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愉悦少女  作者: よるかみ
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 カフェテラスで先の先輩達とご機嫌なティータイムに洒落込む。

 あの後もライラ先輩は右腕に装備を装着したままにしてくれていた。改めて見させてもらう。本当にSF小説から飛び出したかのような装備だ。


「ライラ先輩は技術者か研究者なのですか?」


「ん……隠す事でもないか。私のファミリーネームは『デルヴラインド』。聞いた事くらいあるんじゃないかな?」


 デルヴラインド……社。聞いたことも何も世界的に有名な企業だ。最先端を自称しており、微力な魔力を流す事によって防弾と防塵機能を発動させるTシャツや、普通にゲーム機なども売っている。軍備用品と言えば聞こえは悪いが、この国を守る為の大凡の装備はデルヴラインド社から提供されている事は周知の事実。ちなみにブレスステーション5は、国民的コンシューマーゲーム機として有名だ。


「御曹司様でしたか」


 ひゃー、あまりにも恐れ多い。そんな俺の頭を彼は優しく撫でてきた。


「いつも敬った反応をされるのが嫌で名乗らなかったんだ。だから、これからも気軽に呼び捨てで構わないよ」


「先輩……」


 2人の空間を作っていると、割り込むようにダルクが会話に入り込む。面白くない様子だ。


「リアっちー!! 俺には何か質問とかない!?」


「ないです」


「冷たい!! なら、これでどうだ!!」


 一応、認識はしていた。だが、次の瞬間『存在そのもの』が掻き消えた。は? と思いダルクのいた隣を見ると、姿が消えている。

 その時、耳に温かい風が吹いた。ビクッと身体を震わせて反対側に顔を向けると、イタズラが成功したような幼さを残す表情でダルクは笑みを浮かべていた。


「びっくりした?」


「まさか……」


「空間転移『くらい』なら俺もできるよん」


「……意地悪な先輩ですね」


「けど、興味は持っただろ?」


 サムズアップする彼。本当に軽く空間転移を行なった上に息の乱れや魔力の微弱な乱れすらない。圧倒的で繊細な魔力操作技術。


「……邪険に出来るような先輩じゃないって事ですか。では改めて……リアです。ファミリーネームはありません。よろしくお願いしますね」


「おう、俺はダルク。俺もファミリーネームはない!! よろしくなぁ!!」


 まさか、このダルクという先輩がこれから腐れ縁になるなど、この時は思いもしなかった。


………………


 その日の夜。


 クロムさんにご奉仕(意味深)してから、自室のベッドで今日の振り返りをした。

 どうにも、自分の『愉悦』には少しだけ癖があるようだ。

 例えばの話。レイアのような強気な子を騙して捉えて人身売買する。その裏にいたのはなんと、俺でした!!



 これは愉しくない。



 愉悦の前に生理的嫌悪が先に来る。善悪にも優劣を定めているようだ。


 だから、断言できる。レイアと友達になりたいのは本当なのだと。


 その先に愉悦があるとすれば『自己犠牲』。魔物から庇い死亡……実は生きてましたなんてテンプレ展開は、ありふれていて、でも心に来る愉悦は計り知れない。


 それからダルク先輩とライラ先輩。2人とは今後ともよろしくしたい。彼らから学ぶ事も多いのと、とても愉快な景色が見れそうだからだ。特にライラ先輩は気になる男、第1位である。


(まさか大企業の御曹司様がいるとは)


 まぁ……アルテイラ連合国でも1番有名な学校なのだ。御曹司くらいワラワラいるかと思いつつ。同時に今回は腕だけだったが、ティータイムの時に全身を製作中と知り、是非に見学させてほしいと頼み込んだ。こんな時に顔が良い女の子だと強いよね。


