なんでだろうな
友人が死んだ。18歳。短すぎる人生だった。
アイツは頭が良くて、私とは違って県内でも評判のいい進学校に行ってた。
都会の大学に行きたいって言ってたのを覚えてる。
中学の卒業式のとき、「これからそれぞれの道を歩むんだね」なんて、そんなこと言い合ったのに。
でも、アイツの道は、ここで途切れた。もう歩けなくなった。
なんで。
悲しいはずなのに、何も感じなかった。涙も出なかった。
たぶん、まだ実感が湧いてなかったんだろうな。
だって、アイツは18で、まだ高校生で、オマエは……。
棺の中で横たわっているオマエを見てた。
あ、お化粧してる。
そっか、わたしたち、華のJKだもんな。お化粧くらいするよな。
きれいだ。すごく似合ってる。
ああ、これが死化粧ってやつか。
最期にきれいにしてもらえてよかったな。プロの仕事は違うな。さすがだ。
ほら、プレゼント持ってきたんだ。
火葬の時に一緒に燃やしてもいいって聞いたから、小中の頃の写真を選んで焼き増ししてきた。
私とオマエだけじゃない、みんなで写ってるやつ。
これでそっちも寂しくないだろ?
あと、お花。オマエ、薔薇好きだったろ?高いけど、買ってきたんだ。感謝しろよ?真っ赤な薔薇、13本。オマエなら、意味、知ってるだろうけど...。永遠の友情、だよ。こういう機会くらい、小っ恥ずかしいくらいで丁度いいだろ?
オマエは目を閉じてて、まるで寝てるみたい。
でも、胸は動いてない。呼吸もしてない。
当たり前だ。死んでるんだもんな。
あ、そうか。死んでるんだ。死んでるのか。
これからはもう話せないのか。
もう会えないのか。
ああ、それは、とても、寂しい。の、かも、しれない。
心の中でぐるぐると同じ言葉が回る。
頭ではわかってる。もうアイツは帰ってこないって。
だけど、どうしても実感ができない。
思い出すのは、笑ってた顔。馬鹿みたいにふざけてた姿。
そんなオマエが、もう目を覚まさないなんて。
そう思うと、胸の奥が締め付けられて、苦しい。
「なあ、オマエ、幸せだったか?」って声に出して聞いた。
答えはないけど、なんとなく返事を待ってる自分がいた。
ただの独り言だってわかってるのに。
こんなに寂しいのに、涙が出てこない。
泣いてもいいのに、泣けない。
まだ心がついていってないんだな、きっと。
だけど、いつかきっと涙が出る時が来ると思う。
そのとき、ちゃんとオマエを想って泣けるように、今はオマエと話させてくれ。