーケンクロイツは消え去った。
「久しぶりね、煉獄帝プルガトリオ、絆のリンクはやはりダミーだったのね」
「あっちが動き易かったからね、騙して悪かったわシェイス」
「せっかく人が鋳造したのに、一応宝具なのよ、わざと砕かせないでよ」
宝具を創造し鋳造するには、長い年月が必要になる。
「ん…エリアが起きる」
その言葉に反応してか、エリアの身体に戻って行く。
「ん…確か俺は…」
「私に負けたのよ、境界のエリア」
「まぁしかたなかろう、相手がクオルフェイドだからな」
光輝帝が励ましているが、あまり聞いていない用だった。
「これは…確か、リンクの」
見つけたのは、ペラーデストの刀身のなくなった鍔と柄だった。
「刀身がなくなって……!」
エリアが柄を握った瞬間に、漆黒の刀身が現れた。
「これは……」
「そう、貴方の母親の刀、月蝕刀・新月よ、刀身が現れたと言うことは、認められたと言うことね」
月蝕刀、それは力無き者には月蝕で隠れる様に刀身が消えてしまう刀、この世に一振りしか存在しないと言われる。
「お袋…確かに受け取った」
エリアは新月を鞘に納めると、脇目も降らず歩きだした。
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