壹
昨年、中学三年生の秋、夏の終わり頃に僕は命を救われた。
一人の少女に。
否、救われたのではない。
事実上新たな人生を歩まされたと言うべきか、生き返されたのだが、
生き返った僕は生前の僕ではないから、生まれ変わらされたと言うべきなのだろう。
そんなわけで、それ以来僕にとっては不思議だと思うことが不思議と思わなくなってしまった。
日常こそ異常。
どこかで聞いた台詞。
人は悪魔の存在を共通してイメージするが、実際にはそのような形をしているとは限らないし、
それを一概に悪魔と呼べるのか僕自身悩みどころだ。
悪魔というのは人の欲ではないかと思ったりもしたが、
そしたら食事も睡眠も悪魔に入ってしまうのではないかと、なかなか当てはまらない。
だから、あの人は悪魔と呼ばず、(彼ら)と複数形なのだろう。
判断できないから。
不思議な事といえば昨日も大変なことがあったわけで、今日。
入学式4月7日。
中学生から、なんと高校生になるのです。
今まで15年間よく生きてきた自分を誇りに思った。
たった15年で。
だがしかし。
こんな始まり方をすれば大抵、主人公というのは寝坊するのがお決まりなの(なの?)だが。
ちゃんと、その法則に従って寝坊した。
入学式の日に。
ちゃんと寝坊をする、ていうのもおかしな日本語だが。
全力を尽せば間に合わない事もないけれど。
昨日のことがあって、疲れていた。
幼馴染と一緒に入学式に向かう予定だったが、時間がないので先に行っててもらった。
玄関に鍵を掛け。
自転車に跨り、朝の空気を心地よく感じながらこぎ始める。
1,2年で道路の幅が究極に広くなったこの町は、以前とは全く別の空気が漂っている。
なんていうか、数年前まで田舎臭かったのに今となっちゃあそれもいい思い出で、新鮮味を感じる。
本当に変わった。
田んぼなんて見渡す限りだったのに、もう一つも見当たらない。
まあ、強いて言うなら、畑くらいは見えるかな。
全く別の制服を着た男子高校生(?)と並んで信号を待つ。
多分、この制服は仙台西・・・?
制服にはあまり興味を示さないタイプな僕だから、一度見ただけの記憶の中をどうにか探りだした。
きっと的外れだ。
根拠は無いが、自信が無い。
信号が青になったから勿論僕は足に力を入れてこぐ。
左カーブの歩道を自転車で通る。
三つ並ぶマンションを眺めつつ、更なる信号待ちをする。
やばい。
鼻から牛乳出すくらいやばい。
さすがにこんなに信号を待っては時間も時間だ。
8時半までに学校に着かなければ、完璧な遅刻。
初っ端から最悪な印象だ。
そんで今と言えば8時7分、全力でこがなきゃ間に合わない。
休み無しだ。
筋肉痛覚悟だ。
なぜなら、僕が今日から通い始める学校は坂の上なのだ。
坂の上の学校。
信号が切り替わり、またもやこぎ始める。全速力で。
気持ちはチーター、現実は自転車。
僕としてはとても速いのだが、周りから見たら、ただの自転車だ。
建設途中のビルの前を通り、小学校の校庭の前を通り、セブンイレブンの前を通り。
坂に到着。
ギア三段階の内のニ段階で勢いよくペダルを踏む。
春とはいえ、制服の中が暑い。
だんだんと汗が滴ってきた。
ペダルをこぐ度、身体全体が暑くなる。
ついには、こぐと前輪がぐらつく程重くなった。
それでも僕はこぐのを止めない。
もう少しだから。
もう少しで駐輪場に着くから。諦めない。
「諦めないで。」と何回も囁かれている気分だ。
そしてついに・・・・・・・・・。
ペダルを踏み外しすっ転んだ。
がらがらガッシャンの文字とインパクトの効果が現れている感じだ。
「いでで・・・。」
脚や腕の関節を痛めたが、制服には大した異常が見られなかったのが不幸中の幸いだ。
僕は焦りながら下駄箱を通り抜け。
そして、そのまま自分の指定された教室へと向かう。
「やばい、やばい。」
せっかくの高校生活を無駄には出来ない。
無駄に出来ない理由の一つとして、
そりゃまあ、リア充になりたいって願望もあるし、
同じ中学だった奴も結構この学校に通う事になるけれど、あまり仲がよかったわけでもない。
しょっちゅう喧嘩してたとか、そういうのではなく、
会話をしなかった、というただそれだけの事だ。
まあ、実際。入学式は始まっておらず。おそらくは、
教室で待機しているであろう新入生がこの学校の先生の語りでも
せいぜい、聞いて、流している所だろう。
しかし、この学校。
なかなか面白い階段の造りをしている。
螺旋階段もどき?
上りは右カーブ。踊り場のあたりで普通の階段となるが、あとは全部螺旋状。
そこでだ。
オレンジ。
オレンジ色のまん丸が大量に描かれた布を目の当たりにした。
率直に言うと、
螺旋を6段踏んだあたりで、上の方に気配を感じたから。なんとなく見てみると、
丁度、螺旋を下ろうとしている女の子が目に入った、ついでに。
股の間を見てしまったわけで、それに追加して言うとその女の子は、
可愛いというよりかはキレイで、外国混じりな顔で、美人。といった感じだった。
以上、説明終わり。
「きゃ~~~~。」
彼女は、きゃ~~~~、と棒読みで、
「はぁあ。」
最後に呆れた。
どうも、轟ちゃんです。
処女作です。
いやはや、読んで頂き真にありがとうございます。
1話は中途半端(?)に終わりましたが、
次話はこの途中から始まります。
説明が多くてつまらないでしょうが、
どうぞ、今後もよろしくお願いします。