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エリザ ガーゼマン

ケリリがホームレスになった頃。彼女のおばあさま、エリザ・ガーゼマンは港にいた。


やっと見つけた仕事が、元自分の会社の従業員の経営する、港の荷物運びの人夫だった。


「もう70歳の私に、荷物運びなんて...胃も弱ってあまり食べられないし...」


昔、ガーゼマン家で働いていた社長は、いたわるように言った。


「ガーゼマンさん、申し訳ないですが、これが一番給料の高い仕事で、日給で払えるのはこれだけなんです。月給制で、給金も安くなりますが、経理の仕事もありますよ」


「そうですか。宿代を支払わないといけないので、日給がほしいのです。頑張ってみます」


「無理なさらないでください。必要なお金はお貸しいたします」


「ありがとうね。やれるだけやってみます」


その日から、港の荷物運びの人夫を始めた。


小さな荷物を少しずつ運ぶ。人夫たちは優しく声をかけてくれる。


「ばあさん、無理するなよ。ゆっくりでいいからな」


「ありがとうね。頑張って運ぶからね」


途中で、荷物をおろし、少し休憩して、また肩に載せた。


はちきれそうな腕。痛む腰。だが、やらなければ、安宿代も払えない。


次の日も、また次の日も、ただ荷物を担ぎ運ぶ。


次第に、エリザは体がなれてきた。


同じ仲間が声をかけてくれる。


「ばあさん、頑張ってるね。もう一人前じゃねーか」


「まだまだだよ。あんたらにゃ負けられないよ」


雨の日も、風の日もひたすら荷物を運ぶ。次第に運ぶ荷物が大きくなっていく。


四ヶ月間、毎日の肉体労働で、次第に筋肉が肥大し、若返っていく。荒くれどもにも負けなくなった腕を見て独り言を呟く。


「海賊の船長だった先祖の血が目を覚ましたのかねぇ?」


ある日、社長がエリザ・ガーゼマンを呼んだ。


小さな事務所だが、活気がある。仕事は多いのだろう。


「ガーゼマンさん、班長になって、あの荒くれ共を束ねてくれないですか」


筋肉隆々になったエリザは、自信有りげにこういった。


「社長さん、すでに束ねてますよ」


話が済んだエリザは仕事に戻り、黙々と荷物を運ぶ。会計係の女性が外に出て来て、17時の終業を知らせるハンドベルを鳴らした。


エリザのシャツは汗でぐっちょりしてる。


「今日もいい汗かいたよ。シャワーを浴びようかね」


大きな声で皆を誘う。


「社長の奢りだ!エネルギー補充のために飲みに行くよ。行きたいやつはついといで。あたしゃ先にシャワーを使わせてもらうよ」


その日のこと、大勢で歩く荒くれ者の一人に、肩があたったアルファは、胸ぐらを掴まれ凄まれた。


「おいてめぇ、謝りもせずに行く気か!」


ケリリのおばあさま、エリザ・ガーゼマンが止める。


「おやめよ。坊や、すまなかったね」


アルファは何事もなかったかのようだ。


「大丈夫だよ。ところで、おばあさんも強そうだね。すごい筋肉だよ」


エリザは、ニッコリしながら、


「すこし前まで死にかけてたんだけどね。フォフォフォ」


アルファは、急に真顔で尋ねた。


「おばあさん、乳はいくつあるの?」


荒くれ共はギクリとしてたじろぎ、エリザおばあさんを見つめた。荒くれ共の顔にはこう書いてあるようだった。エリザさんは、2つ以上あるのかと。


ニッコリした、笑顔のままで、


「坊や、レディーに聞くことじゃないよ」


荒くれ共の一人が震える声で、恐れながらエリザに聞いた。


「あ、姉さん、ふっふたつですよね?も、もっとあるんですかい...」


エリザの厳しい顔つきは、男を威圧した。


「馬鹿なこと聞くんじゃないよ。2つに決まってるだろ!」


アルファはニヤリと笑う。


「おれんとこの従業員は、4つあって、全部で12個だ。勝ったぜ!」


驚いた荒くれ者達は再び尋ねた。


「あ、姉さん、負けたんですかい?」


ニヤリと笑う。


「フッ、女の甲斐性は乳の数じゃないよ。行くよ!」


アルファが無邪気に声をかける。


「ちょっと待ってよ。助けてくれてありがとう。これ僕の名刺なんだ。割引券も渡しておくね」


エリザはちらりと見て、ポケットに入れた。


「坊や、アルファってのかい」


「そうだよ。おばあさんは、なんて名前なの?」


「エリザさ。エリザ・ガーゼマン」


「エリザさん、店に来てね」


アルファの声に、片手を上げて、立ち去って行った。


「今日も勝負に勝った」


と意気揚々とアルファはトゥエンティミルキーに向かって歩いていく。



パブで椅子に座り、アルファの名刺を見るエリザ。


近くにいた男が覗き込んだ。


名刺の裏に、ミルクを搾る、ぬくぬくパークと書いてある。


エリザは面白くもなさそうに言った。


「なんだい、牧場かい」


「あっしは違うと思いやす」


「どういう意味だい?」


「言えないっす」


「怒らないから言ってみな」


「女性の前では言えないっす」


「怒らないから正直に言ってみな」


「ぬくぬくパークでミルクを搾る。そりゃ、xxxxて意味ですよ」


エリザの裏拳が男の頬にめり込み、吹き飛んで床に転がった。


「レディに言っていいことと悪いことがあるんだよ」


男は頬を抑えて、足はお姉さん座りになっている。


「よく覚えときな!女ってのは、優しく『怒らないから正直に言って』というときは、正直に言えば怒るもんなんだよ!」


頬を抑えて男が呟く。


「そんな理不尽な」


立ち上がったエリザが周りの屈強な男たちを見渡した。


「いいかいお前たち!幸せになりたかったら、このあたしが女心を教えてやるから、よく覚えとくんだよ!」


別の男が手を挙げた。


「姉さん、『怒らないから正直に言って』というときは、嘘をつけばいいんですね」


また、その男に裏拳が飛んだ。


「嘘はだめに決まってるだろ!」


別の男が聞く。


「どうすればいいんで?」


「決まってるだろ!正直に言って怒られるのさ。これが、お前たちが幸せになる方法なんだよ」


屈強な男たちが揃って言った。


「理不尽な~~」



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