参
ここいらで、幼馴染について話そう。
僕の幼馴染、高校も一緒で教室も同じ。
席までもが隣・・・と言うわけでもなく、2列ぐらい遠くの席だった。
名前は、津々島 夜宵。
小柄で、胸は小さく、髪も短い(短いと言っても、大体肩に掛かるか掛からないかぐらい。)。
成績もなかなか、だがしかしだ。
こいつは悪い奴ではないが、天然と言うべきか。
ドジっこだ。
寝坊、忘れ物、時おり寝癖が残りっぱなしだったりと、
大体は
よくあることかな。
それでもこいつは根はいい奴で、色々と世話になっているし、何だかんだで優しいやつなのだ。
「天然はひどいよぉ。」
今現在、夜宵とマクドナルドで飲食中、雑談中。
「ぁあ、ごめんごめん。」
入学式は3時くらいに終わって、
夜宵と二人でマクドナルドに行く事にした。
店内で食べる事にして、二階の奥の窓側の席に座った。
高層マンションの側面に沿って落ちているオレンジが
今朝のオレンジとはまた別の意味で綺麗だった。
「かなちゃん、何部入るの?」
先に話をふったのは夜宵だった。
かなちゃんとは、勿論、僕の事で、昔からそう呼ばれてたからもう慣れっこだけれど、
高校生にもなったわけだし、正直、そろそろ止めてほしい。
「あ~ん~、まだ決めてないかな。」
「中学校のときみたいに、入ってすぐ止めたりするの、駄目だからね!」
お前は僕の母親か。
まあ実際、世話焼かせてる部分はあるんだけれどね。
ほんとこいつには、色々と助けてもらった。
金がないときなんかは、料理をご馳走してくれたし。
時々、野菜とかお裾分けしてくれたり。
ちなみに僕はアパートに一人暮らしだ。
下に妹がいて、隣町のおばあちゃんの家に住んでいる。おじいちゃんも一緒だ。
父は僕がまだ中学生になる前に事故で死んで、母は僕が中学卒業と共に――――――。
「ん~そいじゃあ、夜宵、お前は何部に入るんだ?」
「あ~実際のところ、私も決めてないんだぁ。」
「なんだよ。」
「えへへへ」
なぜか照れくさそうに笑う夜宵。
いや、褒めてねぇよ!?
ポテトを一本ずつかじりながら話を続ける。
「あ、でも興味ある部活はあるよ!」
「へぇ、何部だよ。」
「釣部。」
Ha?
「お前が?」
「お魚さん食べたいな~って思って。」
「食うことしか考えてねぇのかよ!?」
「あ、鮎とか塩焼きにして食べてみたいな~、おいしいんだってよ?」
らしいね。
まあ、鮎の塩焼きなら等の昔に食べてるけれどね。
あれは美味しかった。
優越感に浸る僕がいた。
ハンバーガーショップで焼き魚の話とはなかなかシュール。
「・・・釣部がどんな活動するのか知らないけれど、僕らの通う学校って、釣部あったか?」
「あ・・・・・・・・・。」
沈黙。
いや、待てよ!!?
そこからかお前は…。
これだから。
「お前HP見ろよ。」
「ごめん、機会音痴なんだぁわたし。」
「インターネットくらい開けるようになれ。」
機会音痴どころの話じゃねーぞ!?
やっぱりドジだった。
チーズバーガーを一噛み、二噛みしてコーラを飲んだあと
ポテトにかじりながら夜宵との会話を続ける。
「ん~、釣部ないんだ~。じゃあ茶道部でいいや。」
「食い物目当ても程々にしろ、てか食い物目当てで部活決めるな!!」
「ヱ!?何で分かったの!?怖い!!」
「怖がるな!わざわざ文字を変換するな!」
「えへへへへ。」
だからなんで照れるんだ?
照れながら夜宵は口の中にポテトを3、4本放り込み、モグモグさせる。
オレンジジュースとともに流し込んで話をさいかいさせた。
「でも和菓子っておいしそうじゃん。今まで和菓子ってあんまり食べたことなっかたからさぁ。」
「・・・。」
こいつに、食べ物は諦めろ。なんて言っても無駄なんだろうな。
最終的に決めるのはこいつだ。これ以上の口出しはよそう。
「まあ、精々がんばれよ。」
「やった~~!!」
親におねだりを粘ってした結果、結局許可を得た子供の如く。
夜宵は大喜びだった。
「僕が許可しなかったら、入らない気だったのか?」
「うん、まあね。」
おい、それって何かとまづくないか…。
「なんとなぁくだよ。」
「なんだか知らないけれど、お前の人生、生きる主導権を僕が握っているみたいじゃないか!」
「ん~そうかな~?」
部活ぐらい自分でじっくり考えて決めろよ。
じっくりとな!
「あ~、料理部もいいな~。」
「あぁもうあとは勝手にしてくれ。」
「そんな投げ出さないでよ~。」
お前の事情だろうが!!って怒鳴りたかった。
こういった感じで、バカトークが繰り広げられ、困っている、
店員が見えた。
ーーーーーー店を出て、家路へ向かう。
「今更だけどさ~。」
夜宵が話をふってきた。
「ん?」
「入学式ってすっごくドキドキしたね!」
ほんと今更だね。終わった直後に言うならまだしも、
時間経過も考えてモノを言って欲しいよ。
「僕はぜんぜんしてなかったけど?」
「え?あ、そう。」
少しだけがっかりしたような顔見せて、夜宵は続ける。
「新しい学校生活が始まるんだなぁ、って、わくわくしちゃうよ?私。」
学園ドラマとかでよく言いそうな台詞を言いやがった。
「・・・お疲れ様です・・・。」
「ほぇ!?な、なんでお疲れさまなの!?」
「いいやぁ、人生楽しんでいるんだなぁ、お前は。」
「ぁあ・・・う、うん。まぁねぇ~。」
えへへっ。
・・・ぶっちゃけ、こいつ笑うと結構かわ―――(ry
「・・・お前の笑顔に100点満点中、50点やろう!」
「へ?ご・・・ごじゅ・・・ごじゅう・・・?」
うん、50点。
いいねぇ、50点。
良くもないが、悪くもない平均を行く50点。
やっぱどっちかに片寄らず平均がいいんだよ。
平均最高!!
・・・平均最高、てその言葉がすでに片寄ってる気がした。
「平均的な顔なんだ私ぃ・・・。」
夜宵にとって、平均はあまり好ましくないらしい。
若干、目がうるうるしていた。
泣くなよ…。
「いやいやいや、平均はいいぞ?お前、笑顔平均てことは、異様な顔では少なくともないんだからな。」
「そ、そっかぁ。うん、平均いいね。私平均極めるよ。」
極めるんだ!?
まぁいい、是非とも極めたまえ。
そしていずれ、平均王となるがいいさ。
平均の王ってどんな王なのか、地味に気になる。
「んじゃ、ここいらで。じゃな。」
「うん、ばいばい。」
僕の住んでいるアパートの前で、夜宵と別れた。
真っ暗ではないが少しだけ空が紫がかっている。
ドアを開ける前に夜宵の背中を数秒眺めて、部屋のドアへと向かった。