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ひらり、蝶のような  作者: 五十鈴スミレ
目が覚めて、それから
37/48

37.質問される前に質問いいですか?



 朝ごはんはとってもとってもおいしかったです!

 パンはさくさくのふわふわ。お肉はやわらかくってジューシー。スープは野菜の味がぎゅーっとつまっていて、サラダはシャキシャキ。デザートのプリンはもう本当にぷるんぷるん! 特にスープがすごくおいしくて、思わずおかわりしちゃいました。

 ちょっと大きめの、といっても部屋の大きさを考えるとずいぶんと小さいテーブルを、エリオさんとタクサスさんと私、それにラピスさんたちも一緒に座ってごはんを食べた。

 使用人っていっても、家族みたいなものらしいです。だからごはんも一緒。

 ローラスさんはオールマイティーに仕事をこなせるだとか、実はラピスさんにはお兄さんがいて、今はお嫁さんをもらって町に住んでいるんだとか。

 そういうお話を、ごはんを食べながら聞かせてもらった。おかげでみんなのことをだいぶ知ることができた。


 ごはんを食べ終わってから、エリオさんに連れられて二階に来た。

 現在、エリオさんの部屋にいます。私の部屋のお隣なんだよね。

 なんでここにいるのかっていうと、事前に聞いていたように、タクサスさんの考えた質問に答えるため。

 正面に座っているエリオさんの手には、紙の束。

 私には読めない文字で書かれてるけど、それが質問内容みたいだ。


「じゃあ早速、質問に答えてもらってもいいかな」


 エリオさんの言葉にうなずこうとして、ふと思い出した。

 そういえば聞こうと思っていたことがあったんだ。


「あ、エリオさん、その前に私から質問いいですか?」

「いいよ、何?」

「この紐ってエリオさんのですか?」


 私は髪を結んでいる緑色の紐を、エリオさんに見えるようにつまんだ。

 ごろごろしていたときに気づいたこの紐。

 ラピスさんに髪をいじられたときにもこれで結んでもらったけど、誰のなのかまだ知らないんだよね。

 私の予想ではエリオさんのものなんだけど、当たっているんだろうか?


「よくわかったね。

 それは元はオレのだけど、今はフィーラのものだよ。

 つけていてくれるとうれしいな」

「んーと、よくわからないけどプレゼントみたいなものですか?」

「うん、そう」

「ありがとうございます! 大切にしますね」


 プレゼント!

 私はその言葉にテンションマックスになる。

 飾り気のない紐だけど、きれいな色だし、丈夫そうだから髪を結わう以外にも使えそうだ。

 ああ、でもせっかくのプレゼントなんだから、大事にしまっておいたほうがいいのかな。

 いやいやエリオさんはつけていてほしいって言ってるし、だったらちゃんと使わないともったいない。

 ん? つけていて、ってことは髪を結ぶの限定なのかな?


「そんなに喜んでもらうようなものじゃないけどね。

 というか、言ったそばから簡単に信用しすぎでお兄さん心配です」


 はあ、とため息をつくエリオさんを見て、上がっていたテンションが落ち着く。

 なんだろう。すごく呆れられている気がする。


「……へ? あれ、ダメでした?」


 私は紐の先をいじりながら、おそるおそる聞いてみる。

 どうして喜んじゃいけないんだろう。

 普通、プレゼントをもらったら誰だってうれしいものだと思うんだけど。

 簡単に信用しすぎ、ってことは、今エリオさんは嘘をついたってことなのかな。

 紐がエリオさんのものだってこと? プレゼントだって言ったこと?


「それにはオレの魔力がこもっていて、たとえばフィーラがどこにいるのかだとか、わかるようになってる。

 迷子になったら探せるし、お互いの声も聞ける。

 けど、一番の理由は監視目的だからね」


 わかりやすく説明してくれたから、ため息の理由がわかった。

 エリオさんにとっては、この紐は犬猫につける首輪みたいなものなんだ。

 そんなものを人間につけたのに、喜ばれちゃったから呆れたんだろう。


 なんというか、結界のことや瞳の色のことを話してから、エリオさんの態度が四十五度くらい変わった気がする。

 優しい方向に一直線だったのに、いじわる成分が足されたというか。

 それでも優しいことには変わりないと思うんだけどね。


「はあ……便利なんですね」

「フィーラって便利って言葉だけで色んなこと片付けるよね」


 私の言葉に、エリオさんはまたため息をつく。

 なんだか呆れられてばかりだ。

 そんなに私は変なことを言っているんだろうか?


「だって、困ったときに呼べばエリオさんが助けに来てくれる魔法のアイテムですよね?

 あ、乱用する気はありませんよ。エリオさんも忙しいですもんね」


 そんなつもりのない私は、便利だと思う理由を語る。

 声が届くってことは、助けを呼べるってこと。場所がわかるってことは、駆けつけてもらえるってこと。

 スーパーマンじゃないけど、エリオさんがいたら大抵の問題は解決しちゃいそうだ。

 自分が迷子体質なのかはわからないけど、あんまり自信はないからそういう点でも助かる。

 もちろん本当に困ったときにしか頼らないようにはするつもりだ。


「そういう問題じゃないんだけどな……。

 うん、わかった。もうそういうことでいいや」


 エリオさんは疲れたみたいに瞳をつむって、眉間に手を当てる。

 それから顔をあげて、私と目を合わせた。


「とりあえず紐は当分身につけていてもらうってことで。

 で、今度はこっちから質問しても大丈夫?」

「はい、バッチコイです!」


 私の質問は終わったからね。今度はエリオさんの番です。


「回答は短い言葉に収めなくていいからね。むしろ思ったことを全部言うくらいの勢いでお願い。

 二択や三択の質問でもおんなじで、答えのあとにどうしてそう答えたのかの理由を付け足してほしい。

 もしわからないことがあったらちゃんと質問すること。

 わかった?」


 質問といっても、はいかいいえで答えられるものだけじゃないみたいだ。

 とりあえずは、考えたことをそのまま全部言えばいいってことだよね。それなら得意です。


「わかりました」


 私がうなずくと、エリオさんは紙の束をテーブルに置いて、こっちに向き直る。





 長い長い質問タイムの始まりです。







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