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ゾンビ姫

ある日のこと、ハジィが開店準備をしていると、ネロとパトラッシュがやってきた。


「ハジィさん。僕の知る限り、やばい魔法にかかった昔の王女が、この前を通るよ。この情報は命に関わるから、無料で教えるよ。でも、次は有料だよ!」


ネロは慌てて去って行った。危ないから、店の中に入っておいたほうがいいらしい。


話の内容は、こういうことだった。

昔、王女が生まれたことを祝うパーティーがあったのだが、その時に呼ばれなかったことに腹を立てた悪い魔女は、王女に「16歳になると100年の眠りにつく」魔法をかけた。


悪い魔女は、去り際にこう告げた。

「眠りを覚ますには、王女のタイプである王子の口づけが必要だ。ただし、むやみに口づけをすればどうなるか、スケベ王子どもよ、自分自身で体験せよ。アッハハハハー」


だが、噂は「世界一美しい美女と口づけができる」ということだけが広がった。


王子たちは最初、このことを知らなかった。王女のタイプでない王子の場合、ゾンビになってしまう魔法がかけられていたことを。


だが、そのことも徐々に広がっていったにもかかわらず、綺麗なお姉ちゃんと唇を合わせることができるなら、《ゾンビぐらい、なってもいいさ》というスケベな世界中の王子が、列をなしてキスをしにきた。


王女を目覚めさせたタイプの王子も、ゾンビに噛まれてしまった。


王女が目覚めたときには、城の中がゾンビ王子だらけになっていた。


彼女は起き上がって、ゾンビになってしまった好みの王子を見つけると、頬に手を添えて残念そうにこう言った。


「オーマイゴッド! 好みなのに!」


あたりを見回し、記憶をたどる。


「ここはどこかしら。えーと、赤ちゃんの頃、悪い魔法使いに眠りの魔法と、キスでゾンビになる魔法をかけられたのよね……」


記憶を取り戻した彼女は立ち上がり、ゾンビたちを統率して、悪い魔法使いとの対決を決心した。


「あなたたちのスケベ心を利用した……まあ、スケベなのが悪いけど。悪い魔法使いを退治しに行くわよ。でもね、あなたたち、一般市民に迷惑かけちゃだめよ」


ゾンビ軍団が一斉にうなずく。


「あなたたち、わたしに恋してる!」


またまた、ゾンビ軍団が一斉にうなずく。


王女と王子のゾンビ軍団は、かつてこの国を治めたであろう城を出て行った。


王女はゾンビ姫となり先頭を歩き、冠を着けた、古くてところどころ破れているが高貴な格好の王子ゾンビ軍団が、後ろをついて行く。


軍団がトゥエンティミルキーの前に差し掛かった。


店の中からそれを見たハジィは、お客様のことを考えると、黙ってはいられない。


ハジィは、先頭を歩くゾンビ姫に怒った。


「ちょっとあんた! ゾンビに首輪もつけずに連れて歩くなんて、危険な行為はやめてよね!」


ゾンビ姫はニッコリ笑う。


「心配しないで。ゾンビたちは私にぞっこんだから、人間を襲ったりしないわ」


一人のゾンビが、ハジィを見ると表情が変わり、ニヤつきながらハジィに向かって歩きだした。


話せないはずのゾンビが、口をパクパクさせながら、ハジィに言葉を発した。


「ずき!」


ゾンビ姫は、こう静かに言うと、ナイフでゾンビの頭を突き刺した。


「浮気は許しません!」


倒れたゾンビを残して、ゾンビ姫と王子ゾンビ軍団は店から去って行く。


店の前にあるゾンビの死体を眺め、ハジィは困った顔になった。


「このゾンビ、どうすればいいの?」


ゾンビ軍団とゾンビ姫が店の前を少し通り過ぎたとき、保健所と一緒に警察が駆けつけた。


誰かのタレコミがあったのだろうと、ハジィは思った。


ゾンビ王子たちは抵抗するが、網で捕らえられていく。


ゾンビ姫は、逃げるところを捕まえられた。


可哀想に思ったハジィには、それがスローモーションのように見え、いつの間にか中島みゆきの「時代」を口ずさんでいた。


「ふふふ ふーんなーに……」


保健所の職員たちが、ゾンビ王子たちを次々と網で捕らえていく。

ハジィは無意識に口ずさみ続ける。


「ふふーしくて……」


ゾンビ姫が警察に取り押さえられる。必死で抵抗するが、手錠をかけられた。姫の叫び声が聞こえる。


「やめて! 彼らを離して!」


ハジィの歌声が大きくなっていく。


「ふふーふーふふふはてて」


我に返ったハジィは、ふと頬を拭うと、涙が伝っていたことに気づいた。


「え……? あたし、いつの間にか歌ってた……?」


保健所の車は、ゾンビたちを乗せて去っていく。


警察の車に押し込められた姫が、最後にこちらを見た。


「頑張って……」


ハジィは小さく呟いた。


歌はパトカーの赤色灯と妙にシンクロしていたが、サイレンは遠ざかっていった。


数日後、釈放されたゾンビ姫が、トゥエンティミルキーにやって来た。


「働きながら、今後のことを考えます。あたし、キスで目を覚ますことはできたけど、悪い魔法使いをやっつけないと、キスでゾンビになる呪いは解けないの。だから、戦いには行くつもり」


ハジィはハグをしようとしたが、


「好きになって噛んじゃうと、あなたもゾンビになっちゃうから」


と言われ、握手だけした。


「そう。頑張ってね」


二日後、ゾンビ姫は、一匹のゾンビを連れて現れてきた。


「キャバクラで働いてたんだけど、あたしがダメって言ってるのに、お客が無理にキスしちゃったの。また保健所に見つかると厄介だから、預かってくれない?」


ハジィは顔を真っ赤にして、


「だめに決まってるでしょ!!」


✳ 著作権の関係で歌詞を鼻歌にしてますが、脳内で再生してください。



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