静かに揺れる世界
お久しぶりです。かきくけ子です。
久しぶりの投稿で、ちょっとドキドキしています。肩も凝ってますが、魔法でほぐせたら便利ですよね。残念ながらまだ使えません。
この物語は、少し不思議で、ちょっと面白い世界の話です。
読むときは肩の力を抜いて、光や影の隙間に目を凝らしてみてください。
さあ、久しぶりの冒険を一緒に始めましょう。
街は朝日で染まっていた。
石畳の広場には、日常の光景が広がっている。
人々は魔法を自然に使いながら暮らしている。
街の灯は浮遊する魔力で灯り、看板は空に文字を浮かべて広告を伝える。
この世界では、ほとんどの子供が15歳になるその日、身体の奥から固有魔法が目覚める。
魔法は生まれつきの力ではない。
ある日突然、自分の体に宿る。
火や水、風や光、記憶を操るもの、時間を少し止めるもの。
種類は千差万別だ。
だから、魔法を使えることが社会では前提になっている。
そのため、魔法が目覚めない子は、すぐに「変わった子」として扱われる。
彼女も例外ではなかった。
⸻
15歳の誕生日の夜、彼女はベッドの上でつぶやいた。
「測定、何も出なかったりして……」
微かに光が揺れた。
家には測定器はない。確認できるのは翌日の協会での正式測定だけ。
翌日、協会での測定は反応ゼロ。
周囲は困惑し、ささやく。
「変な子」「扱いにくい」
彼女は肩をすくめ、知らん顔をする。
でも、あの微かな光こそが、世界に微かな亀裂を作る最初の証だった。
後に、この力が現実を動かすことになるとは、まだ誰も知らない。
⸻
16歳の朝、街を歩く。
街角で人々は魔法を当たり前に使い、日常をこなしている。
彼女は周囲の視線を感じつつ、軽く笑った。
「どうせ今日も、変な子扱いなんだろうな……」
無意識の言葉が街の空気を微かに揺らす。
誰も気づかない。
角の書店前で、ひとりの少女が本を落とす。
慌てて拾おうとする姿に、彼女は微笑む。
「大丈夫? 拾うの、手伝おうか」
少女は驚き目を逸らす。
瞳には、何か秘密を隠す光が宿っているようだった。
その光は、後に彼女の世界に欠かせない存在になるかもしれない――そんな予感を残す。
広場の片隅で、古い噴水の下の石が微かに光るのを、彼女は見逃さなかった。
午後、街の壁の小さなひび割れに触れると、わずかに光が跳ねる。
無意識の力が、まだ理解できない形で作用しているのだ。
⸻
夜、部屋に戻る。
光る石。
落ちた本。
壁のひび割れ。
窓の外で舞った小さな光。
胸の奥で、希望と不安が入り混じる。
「……明日はもっと面白いことが起こるかもしれない」
部屋の隅の古びた箱が微かに震えた。
中で何かが光った気がする。
手を伸ばすと、光は瞬時に消えた。
その瞬間、部屋の空気がわずかにざわつく。
小さな振動。
壁のひびが、いつの間にか広がったような気配。
箱の光が再びちらりと瞬く。
そして、窓の外で何かがひゅん、と通り過ぎた。
形は見えない。
けれど確かに、誰か――何かが、こちらを見ている気がした。
光と影が交錯する夜。
静かに、しかし確実に、物語は動き始めていた。
読んでくださり、ありがとうございます。
今回の話は、世界の片隅で小さな出来事が起こる序章です。
肩の力を抜いて、ちょっとした違和感や光、影に注目しながら読んでみてください。
次回も、同じ世界で少しずつ物語が動き始めます。
久しぶりの投稿なので、私もワクワクしています!
良ければブックマーク、評価お願いします!