コマーシャル
トゥエンティミルキーに戻った三人は、事務所の椅子に座り、話し合いを始めた。
ロッジマイヤーが口を開く。
「『20乳』と看板を書いているだけですわ。店の外見だけで中に入ってくるかどうかを決めるのは、外見で人間性を判断するのと同じです。こちらは何も変える必要はございませんわ」
「そうね。アルファは、パンツを見て喜んでいる人たちに、幸せとは何かを見せてあげたいんだものね」
「ハジィ、ロッジさん。もっとたくさんの人に来てもらってショーを見てもらえれば、きっとみんなを幸せにできるでしょ。そうすれば、ケリリにもわかってもらえるよ」
「アルファ、何か考えはあるの?」
「トゥエンティミルキーのコマーシャルを作ったらどうかと思うんだ」
ロッジマイヤーが尋ねる。
「アルファさん、あてはあるのですか?」
「そんなのないよ。でも、有名な監督に作ってもらおうよ。僕、アキラ・スピルバーグ監督に会いに行ってみるよ」
ハジィが呆れた声を出した。
「あの世界的な監督が作ってくれるわけないでしょ」
「僕、聞いてくるよ」
「どこにいるか知ってるの?」
「そんなの、ネロに聞けばわかるよ」
◇
まるで1900年代初頭の大きな映画会社のスタジオの前に、アルファは立っていた。入口には警備員が目を光らせている。
スーツを着たアルファが警備員に手を上げ、親しそうに尋ねた。
「アキラさん、今日は来てる?」
「来てますけど、何か?」
「大丈夫。仕事の話をしに来たんだ。これが前金」
そう言うと、内側のポケットから、紙幣と同じくらいの大きさの紙の束を取り出しちらりと見せた。
それを見た警備員は、目を見開いた。
「仕事の話ですか。では、どうぞ」
スタジオに入り、アルファはアキラ監督を探す。何人かのスタッフとすれ違うが、誰も怪しまない。
スタジオ内を歩き回り、キョロキョロと監督を探した。
「どこにいるんだろう」
どこからか、こんな声が聞こえてきた。
「監督、休憩に入ります」
声の方へ行くと、広い撮影スタジオの中で、椅子に座っている監督の姿があった。
アルファは駆け寄り、声をかける。
「監督、コマーシャルを作ってほしいんです」
監督はじっと、アルファの純粋な目を見つめた。
「僕はね、映画監督であって、コマーシャル監督ではないんだ」
アルファは誰も見ていないのを確認し、分厚い束の紙幣によく似たトゥエンティミルキーの無料券を、内側のポケットから出した。
そこから一枚抜き、監督に握らせる。
監督がそれを開くと、三頭の牛がブラジャーを着け、横座りしたセクシーなポーズの絵が描かれていた。
「僕の店の無料券です。きっと来てくださいね」
それだけ言って立ち去るアルファの後ろ姿を見ながら、監督は首を傾げた。
「なんのこっちゃ?」
◇
数日後、監督は無料券を持ってトゥエンティミルキーに現れた。
アルファは嬉しくなり、監督に尋ねた。
「コマーシャルを作ってくれるんですね。やったー!」
監督は少し困惑した様子で言う。
「牛の絵が気になって来てしまったよ。何を見せてくれるのかな?」
アルファは胸を張って答えた。
「すごくエロいって評判なんですから」
ショーが始まると、監督の目は次第に輝き始めた。
ブラジャーを着けた牛が登場し、次々と外されていく。
そして三頭の牛の間から、ちらりと見える女性の手が乳を搾る。
その光景を見て、監督は感動に震えた。
「私の固定観念が破壊された!こんなシュールなぬくぬくパークを見たことがない!俺も負けられん!今日はありがとう」
そう言って、監督は去っていった。
完成したコマーシャルが、テレビで流れ始める。
画面には、暗闇の中から現れる牛たち。
ナレーションが流れる。
『牛との遭遇』
『健全、健康で芸術的な店!』
『ミルキー、ミルキー、ミルキー トゥエンティミルキー!』
このコマーシャルを見たテレビ局のディレクターが、興奮した様子で店にやって来た。
「テレビで放映できる、究極のエロスを見つけたぞ!」
『究極のエロス トゥエンティミルキーの秘密』という特別番組が組まれた。
レポーターが真面目な顔でカメラに向かって語る。
「視聴者の皆さん、これこそが健全な究極のエロスなのです」
画面には、牛たちの間からちらりと見える乳搾りの女性。
ブラジャーを外され、恥ずかしがる仕草を見せる牛たち。
スタジオの出演者たちが口々に言う。
「エロいが、芸術的ですらある!」
「家族で楽しめますね」
「家族は無理でしょ。エロすぎますよ」
テレビ放映の翌日から、トゥエンティミルキーには人々が押し寄せた。
子供たちが親に連れられてやって来る。
「ママ、牛さんかわいい!」
「本当ね。乳搾りも見られるなんて素敵」
子供がいる時は、牛のブラジャー外しは行われなくなり、ただの乳搾りショーに戻ってしまった。
子供たちの多い客席の中に、スーツ姿で、どこか堅苦しい雰囲気を漂わせる男たちがいた。彼らはじっと、牛だけを見つめている。
人々が押し寄せ、ものすごい勢いでお金が貯まっていく。
だが、アルファは困惑していた。
事務所で、ハジィとロッジマイヤーに相談した。
「パンツを見て喜んでいる人を幸せにするためにこの店を始めたのに、その人たちが来なくなったんだ」
ハジィが優しく答えた。
「でも、子供たちは喜んでるわよ」
アルファは右手を突き上げた。
「そうだ! 二階を作ろう。一階は子供の乳搾りパーク、二階は大人のための乳搾りぬくぬくパークだ。これなら、牛のブラジャー外しもできるよ」
ハジィが止めた。
「待って、アルファ。牛が六頭になったら、まるで牧場みたいだよ」
アルファの目が輝いた。
「ハジィ、それすごいよ! 僕たちお金持ちになって、都会で牧場をしようよ! ビルをいくつか壊せば簡単じゃないか!」
「えっ!? アルファ、ここは都会だよ。牧場なら、ウルペス山ですればいいよ」
「違うんだ。牛や馬や羊を見れば、パンツなんて見なくなるのさ。うん!これなら、みんなを幸せにできるぞ」
ハジィは困った顔で尋ねた。
「アルファ、どれくらいのお金が必要なのかわかってる?」
それを聞いていたロッジマイヤーが答えた。
「五百〜六百億といったところでしょうか。はっきり言って無理です」
アルファは笑顔で言った。
「でも、きっとチャンスは来るよ」
ハジィが話題を変えた。
「で、子供ばかりだけど、どうするの、アルファ?」
「入店は十八歳以上にするよ」
「そうね。それがいいと思うわ」
ロッジマイヤーがつぶやく。
「これは十八歳以上のショー……なのかしら?」