 それからダルク先輩。あの人は底がしれない。空間転移は大魔法に分類されるのだ。それを軽く扱える? 彼からも学べる事は多いはずだ。それに……ティータイム中にベタベタ触れる事なく紳士的な一面も見せてくれた。彼はファミリーネームはないと言ったが『言わなかった』だけのような気がする。


 ともかく、数日間は楽しくお給金が稼げそうだ。こんな楽しい日々を提供してくれたクロムさんには頭が上がらない。


 よし、寝てるクロムさんに全裸で添い寝してやろう。


 そしてどうしたらここから『愉悦』に繋がるのかも、考えないといけないね。


………………


 翌日。朝からおちょくりすぎたせいでゲッソリしているクロムさんを他所に朝食を作り、食べ終えてから一服すると出勤の時間だ。


 レイアと再び再開して相対すると、とても嫌そうな顔をされた。そそりますね。


「レイアちゃん、私……貴方の力になりたいの」


「なんか裏がありそうだから断る」


「ひ、ひどい……」


 少し涙目で見てみると、ほんの少しだけ申し訳なさそうな雰囲気が感じられた。やはり根は良い娘なんだ。それが分かっただけでも友達になる理由には充分だ。これから先、君のためなら僕は庇って死ねるくらいには仲良くなれたらいいね。


 そして少しの間、木刀で打ち合っていると。彼女は愚痴をこぼすように呟く。


「私は……眩しい奴が嫌いだ」


「眩しい……?」


「っ、なんでもない。今日はもう終わりだろう。早く魔法師団の教室に行け」


 しっしっと疫病神を追い払うように手で払う仕草をする彼女。


 眩しい……か。この意味を解明して、寄り添って、仲良くなる。言うには簡単だが中々に高い難易度。そういうのは、物語の主人公がやるべき事だ。俺は主人公なんて大層な人間ではない。


 でも、なんとなく察するよ。君には実力が必要なのに、俺に負けたと言う事は『そういう事』なんだろ? 彼女が語ってないだけで、姉妹か兄弟がいそうだ。


 聖剣は現代兵器をも薙ぎ払う必殺の一撃を無限に放てる、それはレギュレーション違反だろうと言いたくなる武器だ。故に継承するとなると、かなりの実力と魔力が必要とされる。レイアの血統と魔力は充分クリア……してるのか分からないが、問題は実力の方なのだろう。


(こればっかりは、介入はしない方がいいか)


 ただ、俺に零しただけとはいえ感情を見せてくれたのは進展だと思いたい。


………………


 今日の魔法師団の話題は『時間』についての考察。なんというか、タイミングが良すぎるなと思う内容だ。


 そもそも時間というものは観測者がいて成り立つ。そして観測者とは誰もがそうなのだ。故に、魔法という万能の力は観測者によって自由に過去や未来に飛べるのではないか。とても簡単に要約すると、観測者という魔法使いは時を越えられるか? を議論する。


 各々がグループを作りレポートを書く中で。ダルクとライラが共にグループを作ってくれたので議論を始める。


「リアっちはどう思う?」


「私もリアの意見を聞いてみたい」


「最も可能性が高いのはタイムリープではないかと思います」


「詳しく聞いても?」


「人の脳は電気信号で動いていますよね? これを一種のコンピューターと考えて。現在を全てデータ化し、過去に送れれば」


「なるほど。ただ膨大とも言える記憶データが問題だな……。どうにか圧縮し過去で解凍、上書き出来れば……。しかし送る為の装着はどうする。ブラックホールが作れたとして、自転させるのは制御するよりも難しい……むむむ」


 むむむって。いや、ライラ先輩ほど頭良くないんでそこまで考えて発言してないです。とは言え、天才の先輩から詳しく聞きたい内容だ。


 この問題をクリアまで導ければ『愉悦の権能』でタイムリープが出来る可能性が高まる。


「リアのおかげで面白い考察が出来た」


「私はライラが何言ってんのか分かんねーけどな」


「すいません、俺も分かんないです」

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